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企業レポート

サイゼリヤ(7581)の分析|国内事業の利益低迷による海外シフトが継続

基本情報

サイゼリヤ(7581)は、1973年に設立されたイタリア料理専門ファミリーレストランである。イタリア料理を競合店価格の7割引で提供することで爆発的に店舗数を増やすことに成功した企業であり、現在では国内1093店舗および海外411店舗を誇る世界最大級のイタリア料理チェーンとなっている。近年では、商品開発-栽培収穫-生産加工-加工調理に至るまでを自社で一貫管理する製造直販業モデルを構築することで、同業他社が追随できない価格と品質のバランスを確立することに成功した。創業期から科学的経営を重視することで高効率なレストラン運営を志向している点は殊更に有名であり、2015年からは統合店舗情報データベースを構築することによる店舗運営の効率化に着手している。

目次

株価の推移

株価はやや下落したが底堅い

■株価の特性
過去10年間に渡って800円台から3800円台のレンジで推移している。2007年以降は概ね1000円から2000円台のレンジで安定的に推移していたものの、2014年以降はレンジが切り上がって2000円台から3500円台での推移となっている。2015年以降は2000円台が底値圏となっており、株式市場が急落に見舞われた局面においても1600円台が強固な底値圏として機能している。サイゼリヤは過去10年間に渡って純利益を安定的に確保したことでBPSが約1.7倍に増大しており、株価が上昇基調で推移するのは当然である。

■過去の株価推移
2017年は特に高値圏で推移しており、年初の2600円台が年末には3800円台にまで高騰する上昇局面であった。同時期はチャイナショックによって急落した日経平均株価の回復期であったことから株式市場が活況であり、個人投資家の投資意欲が活性化していた。更に、同時期のサイゼリヤは、2014年から利益水準の拡大が継続していた他、積極的な海外展開が好調に推移していたことで将来性を期待されていた。日経平均株価の上昇局面と、サイゼリヤの業績好調が重複したことで、力強い株価上昇を遂げた構図である。

日経平均株価との相関性は高い

■日経平均株価との相関性
サイゼリヤの株価と日経平均株価の相関性は高めである(2007年4月から2020年3月の相関係数:0.78)。短期的には相関性が低落する局面が少なくないが、長期的には日経平均株価に連動した変動を遂げている。サイゼリヤの株価は必ずしも業績に連動しておらず、サイゼリヤの業績がピークを迎えた2010年に株価低迷は継続している反面、アベノミクス以降の株高局面では株価上昇している。サイゼリヤは株主に占める個人投資家の構成比率が高く、発行済み株式数の約64%を個人投資家が保有している。個人投資家の投資意欲が活性化する局面では株価上昇しやすい反面、個人投資家の投資意欲が低迷する局面では株価上昇しにくいか。

■過去の日経平均株価との相関性
長期的には日経平均株価との相関性は高い推移を描いているが、2014年と2018年には日経平均株価と乖離する価格変動を遂げている。2014年は日経平均株価を大きく上回る株価上昇を記録しているが、これは2010年から続いていた利益水準の低迷が底打ち反転する兆候を示した点を株式市場が好感したことに加えて、連結子会社の再編によって海外市場における成功が業績に表れた点に起因している。これにより、アベノミクスの初動となる2013年の日経平均株価の上昇には出遅れていたサイゼリヤの株価が上昇基調へ転じたことで、日経平均株価との相関性を回復した。2017年は日経平均株価から乖離する様にサイゼリヤの株価が下落しているが、これはサイゼリヤの利益水準の回復が頓挫したことに起因する。2017年までは日本事業とアジア事業が共に利益水準を回復させていたが、2018年からは日本事業の利益水準が低迷に向かったことで株式市場に失望されたことが株価下落を招き、相関性を低落させた。

業績の推移

売上高は1500億円規模へ拡大

■売上高の特性
売上高は過去10年以上に渡って右肩上がりで推移しており、直近では1565億円規模にまで拡大している。2007年の時点では売上高828億円に過ぎなかったが、売上高を順調に拡大させ続けたことで、2007年から2019年までの期間で売上高を約2倍に拡大した構図である。過去10年間で国内外食産業の市場規模は概ね横ばいで推移したが、サイゼリヤは地道な新規出店の継続によって売上高を堅調に拡大させている。低価格戦略によるリーズナブルさが奏功して、外食需要が低迷したリーマンショック以降の景気後退局面においても売上高を維持しており、景気変動による影響は少ない。

