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タマホーム(1419)の分析|売上高は過去最高を更新するが利益水準は停滞

基本情報

タマホーム(1419)は、東京都港区に本社を置く住宅メーカーである。タマホームの歴史は意外にも長く、1887年に創業家の祖先にあたる玉木長命が建築会社を福岡県筑紫野市で設立したことにまで遡ることができる。現在のタマホームは木造住宅の建築を主力事業としており、国内シェアの2%前後を掌握している。主な商品には、自由設計注文住宅の「大安心の家」、低価格を訴求した「木麗の家」、国産木材を使用した和風住宅の「和美彩」などがあるが、共通するのはコストパフォーマンスの高さである。営業から建設に至るプロセスを効率化することで坪単価を低廉に抑制して国内シェアを拡大してきた。

目次

株価の推移

株価は上場来高値を更新するも反落

■株価の特性
2013年から2019年の期間において、タマホームの株価は364円から2043円のレンジで推移しており、上下変動が激しい推移となっている。株価の上下変動はタマホームの業績の変動幅を大きく上回っており、過剰反応の感すらある。もっとも、2012年前後のタマホームは業績成長への期待からPBR3.0倍を上回る高値圏で取引されており、現在とは異なる性質の推移を描いていた経緯がある点は念頭に置いておきたい。株式上場から現在に至るまでのタマホームの株価推移を見る際には、2012年から2016年の期間において過度の期待に支えられた高値圏からの是正が進んだと見てよい。ただし、2016年以降のタマホームの株価推移は過熱感がない水準での推移となっており、実際の株式価値との乖離が少ない推移を描く様になっている。

■過去の株価推移
2012年から2016年の期間における株価下落が顕著である。上場初値1700円(2012年)から364円(2016年)まで顕著な下落を描いており、下落率は▲78%にも及んだ。この株価下落は、株式上場を果たした株価水準がPBR3.0倍を上回る高値圏であったことが是正されたことに起因している。ちなみに、株式上場を果たした際に高値圏で取引された原因は、①過去10年間で売上高を約20倍以上に拡大させた業績成長への期待、②アベノミクスが開始直後であったことによる株式市場の活況、である。その後、アベノミクスが一服して株式投資家が期待する程の業績成長がないことが判明すると、株価は本来の株式価値に応じた水準にまで下落を強いられることになった。更に、2014年に純損失を計上して株式投資家の期待が剥落すると、株価はPBR1.0倍前後の水準にまで低落することとなった。

日経平均株価との相関性は低い

■日経平均株価との相関性
タマホームの株価と日経平均株価の相関性は低い(2016年11月から2020年3月の相関係数:0.35)。本来、住宅メーカーであるタマホームは景気循環に業績が連動しやすいことから、景気循環的に推移する日経平均株価と類似した株価推移を描きそうであるが、過去の株価推移は異なっている。タマホームの業績は安定的な部類であるが、株価の推移は良くも悪くも上下変動が激しく、日経平均株価とは異なる方向に振れることは珍しくはなかった。ただし、過去の相関性の低さはタマホームが株式上場を果たした際に寄せられた過大な期待が剥落したことによる株価下落という事情があり、2016年以降は日経平均株価との相関性が回復しつつある点は念頭に置いておきたい。

■過去の日経平均株価との相関性
2013年から2015年まで日経平均株価に逆行安を続けた反面、2016年以降は日経平均株価との相関性がやや高まっている。これはタマホームの業績回復と日経平均株価の上昇局面が重複したことに起因している。タマホームは2015年を底に業績低迷から脱出して2018年以降には過去最高益を更新しており、株価が右肩上がりの推移を描いた。同じく2015年以降の日経平均株価がチャイナショックからの株安局面から回復傾向となったことで相関性が高まった構図である。もっとも、既にタマホームの株価水準は本来の株式価値から大きく乖離しない程度のレンジで推移している為、株式上場の際に過大な割高圏に到達したことが裏目となって株価が右肩下がりで推移する状況は既に去ったと見てよいだろう。