■過去の売上高推移
過去10年間に渡って売上高は右肩上がりで推移してきたが、特に2013年から2015年の期間における売上高の拡大が顕著である。同期間はサイゼリヤが海外子会社の再編を実施しており、これまで非連結子会社であった北京サイゼリヤ・香港サイゼリヤ・台湾サイゼリヤ・シンガポールサイゼリヤを連結対象に加えたことで売上高が拡大した構図である。サイゼリヤの売上高の拡大は日本市場と海外市場における新規出店攻勢によるものであり、国内と海外の両面で堅調な成長を継続している点が特徴である

営業利益は過去10年間は横ばい

■営業利益の特性
営業利益は過去10年間に渡って概ね100億円前後の水準で推移しており、売上高の成長に反して停滞感が強い。サイゼリヤは2012年以前は日本国内で営業利益100億円規模を確保していたが、2014年以降は日本国内の営業利益は50億円規模へ半減している。2015年以降は海外市場における営業利益が拡大しており、直近では営業利益43億円規模へ拡大を遂げたことで、サイゼリヤの稼ぎ頭は海外事業へとシフトしつつある。サイゼリヤの利益水準は原材料費と人件費に左右されやすく、円安による調達コストの増加や人手不足による人件費上昇が利益水準の下方圧力として作用している。

■過去の営業利益推移
2011年から2014年の期間における営業利益の減少が顕著である。リーマンショック以降のサイゼリヤは急激な円高進行によって原材料の調達コストが低下したことで利益水準を切り上げたが、2011年以降は様々な要因で営業利益が低迷に向かった経緯がある。2011年は東日本大震災による外食需要の急落に見舞われた他、日本国内からの原材料の調達コストが高騰した。2013年には10年ぶりの国内新工場となる千葉工場が稼働開始したことで固定費の上昇を招き、2014年にはアベノミクス以降の円安による原材料の調達コストの上昇による影響に見舞われた。2015年以降は営業利益が回復傾向へ転じたが、これは海外市場で利益水準が拡大したことによるものであり、国内市場における利益水準は低迷が継続している

売上高の構成

日本事業(76%)

■事業内容
日本事業には、日本国内における食材の製造及び店舗運営が含まれる。サイゼリヤは日本全国で1093店舗をすべて直営店舗として運営しており、ファミリーレストランで店舗数1位のガスト(1346店舗)に続く規模を誇る。国内5か所に配置したカミッサリー(セントラルキッチン)に生産物流機能を集中することで店舗における調理工程は極力排除されており、全店舗直営による上意下達と相まって効率が高い店舗運営を実現している。サイゼリヤはミラノ風ドリア(299円)に代表されるコア商品群にメニューを絞り込むことで生産効率を高め、価格を超えた高品質を実現してきた。2012年からは新業態としてスパゲッティを主力とするマリアーノの展開を開始しており、こちらは都心部を中心に出店攻勢を継続している。

■過去の売上高分析
日本事業の売上高は815億円から1194億円のレンジで推移しているが、過去10年間に渡って安定的な売上高の拡大が継続している。サイゼリヤの日本事業は、2007年の時点では800店舗であったが、2019年の時点では1100店舗に迫る規模にまで拡大を果たしており、売上高の推移に地道な出店攻勢が表れている。客単価は2007年の708円から2019年は686円へと却って低落していることを加味すると、純粋な客数増加によって売上高を拡大している構造が見え透く。尤も、サイゼリヤの競争力の源泉であるリーズナブルさを維持する為には客単価はできるだけ安価に保つことが重要である点を踏まえれば、新規出店と客数増加による売上高の拡大は理に適っている。2019年に日本事業の売上高は2007年以降で初めて売上高が減少する事態に見舞われたが、これはサイゼリヤが2020年の健康増進改正法全面施行に先行して全店全席禁煙化を実施したことによる客数減少が原因である。

■将来の売上高予測
減少を見込む。目先はCOVID-19の流行による客数減少が懸念されるが、日本における感染拡大は相対的には軽度であったことから、一時的な影響に留まりそうである。中長期的には売上高に回復に向かうと想定するが、問題は長年に渡って継続した出店攻勢による店舗数の飽和である。近年のサイゼリヤは、店舗数増加の減速が顕著であり、2011年の年間40店舗の増加が、2019年には年間8店舗の増加に減速している。魅力的な立地には既に進出を果たしており、かつてほどの新規出店攻勢が不可能となっている構造が見え透く。2019年の時点で、サイゼリヤが未進出となっている都道府県としては14県が存在していることから新規出店の余地はあるが、いずれも経済規模が少ない都道府県であることから売上高の拡大基調を底上げする程の効果は見込み難い。2012年に旗揚げしたマリアーノの店舗数の増加も当初期待された程のペースではなく、売上高の成長を客単価向上ではなく客数増加に依存してきた日本事業は停滞期が近そうである。

豪州事業(0%)

■事業内容
豪州事業には、オーストラリアにおける食材製造が含まれる。連結子会社のサイゼリヤオーストラリアが担う事業である。同社はメルボルン郊外に40万坪の工場を所有しており、ここで国内外店舗で提供される商品を製造している。牛肉・乳製品を安価に大量調達できるオーストラリアに構えた自社工場でミラノ風ドリアやハンバーグステーキを自社一貫製造することで、安定した品質と低価格を実現している。日系ファミリーレストランチェーンが海外にセントラルキッチンを有することは珍しくないが、サイゼリヤの場合はコア商品の製造の大半を海外拠点に依存している点が独特といえよう。サイゼリヤの主力市場が所在する北半球と真逆の気候の南半球に拠点を有することで、野菜類などを季節に関わらず調達できる点も強みである。

■過去の売上高分析
豪州事業の売上高は過去10年間に渡って9.6億円から5.6億円のレンジで推移しているが、長期的な売上高の減少傾向が続いている。豪州事業はサイゼリヤのセントラルキッチン機能を担っている関係から外部顧客への売上高は極めて少ない。豪州事業が設立された2000年からオーストラリア国内への出店構想があったと推測されるものの、2019年に至るまでオーストラリアへの出店は実施しておらず、豪州事業はあくまでもセントラルキッチン機能を担う工場のみの事業となっている。こうした背景から、豪州事業が売上高に占める割合は1%未満となっており、貢献は希薄である。

■将来の売上高予測
横ばいを見込む。直近の豪州事業の外部顧客への売上高は1.5億円となっているが、どのような経緯で発生している売上高なのか詳細が公開されておらず、将来の売上高の予測が不可能である。豪州事業はセントラルキッチン機能を担っている為、他事業の売上高の拡大に合わせて工場の稼働率が向上するが、これらは内部売上高であることから外部顧客への売上高としては計上されていない。現時点ではオーストラリア国内への出店は計画されておらず、店舗が存在しないことから外部顧客への売上高は現状の極めて低い水準を維持していくと想定される

アジア事業(23%)

■事業内容
アジア事業には、中国・台湾・香港・シンガポールにおける店舗運営が含まれる。サイゼリヤの海外展開は2003年に上海への進出に始まり、その後、台湾・香港・シンガポールへと拡大を果たした。現在では中国331店舗・台湾14店舗・香港39店舗・シンガポール27店舗を擁する規模にまで拡大しており、日系ファミリーレストランチェーンとしては海外展開に特に成功した企業となっている。海外展開においては、コア商品の現地の味覚に合わせてローカライズしつつ、現地の物価水準でリーズナブルな価格帯に抑制することで、店舗数を着実に増加させる戦略を遂行してきた経緯がある。日系外食チェーンが海外進出する場合には現地パートナー企業とFCや合弁の形態を採ることが多いが、サイゼリヤは独資で現地法人を設立して海外進出してきた。現地パートナー企業との連合を避けたことで初期コストは増大したが、①現地パートナー企業の移行に左右されない事業運営、②直営によるコスト低減効果、③現地人材を直接育成による規模拡大の加速、などの強みを獲得している。

■過去の売上高分析
アジア事業の売上高は204億円から373億円のレンジで推移しているが、2018年以降は350億円規模へと拡大している。サイゼリヤのアジア事業は、2014年の時点では230店舗であったが、2019年の時点では411店舗にまで拡大を果たしており、5年間で店舗数が約1.8倍に増加している。特に中国市場においては出店攻勢を継続しており、2019年の時点においても新規出店50店舗/年のペースを継続している。2014年以前は海外子会社のうち、北京サイゼリヤ・台湾サイゼリヤ・シンガポールサイゼリヤを非連結子会社としていたが、2015年からはこれらの非連結子会社が重要性が拡大したとして連結子会社へ変更した為、売上高が急増している。2019年の時点でアジア事業の店舗数はサイゼリヤの全店舗数の約27%を占めるに至っているが、売上高という観点では約23%に留まっている。これは現地の物価水準に合わせた販売価格を設定している点に起因しており、日本事業の客単価735円に対してアジア事業の客単価は566円となっている。