業績の推移

売上高は2000億円規模に到達

■売上高の特性
2015年から売上高の増加傾向が続いており、直近の2019年には売上高2092億円に到達している。日本国内の住宅需要は減少傾向が長期的に続いているが、タマホームの売上高は過去20年間で44億円(2001年)から2092億円(2019年)にまで増加している。日本国内の新築住宅着工戸数が年間190万戸(1973年)から年間90万戸(2019年)にまで減少していることを踏まえると、衰退市場にありながらタマホームが勢力を急速に拡大している情勢が読み解ける。とはいえ、タマホームは売上高の約80%を注文住宅の建設販売を担う住宅事業から得ている為、短期的には住宅需要の変動に業績が左右されやすい。この変動の要因には、①消費税および住宅関連税制の変更、②「すまい給付金」などの政策、③景気動向に応じて変動する消費マインド、があり、タマホームの売上高を増減させる影響を及ぼしている。

■過去の売上高推移
2015年から2019年の期間において売上高が安定的に増加している。この売上高の増加は、①2013年の消費税増税を控えた駆込需要の反動減からの回復が進んだ点、②タマホームの不動産事業で保有不動産の売却収益が計上された点、に起因している。住宅事業の売上高の回復と不動産事業の一時的な増収が重なった結果、過去最高の売上高を記録した構図である。しかし、本業の注文住宅が含まれる住宅事業の売上高は停滞感が強く、2011年以降は同事業の成長が踊り場を迎えている。こうした背景から、最近のタマホームは売上高の停滞を打破する為、①地域特性に合わせて開発した地域限定商品ラインナップの投入、②不動産媒介業務やオフィスビル事業などへの参入、などの施策を急いでいる。

営業利益は過去最高を更新

■営業利益の特性
営業利益は18億円(2015年)から98億円(2019年)のレンジで推移しているが、2015年以降は営業利益の増加傾向が続いており、2019年には過去最高を更新している。しかし、2018年および2019年の営業利益の拡大は、不動産事業で保有不動産の売却利益が計上された一時的な要因によるものであり、継続性には欠ける。さらに、本業の注文住宅が含まれる住宅事業の営業利益は49億円(2011年)から37億円(2019年)へと減少しており、本業における利益水準は停滞感が強い。最近のタマホームは中期経営計画「タマステップ2021」で2030年までに売上高1兆円を目標として掲げている。規模拡大を重視した販売戦略の結果として利益水準が横ばいで推移している公算が高い。

■過去の営業利益推移
2015年から営業利益が右肩上がりで増加した結果、2019年に過去最高の営業利益を更新した。しかし、住宅事業の営業利益は、2011年の営業利益49億円を下回る水準が続いており、本業の稼ぐ力は停滞している。最近のタマホームの営業利益の増加に貢献したのは不動産事業における販売用不動産の売却益である。実際、2018年と2019年にはそれぞれ売却益30億円前後が加算されていると推測される。本業の注文住宅における利益水準が停滞する反面、一時的な要因による売却益で営業利益を上積みすることで業績が拡大している様に見えているに過ぎない。更に、2018年に売却した販売用不動産は、かつてホテル事業への参入を画策して取得した不動産を計画中止によって売却したに過ぎない。

売上高の構成

住宅事業(46%)

■事業内容
住宅事業には、注文住宅の請負建設・リフォーム工事・外構工事などの付帯工事・図面作成などの設計支援事業などが含まれる。タマホームの主力事業である注文住宅の請負建設が含まれる事業であり、日本全国における販売棟数は年間8000棟程度に及ぶ。タマホームは注文住宅を低価格で販売することを自社の付加価値として定義しており、低価格を実現する為に販売から建設に至るまでのプロセスに多様なコスト削減策を導入している。特に仕入価格の低減によるコスト削減はタマホームの得意分野であり、販売棟数の予測に基づいて建材メーカーに大量発注をすることで低価格な注文住宅を実現している。注文住宅の販売拠点である店舗・展示場は全都道府県に所在しており、既に日本市場においては全都道府県への浸透が完了しているが、2005年まで福岡に本社を置いていた経緯から関西以西におけるシェアが高めである。

■過去の売上高分析
住宅事業の売上高は1168億円(2015年)から1670億円(2019年)のレンジで推移しており、2015年からは増加傾向が続いている。過去の推移を観察すると、2013年から2015年の期間において売上高の減少が続いており、売上高は1540億円(2013年)から1168億円(2015年)にまで減少している。この売上高の減少は、2013年に消費税増税を控えた駆込需要が発生したことに起因している。注文住宅の場合は土地を除いた建物価格に消費税が発生するが、購入価格が数千万円に及ぶ注文住宅は消費税の増税によって数十万円の価格上昇が生じる。実際には、中低所得者の住宅取得の負担を減らす為に消費税の増税と同時に「すまい給付金」などの政策が施行されているが、顧客心理に与える影響は特に大きい。反面、2015年以降は売上高が増加傾向に転換しており、2019年には過去最高の売上高1670億円に到達している。この売上高の増加は、①景気回復局面の長期化による顧客心理の改善、②建築コストおよび地価の上昇トレンドが維持されたことによる買い急ぎ効果、③タマホームが地域特性に合わせて開発した地域限定商品ラインナップの販売好調、④タマホームが取り組んできた着工平準化施策による建設能力の向上、に起因している。市況改善による全需増加の追い風があったとはいえ、タマホームの施策として地域ニーズに応じた商品を投入しながら建設能力を拡充させたことが奏功したと見てよい。実際、販売棟数は全需を上回る増加を見せている。

■将来の売上高予測
減少を見込む。2019年10月の消費税増税の駆込需要からの反動減に加えて、COVID-19の流行による消費マインドの低迷が痛い。タマホームに限らず、住宅メーカーの売上高は消費税および住宅関連税制の変更による影響を受けやすく、消費税増税の場合には住宅需要を先食いする駆込需要が発生する。2013年の消費税増税を振り返ると、反動減に見舞われた翌年は売上高▲10%の減少を強いられており、増税以前の水準に回復するまでに約4年を要している。今回の消費税増税は過熱した駆込需要が発生しなかったとはいえ、COVID-19の流行による消費マインドの低迷が重なったことで、売上高の減少は不可避であろう。尚、直近のタマホームの業績予想では売上高▲6.8%の減少と予想している(2020年5月期決算)。

不動産事業(7%)

■事業内容
不動産事業には、分譲宅地と戸建分譲の販売・マンションの開発販売・オフィスビルの転貸・オフィス区分所有権の販売などが含まれる。不動産事業は、タマホームが長年に渡って培った住宅開発ノウハウを活用した事業であり、戸建分譲と分譲宅地が主力事業となっている。建設事業が注文住宅の建設請負に特化しているのに対して、不動産事業は住宅需要が見込める土地を仕入れた後、①整地後に分譲宅地として販売、②整地後に分譲住宅を建設して戸建分譲として販売、することを主力事業としている。戸建分譲の長所は、①同一仕様で多数棟を建設することができる点、②閑散期に建設することができる点、にあり、コスト削減および効率的建築に強みがある。オフィスビルの転貸は、オフィスビルをオーナーから長期一括借上した後にタマホームの営業網を活用して入居者を募って転貸する事業である。同事業の営業地域は東京都に限られるが、タマホームが借上げたオフィスビルは約16物件が存在しており、「タマビル」「THビル」「Tamaビル」などの名称を物件名に冠している。尚、2016年からタマホーム不動産を新たに設立して、東京都および埼玉県における不動産媒介業務へと参入している。

■過去の売上高分析
不動産事業の売上高は26億円(2011年)から334億円(2019年)のレンジで推移しており、過去10年間で売上高を10倍以上に拡大させている。タマホームの不動産事業は、本業の住宅事業から派生して分譲住宅の建設販売を主力事業としてきたが、過去10年間で事業領域を拡大してきた結果、売上高を拡大させることに成功してきた経緯がある。2011年の時点では「タマスマートタウン茨木(583区画)」などの分譲住宅の開発が主力であったが、2013年に「フォーチュンスクエア都筑中山(157戸)」を完売して以降はマンションの開発販売に積極的である。2018年にはオフィスビルの転貸・区分所有権の販売に参入しており、都心主要7区における管理物件数の拡大に注力した結果、売上高を拡大させている。