■将来の売上高予測
増加を見込む。2020年以降のサイゼリヤはアジア市場で更なる出店攻勢を計画しており、アジア事業の店舗数は450店舗に到達する見通しであり、売上高の拡大基調は維持させる。COVID-19の流行によってアジア事業の来店客数は減少するとも思われたが、アジア地域におけるCOVID-19の流行が相対的には軽度であったことが奏功して来店客数は堅調に推移している。広州サイゼリヤのみ売上高が前年比▲2%程度の減少となる見通しであるが、上海・北京・香港・台湾・シンガポールにおいては売上高が前年比を上回る進捗率で推移している。COVID-19の流行に端を発した景気後退局面における円高推移が売上高の下方圧力として作用しそうであるが、リーマンショック後とは異なり1ドル100円前後の円安水準は維持していることから為替影響は最低限に留まる。

その他事業(廃止)

■事業内容
その他事業は、2014年に連結対象となる子会社の再編を実施する以前に存在したセグメントである(有価証券報告書において2010年までその他事業、2013年までは中国事業として表現されているセグメントを便宜的にその他事業として表現した)。2014年以前のサイゼリヤは中国の広州サイゼリヤおよび上海サイゼリヤのみを連結対象としており、北京サイゼリヤ・台湾サイゼリヤ・シンガポールサイゼリヤを非連結子会社としていた。その他事業は海外子会社に連結非連結が混在していた時期に使用されていたセグメントであるが、これらの非連結子会社が2014年に加わってからはアジア事業へと統一されたことから、セグメントとして廃止されている。

■過去の売上高分析
2007年の時点では売上高13億円の事業であったその他事業の売上高は、中国などのアジア地域における地道な出店攻勢を継続したことで、2013年には売上高79億円にまで拡大を遂げている。2007年の時点では海外子会社は上海サイゼリヤのみであったが、2008年までに広州・台湾・北京・香港・シンガポールに海外子会社を設立して海外進出に注力したことで、その他事業は売上高を拡大させることになった。2014年以降に日本事業の限界に直面したサイゼリヤの業績がこれらの海外子会社が支えられている点を踏まえれば、サイゼリヤの先見性は高く評価できるだろう。

■将来の売上高予測
既に廃止されたセグメントであるため予測は提示しない。

営業利益の構成

日本事業(53%)

■過去の営業利益分析
日本事業の営業利益は38億円から141億円と上下変動が激しいが、2013年以降は低迷傾向が継続している。過去10年間に渡る新規出店の継続により国内店舗数は増加が継続しているが、規模拡大は利益水準に貢献できていない。この原因としては、①人手不足と社会保険料上昇の中で社員数を増大させたことによる人件費の増大、②新規出店による減価償却費の増大、③円安推移による原材料の調達コストの上昇、④消費税増税で価格を据え置いたことによる利益水準の低下、などがある。2017年には為替影響と原材料安によって利益水準が一時的に回復したが、2018年以降は再び営業利益50億円規模へ退行を強いられている。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。時計需要の減少の底打ちが未だに見られず、販売数量の減少が継続すると見込まれる。生産体制の合理化による利益水準の確保を目指すものの、販売数量の減少による下方圧力を相殺する程の効果は期待できない。COVID-19の流行による景気後退局面においては嗜好性が高い高価格帯製品の売上が低迷することで利益水準が更に低下しそうである。COVID-19の流行という世界的な危機的局面においても為替推移が1ドル110円前後での円安推移が定着している点も、更に営業利益を下押しするか。

豪州事業(1%)