■将来の売上高予測
減少を見込む。2018年以降は販売用不動産の売却によって売上高が高水準で推移してきたが、相次ぐ売却によって販売用不動産の在庫が既に枯渇していることから、売上高は2017年前後の水準へと回帰する。分譲住宅は、2019年に消費税増税の駆込需要で売上高を伸ばしたことから反動減が発生する公算が高い。COVID-19の流行による消費マインドの低迷が住宅需要を下押しする可能性もあり、売上高の拡大は期待しにくい。マンションの開発販売は、過去数年間に渡って新規案件を控えたことで在庫水準が低下しており、売上高を伸ばす余地に乏しい。タマホームはオリンピック関連需要による不動産市場の高騰を嫌気して新規案件を控えていたが、COVID-19の流行によって不動産市場が低落したことを踏まえると、賢明な判断であったと見てよい。オフィスビルの転貸・区分所有権は在庫確保に注力してきたが、目下の在庫は低水準で推移していることから売上高は横ばいで推移する。

金融事業(14%)

■事業内容
金融事業には、火災保険等の保険代理店業務・注文住宅購入者向けつなぎ融資などが含まれる。本来は住宅を購入する顧客に対して火災保険を販売することから派生した事業であるが、現在では住宅ローンのつなぎ融資から保険販売に至るまでのライフプランニングを事業としている。金融事業の意義は、注文住宅の購入資金を一括で用意できない大多数の顧客に対して、住宅ローンを活用した資金調達から購入後の家計設計と返済計画までを提案することにある。特にタマホームの顧客は若年層が中心であることから、フィナンシャルプランナーによるライフプランニングを通して、注文住宅の購入を実現できる様に支援することが主たる目的である。住宅ローンのつなぎ融資は、注文住宅の完成までの間の資金を一時的に融資する事業であり、住宅ローンが完成後に実行されるまでの間に必要となる土地代金・着工金・上棟金などを一時的に融資している。これも顧客の資金繰りを支援することで、注文住宅の購入を実現できる様に支援することが目的である。

■過去の売上高分析
金融事業の売上高は9.2億円(2012年)から14億円(2019年)のレンジで推移しており、過去10年間に渡って売上高10億円規模が定着している。金融事業の売上高は住宅事業の売上高に概ね連動する性質があり、2019年には住宅事業が過去最高の売上高を記録すると金融事業の売上高も同時に過去最高を記録している。この性質は、金融事業の主力事業である保険代理店業務とつなぎ融資がタマホームで注文住宅を建設する顧客を対象としていることに起因していると推測され、販売棟数の減少が保険販売の減少に直結する構図であろう。最近では、地方銀行など競合他社による住宅ローンの積極攻勢が進んだことで住宅ローン手数料はやや減少したが、代わってフィナンシャルプランナーによる生命保険の販売が拡大したことで売上高が増加している。尚、金融事業が取り扱う住宅ローンの中で手数料単価がよい「フラット35」の利用率が上向くと、金融事業の手数料収入は拡大しやすい特徴がある。

■将来の売上高予測
減少を見込む。金融事業の売上高は住宅事業の販売動向に連動する性質が強い為、目先の住宅事業の販売低迷が重荷となる。住宅事業の販売棟数が減少した場合、注文住宅の顧客への保険および住宅ローンの販売対象が減少することで金融事業の売上高は伸び悩む。住宅事業における注文住宅の販売は、当面に渡ってCOVID-19の流行による消費マインドの低迷が重荷となると見込まれる為、金融事業にとっては逆風となる事業環境が継続しそう。最近では既存顧客に対する補償内容の見直しによる販売拡大に取り組むなど、新規顧客の増減に依存しない体制への転換を狙っているとはいえ、新規顧客の減少を相殺する程の規模には到達していない。

エネルギー事業(25%)

■事業内容
エネルギー事業には、メガソーラー発電施設の運営が含まれる。タマホームは福岡県大牟田市に「タマホーム有明メガソーラー」を所有しており、同発電所は敷地24万㎡に太陽光発電パネル6.8万枚を設置することで約16.7MW(一般家庭5千世帯分の年間消費電力に相当)の発電能力を有している。住宅メーカーであるタマホームがメガソーラー発電施設を運営しているのは意外であるが、2012年に再生可能エネルギー固定価格買取制度(FIT)が制度変更された後に、タマホームはメガソーラー発電施設への参入を表明した経緯がある。同時期は異業種からメガソーラー発電施設への参入が相次いだ時期であるが、タマホームは住宅事業において顧客に太陽光発電パネルを販売してきた実績があったことから事業化が可能として参入した。

■過去の売上高分析
エネルギー事業の売上高は3.3億円(2014年)から9.0億円(2019年)のレンジで推移しているが、2014年を除けば概ね売上高8.5億円前後での推移が定着している。2014年のみ売上高3.3億円に留まっているのは、同年に「タマホーム有明メガソーラー」が稼働開始したことで稼働期間が半年間に満たなかったことに起因している。2015年以降は「タマホーム有明メガソーラー」が通年稼働を開始したことで売上高8.5億円規模にまで増大しており、再生可能エネルギー固定価格買取制度を活かして安定的な売電に成功している。尤も、2019年には天候不順による日照時間減少と九州電力による出力制御で売上高7.9億円に低落しており、予断を許さない。特に九州電力による出力制御は九州地域における太陽光発電の能力余剰を示唆するものであり、2035年までの事業期間を計画している「タマホーム有明メガソーラー」が安定した売上高を維持しうるかに注目する必要があろう。

■将来の売上高予測
減少を見込む。メガソーラー発電施設の性質から年間を通した気象条件に発電量を左右されるが、2019年から九州電力による出力制御が本格化した点が痛い。2020年は梅雨が長期化したことで夏期の日照時間が例年に比べて短かった。実際、同年7月は日本全国において日照時間が過去最少を更新した地域が多かったことで「タマホーム有明メガソーラー」の発電量は低迷したと予測される。強いて言えば、九州電力は再生可能エネルギーの出力制御を低減する研究を継続しており、出力制御をできるだけ減らす姿勢を打ち出している点には期待できる。

営業利益の構成

住宅事業(39%)

■過去の営業利益分析
住宅事業の営業利益は7.3億円(2014年)から49億円(2011年)のレンジで推移している。2014年から2019年の期間において住宅事業の営業利益は、7.3億円(2014年)から37億円(2019年)へと増加しているが、2012年以前の利益水準に満たない推移が続いている。この利益水準の停滞は、中期経営計画「タマステップ2021」における規模拡大の戦略に起因すると推測される。中期経営計画「タマステップ2021」では、2030年までに売上高1兆円を目標として掲げており、最近の住宅事業はシェア拡大を重視する傾向が強い。2018年以降は、①地域特性に合わせて開発した地域限定商品ラインナップの販売好調、②各月の着工棟数を平準化することによる完工棟数の増加、などが販売棟数の増加に貢献した反面、価格を抑えたことによる販売好調は利益体質の悪化を招いている。更に、将来的な規模拡大に向けた人材採用の強化による人件費の増大が減益要因として作用するなど、影響は多岐に渡る。

■将来の営業利益予測
横ばいを見込む。売上高の減少による利益水準の低下が起こる反面、タマホームが推進している利益体質の改善施策の効果が顕在化すると見込む。最近のタマホームは地域限定商品ラインナップによる薄利多売を建築効率の底上げによって挽回することを計画している。具体的には、①各月の着工棟数を平準化することによる完工棟数の増加、②注文住宅の価格改定による利益水準の確保、③受注と着工の時間短縮による売上の早期確保、がある。各月の着工棟数の平準化は既に一定の成果を上げており、着工棟数の平準化による完工棟数の増加が表面化している。この効果が更に拡大することで利益体質が改善されると期待できる。当面は営業利益を拡大させることが難しい事業環境が続きそうだが、営業利益の減少を抑制する効果を発揮する公算が高い。

不動産事業(12%)

■過去の営業利益分析
建設事業の営業利益は▲15億円(2011年)から55億円(2018年)のレンジで推移しているが、2018年以降は営業利益50億円規模で推移している。2018年以降は主力事業の住宅事業を上回る営業利益を確保しているが、この営業利益の拡大は販売用不動産を売却したことに起因しており、継続性がない点には注意したい。2018年の営業利益55億円は福岡県福岡市に保有していた不動産を売却した際の売却益33億円が加算されており、2019年の営業利益47億円には東京都大田区に保有していた不動産を売却した際の売却益(非公開)が加算されている。これらの一時的な要因による営業利益を差し引けば、現在の実力値となる営業利益は概ね20億円規模であると推察されよう。尤も、最近の不動産事業は事業領域の拡大に熱心であり、タマホーム不動産やオフィスビル事業への積極投資の段階にある点は念頭に置いておきたい。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。販売用不動産の売却という一時的な要因による営業利益が剥落する結果、営業利益20億円前後の水準まで後退すると見込む。2018年以降のタマホームは過去数年間の不動産市場の高騰から販売用不動産の購入を見送っており、現在は積極的に売却すべき販売用不動産を所有していない。2018年以降の売却による営業利益の拡大は望み難いだろう。とはいえ、COVID-19の流行による不動産市場の市況悪化を踏まえると、タマホームが販売用不動産の購入を見送ってきたことは英断であったと評価できる。本来であれば不動産事業の規模拡大に伴って主力事業からの営業利益が増加することを期待したいが、不動産事業はタマホーム不動産やオフィスビル事業への積極投資の段階にあることから難しい。