■過去の営業利益分析
豪州事業の営業利益は▲0.8億円から3.9億円のレンジで推移しているが、2016年以降は営業利益1億円規模で推移している。豪州事業の内部売上高を含めた売上高が40億円規模であることを踏まえれば、営業利益率は2%前後の水準である。2007年と2015年には営業利益3億円規模に拡張を果たしているが、これらの時期は1豪ドル100円に迫る円安局面であった点で共通している。豪州事業がサイゼリヤのセントラルキッチン機能を担う事業であることを踏まえれば、豪州事業を単体で見た場合の利益水準が低い点は問題にはならないだろう。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の感染拡大による景気後退局面において豪州事業の利益水準にとって重要である豪ドル円レートが1豪ドル70円前後での円安推移を強いられている為、豪州事業の利益水準は低迷すると見込まれる。COVID-19の流行による他事業の売上高の減少が軽微に留まったことから内部売上高を含めた売上高は従来の規模を維持するが、為替市場の混乱によって一時は1豪ドル59円という歴史的な円高推移となった点が痛手となろう。尤も、サイゼリヤの営業利益に占める割合は1%以下であることから特段の問題にはならない。

アジア事業(46%)

■過去の営業利益分析
アジア事業の営業利益は15億円から43億円のレンジで推移しているが、2017年以降は30億円規模への拡大を果たしている。直近のアジア事業の営業利益率は11.7%となっており、日本事業の営業利益4.2%と比較すると、利益水準の高さが際立つ。独立資本での進出に執着したことから進出直後は利益水準の低迷が続いており、海外子会社が非連結子会社であった2009年前後は慢性的な赤字体質であった。その後、①コア商品の現地の味覚に合わせたローカライズ、②店舗設計の変更、③粘り強い事業継続による認知度向上、によって2012年頃を境に利益水準が急速に好転した。利益水準の好転後は、進出直後から育成した現地人材を核とした新規出店攻勢を継続したことで、営業利益が堅調な拡大基調を継続している。

■将来の営業利益予測
増加を見込む。特に中国市場における営業利益の拡大が継続すると見込まれ、上海サイゼリヤは営業利益が前年比80%以上の拡張を遂げそうである。台湾サイゼリヤは新規出店が乏しかったことで14店舗体制が継続しているが、営業利益は前年比40%以上の拡張となりそうであり好調である。こうした営業利益の拡大は、売上高の増加と販管費の改善によるものであることから、新規出店を慎重に継続する限りは従来の営業利益率を高く維持することが可能と見込まれる。唯一、香港はデモによる混乱の影響が長引いていることで営業利益が10%程度の減少に見舞われる見通しだが、サイゼリヤは更なる新規出店攻勢を継続する計画を据え置いている。COVID-19の流行がアジア地域において相対的に軽度であったことも救いか。

その他事業(廃止)

■過去の営業利益分析
その他事業の営業利益は1億円から4億円のレンジで推移しており、その他事業の後継である現在のアジア事業と比べれば極めて低水準での推移であった。注意したいのは、その他事業に含まれていたのは当時に連結対象であった子会社のみであった点である。実際には非連結子会社の海外子会社は進出から間もなかったこともあって営業赤字が常態化していたとされる。これらの非連結子会社は営業黒字が定着した後に連結対象に加えられていった為、その他事業は表面的には営業黒字が継続していた構造である。

■将来の営業利益予測
既に廃止されたセグメントであるため予測は提示しない。

財務の健全性

手元資金は極めて潤沢な水準

■手元資金の特性
手元資金は増加傾向にあり、2015年以降は顕著に右肩上がりが続いて400億円規模に到達している。売上高が年間1500億円規模と考えると手元資金としては125億円が目安となる為、極めて潤沢な水準である。資産の約40%を現預金で保有していることから資金繰りへの懸念は皆無に近い。景気後退局面においても底堅い業績で推移するサイゼリヤの性質を加味すれば、財務の健全性は特筆して高いと見てよい。反面、2011年に国内1000店舗を超えてから新規出店ペースが減速している点を加味して考えると、手元資金を有効に積極投資へ投じることによって新たな利益創出ができない状況が見え透くか。

■過去の手元資金分析
2015年の手元資金の急増が際立つが、これは、①同年のサイゼリヤが有形固定資産の取得を抑制した点、②長期借入金60億円の調達、③長期定期預金15億円の払戻、に起因する。2012年以降のサイゼリヤは新規出店70店舗~/年を実現する為に年間100億円規模の有形固定資産への投資を継続していたが、2015年以降は新規出店40店舗~/年にまで減速させたことで、手元資金の増加が起こった。全店直営を戦略としているサイゼリヤにとって潤沢な手元資金は将来の出店攻勢に欠かせないが、昨今のサイゼリヤは出店攻勢には抑制的であることから手元資金が増加し続けている構図である