金融事業(37%)

■過去の営業利益分析
金融事業の営業利益は3.8億円(2016年)から6.3億円(2015年)のレンジで推移しているが、営業利益5億円前後の水準を概ね維持している。主要顧客が注文住宅を購入した顧客という性質から、住宅事業の販売動向によって業績が振れる。金融事業は営業利益率40%を上回る高い利益水準を誇り、住宅事業が業績不振に苦しんだ時期を含めて営業利益を安定的に確保している点は評価できる。ただし、金融事業の利益水準は過去10年間に渡って微減傾向が続いている点は中止する必要がある。金融事業の営業利益率は55.9%(2011年)から39.3%(2019年)と微減傾向が続いている。売上高を維持するのみでは利益水準が低下するが、最近は住宅事業の伸び悩みから金融事業の売上高の拡大余地は乏しく、結果的に利益水準が悪化する構造となっている。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。金融事業の営業利益は住宅事業の販売動向に連動する性質が強い為、目先の住宅事業の販売低迷が重荷となる。更に、地方銀行など競合他社による住宅ローンの積極攻勢が進んでいることによる顧客の奪い合いが生じている点も逆風である。強いて言えば、最近のタマホームはフィナンシャルプランナーによる生命保険の販売に注力している点に期待できるが、販売棟数の減少による影響を相殺する程の効果は期待し難い。

エネルギー事業(6%)

■過去の営業利益分析
エネルギー事業の営業利益は0.4億円(2014年)から3.3億円(2019年)のレンジで推移しているが、2014年を除けば営業利益3億円前後の水準で概ね推移している。2014年のみ売上高0.4億円に留まっているのは、同年に「タマホーム有明メガソーラー」が稼働開始したことで稼働期間が半年間に満たなかったことに起因している。翌年以降は再生可能エネルギー固定価格買取制度を活かして安定的な営業利益を確保している。しかし、2019年には天候不順による日照時間減少と九州電力による出力制御で営業利益2.0億円に低落しており、足元の事業環境は悪化している。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。梅雨の長期化による日照時間の減少による発電量の減少に、九州電力による出力制御による売電収入の減少が追い打ちとなる。更に、2019年に「タマホーム有明メガソーラー」の固定資産税の減免措置が終了した為、租税負担が増加することも営業利益を下押しすると見込む。エネルギー事業の営業利益は3億円規模で安定的に推移してきたが、目先の事業環境は逆風となる要因が多いことから低調な推移を強いられそうである。とはいえ、従前から営業利益3億円前後の事業であることからエネルギー事業の利益水準の低下がタマホームの業績に及ぼす影響は些少であろう。

財務の健全性

手元資金は標準的な水準

■手元資金の特性
手元資金は2012年以降は250億円規模で推移しており、良くも悪くも変化に乏しい。売上高が年間2000億円規模と考えると手元資金としては160億円が目安となる為、やや多めの水準である。大手住宅メーカーとは異なり、タマホームは自社工場を保有していないことから設備投資による手元資金の上下変動が少ない。住宅事業の有形固定資産への投資は年間10億円前後であることから、手元資金の極端な上下変動が起こらない。強いて言えば、不動産事業およびエネルギー事業において不動産を仕入れた場合には手元資金が減少しやすいが、これらの事業は住宅事業に比べて規模が小さいことから手元資金に及ぼす影響は小さい。