自己資本比率は業界上位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は概ね70%以上の高水準で横ばい推移している。同業他社と比較すると、ゼンショーホールディングス23.7%・すかいらーくホールディングス29.3%・日本マクドナルドホールディングス71.5%となっており、業界上位の水準である。積極的なM&A戦略を目的とした資金調達で自己資本比率が低落しているゼンショーホールディングスや過去の経営混乱で負債が増大したすかいらーくホールディングスと異なり、サイゼリヤは長年に渡って保守的な経営を継続してきた背景から自己資本比率は高水準で推移している。サイゼリヤの業績が安定的である点も加味すれば、財務耐久力は相当に高いか。

■過去の自己資本比率分析
2009年に自己資本比率69.1%への下落が顕著である。2009年のサイゼリヤは豪ドルのデリバティブ取引で巨額の評価損を発生させたことでデリバティブ解約損153億円を計上する失敗を犯したことで純損失69億円に転落しており、これが自己資本比率を低落させた。当該デリバティブ取引は豪ドルを安価に確保することによる調達コスト削減を目的として締結されたものであったが、リーマンショックに伴う急激な円高進行が完全に裏目となり巨額の評価損に陥ったものである。尤も、2009年の純損失69億円は本業の不振によるものではなく、翌年の2010年以降は景気後退による客数増加と生産性向上施策が奏功した業績好調が続いたことで自己資本比率は早々に回復に向かった。

株価の割安感

BPSは微増傾向が長期継続

■BPSの特性
BPSは2009年から右肩上がりで推移している。サイゼリヤは2009年にデリバティブ取引の失敗で純損失に転落した点を除けば、概ね安定的に利益を確保していることもあってBPSは緩やかに拡大している。サイゼリヤのBPSが微増傾向を継続している理由としては、①業績が景気変動に影響されにくい点、②有価証券の保有額が少ないが故に株式市場の低迷で純資産が下落しにくい点、③過去においては在外子会社への投資額が少なかった故に円高局面で純資産が下落しにくい点、が奏功している。尤も、2015年以降は在外子会社への投資額が膨張している為、過去と比べれば円高局面でBPSが下落しやすい性質に変化しつつある点には注意したい。

■過去のBPS分析
2009年におけるBPSの下落が際立つ。同年のサイゼリヤは豪ドルのデリバティブ取引で巨額の評価損を発生させたことでデリバティブ解約損153億円を計上する失敗を犯したことで純損失69億円に転落しており、これがBPSを低落させた。尤も、サイゼリヤが純損失に転落したのは会社設立以来で初の出来事であり、2009年のBPSの下落は例外的と見てよい。過去10年間に渡る推移を見る限り、サイゼリヤは急激にBPSが上昇する要素にも乏しい為、短期で株式価値が急上昇することがない。これは、①業績が安定的で急激な利益水準の変動が起こらない点、②対外投資や有価証券が少額であることから経済環境の変化による評価額変動が起こりにくい点、に起因している。

PBRはやや割高な水準で推移

■PBRの特性
PBRは長期的に1.0倍から2.0倍のレンジで安定的に推移している。安定的に利益を確保することに長けたサイゼリヤは将来的な株式価値の向上を期待されやすく、更に株主優待制度の存在から個人投資家の人気が高く、PBRは高水準で推移しやすい。尤も、現在のPBR1.5倍を上回る水準は将来的なアジア事業の成長性を加味した結果の割高性である為、根拠はある。強いて言えば、アジア事業の将来的な成長性に疑義が生じる変化が起こった場合にはPBRのレンジが切り下がる可能性はあるか。

■過去のPBR分析
2008年および2013年前後においてPBR1.0倍水準の低調な推移を強いられている。2008年のPBRの低落はリーマンショックにおける株価下落が原因であり、同時期のサイゼリヤは株価800円台での推移を強いられていたことがPBRを下落させた構図である。これに対して、2013年前後のPBRの下落はサイゼリヤの利益水準の低迷が原因である。同時期のサイゼリヤは日本事業の利益縮小に苦しんでいた他、海外市場における成功が業績に表れていなかった為、株価が低調に推移していた。危機の局面においてもPBR1.0倍前後で推移することを踏まえると、昨今のサイゼリヤの株価が1600円前後(PBR1.0倍)を強固な底値圏として推移している理由がわかる

配当金の推移

配当金は安定配当型

■配当金の特性
配当政策は安定配当型である。サイゼリヤは配当政策として「業績、配当性向及びキャッシュ・フローのバランスを総合的に勘案し、自己資本比率、株主資本利益率等の財務指標を妥当な水準に維持しながら、株主への利益還元に努める」を掲げているが、実際には配当金推移は完全に横ばいで推移してる。安定配当型であることを踏まえても、ここまで完全な横ばいを継続する企業は珍しい。尤も、売上高こそ堅調な拡大を遂げている反面、利益水準が過去10年間で変化していない点を踏まえれば、増配に踏み切れない点はやむを得ないか。

■過去の配当金分析
年間18円の配当金で横ばいになる以前の過去にまで遡ると、2005年以前は年間10円の配当金で横ばい推移を描いていた。2005年以前のサイゼリヤは売上高700億円規模かつ純利益20億円規模の業容であり、現在と比較すると売上高と純利益の両面において約50%弱の業績で推移していた。そう考えると、一見フラットな配当金の推移でこそあれ、業績には概ね比例して配当金が算出されているとも考えられる。要するに、サイゼリヤが配当金を抑制的と解釈するよりは、過去10年間に渡って業績が純利益50億円規模で停滞しているが故にフラットな配当金の推移に帰着していると解釈する方が妥当であろう

配当利回りは低水準で推移

■配当利回りの特性
配当利回りは2%台をやや下回る水準で推移しており、2015年以降は1%すら下回る推移となっている。日本株の平均的な配当利回りである2%前後に劣後しており、長期保有したところでインカムゲインという観点では大したリターンを得ることができない。サイゼリヤには株主優待制度が存在しており、1単元の保有から保有株式数に応じた食事券を受け取ることができる。配当利回りの計算に株主優待制度による食事券の額面を考慮しても、配当利回りは2%に届かない水準に留まっており、継続保有によるリターンは魅力に欠く水準である。

■過去の配当利回り分析
2014年以前は配当利回り1.0%を上回る水準で安定的に推移していた反面、2015年以降は配当利回りが1.0%を下回る水準にまで急落している。2010年から2014年の期間におけるサイゼリヤは利益水準の低迷に苦しんでいた他、株式市場の低迷によって個人投資家の投資意欲が振るわずサイゼリヤの株価が低迷していたこともあって、配当利回りは現在と比べて高めの水準で推移していた経緯がある。尤も、2015年以降には海外展開の成功と業績回復への転換によって株価が上昇基調へ転じたことによって、配当利回りは0.8%前後の水準にまで切り下がっている。

総合評価

目標株価

2200円

当初に危惧されたよりはCOVID-19の流行による業績の打撃は少ないと想定されるが、積極的な上値追いを目指す材料を欠く。サイゼリヤの株価水準は割安感が希薄である為、割安感のある優良銘柄に欠かない現在の株式市場においては相対的な魅力が薄い。海外市場における将来的な成長を加味しても、現行の株価水準を当面は維持すると見込む。

投資判断

中立

アジア事業を高い利益水準で舵取っている点は評価できるが、売上高の76%を占める日本事業の利益水準の改善が急務である。サイゼリヤは過去10年間における海外展開で特筆に値する成功を収めたものの、主力市場である日本国内の利益水準が低迷していることで、純利益のレンジが2000年代後半から変化していない。株価が更なる上昇を遂げる為には、日本事業の利益水準の回復が不可避であると見てよいが、サイゼリヤは既に5年以上に渡って日本事業の利益水準の回復に失敗している。サイゼリヤの日本事業の利益水準の低迷は、①人手不足と社会保険料上昇の中で社員数を増大させたことによる人件費の増大、②新規出店による減価償却費の増大、③円安推移による原材料の調達コストの上昇、④消費税増税で価格を据え置いたことによる利益水準の低下、であるが、いずれも対処が容易ではない。創業以来の地道なオペレーショナルエクセレンスの追求によって効率化余地は乏しく、効率化による利益水準の底上げは限界が既に見えている。かといって、コア商品の値上げはサイゼリヤのブランド価値の根幹を揺るがす問題であり、困難である。将来的な中国市場における成長性を評価すれば投資判断をやや強気に設定することもできようが、日本事業の行き詰まりとアジア事業の快進撃に冷や水が浴びせられる環境変化が起こった場合の脆弱さを加味すれば、現時点では中立以上の評価を与えることは難しいと判断した。