■過去の手元資金分析
2012年のみ手元資金が急増して256億円に到達している。この手元資金の増加は、株式の発行で68億円が加わったことに起因している。タマホームは2013年3月27日に株式上場を果たしたが、この際に公募価格980円で803万株を募集して68億円を調達した。当時の株式売出届出目論見書によると、株式上場による資金調達の用途は、①住宅事業における東大阪店・豊洲店の店舗開設のための差入保証金、②不動産事業における土地購入資金、であった。しかし、実際には株式上場による資金調達から現在に至るまで手元資金を250億円規模で推移させており、手元資金を厚く確保する方針に転じたことが読み解ける。

自己資本比率は業界下位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は株式上場から増加傾向が続いており、直近では20.8%に到達している。同業他社と比較すると、積水ハウス48.1%・ダイワハウス37.3%・住友林業32.1%・サンヨーホームズ28.5%となっており、業界下位の水準である。自己資本比率20.8%という水準はやや心もとないが、これは建設業に特有の工事進行基準による会計処理に起因している。タマホームの貸借対照表を観察すると、工事代金の前払金額が未成工事受入金として流動負債に計上されて負債が肥大化しており、自己資本比率が実態より低く算出されている。実際、直近のタマホームの有利子負債は273億円であり、企業規模からして妥当な水準に収まっている。同業他社に自己資本比率が見劣りする原因は、タマホームが住宅メーカーとしては歴史が浅いことで利益剰余金の蓄積を通じた純資産の拡充が同業他社ほど進んでいない点にある

■過去の自己資本比率分析
2012年に自己資本比率が急激に上昇している点が顕著である。同年にタマホームの自己資本比率が8.4%(2011年)から20.3%(2012年)へと増加したが、これは株式上場による資金調達に起因している。タマホームは2013年3月27日に株式上場を果たしたが、この際に公募価格980円で803万株を募集したことで68億円を調達したことで純資産が増強された経緯がある(2012年に株式上場による自己資本比率の増加が反映されているのは5月期決算を採用している為)。株式上場を果たす以前のタマホームの純資産は46億円に過ぎなかった為、株式上場で約90億円を調達したことは自己資本比率を底上げする効能を果たした。2012年以降に自己資本比率が低落する局面が起こっているが、これは未成工事受入金などの事業動向に連動して増減する負債によるものであり財務体質に大きな変化はない

株価の割安感

BPSは2015年から増加ペースを加速

■BPSの特性
BPSは2015年以降は右肩上がりで推移しており、安定的な増加傾向が継続している。タマホームは2014年から2015年の期間に純損失に転落した点を除けば、概ね安定的に利益を確保していることもあってBPSは緩やかに拡大している。2015年以降は増加ペースが加速しており、株式上場を果たした2012年と比較するとタマホームのBPSは約1.5倍に成長を果たしている。しかし、2018年以降のBPSの増加は不動産事業における販売用不動産の売却益による貢献が大きいことから、継続性がない点には注意したい。なお、在外子会社や有価証券への投資額が大きい企業は株安局面や円高局面でBPSが上下変動しやすいが、タマホームはいずれも小規模であることから経済環境によるBPS変動は少ない。

■過去のBPS分析
2016年から2019年の期間において、BPSの増加傾向が続いている。同期間において、タマホームのBPSは463円(2016年)から718円(2019年)にまで増加しており、顕著な増加を果たした。このBPSの増加は、タマホームの純利益が増加したことで利益剰余金の蓄積が進んだことに起因している。ただし、同期間の純利益の増加は、不動産事業において販売用不動産の売却益が上乗せされたことによる為、同期間のBPSの増加ペースには継続性がない点には注意したいか。最近のタマホームは住宅事業の利益水準が伸び悩んでいる為、BPSが持続的に増加を続ける為には注文住宅の利益水準の改善が不可欠であろう。

PBRは同業他社の水準を上回る

■PBRの特性
PBRは長期的に0.98倍から2.74倍のレンジで推移しており、2015年を底に回復傾向が続いている。タマホームのPBRは業績悪化した時期を除けば概ねPBR1.2倍を上回る水準での推移が定着しており、直近ではPBR1.7倍にまで上昇を遂げている。大手住宅メーカーがPBR1.0倍前後での推移が続いていることを踏まえれば、同業他社よりも割高な水準が定着していると言える。タマホームのPBRが高水準で推移しやすいのは、配当利回りとの兼ね合いに起因している。直近の2019年ではPBR1.81倍と一見すると割高圏である一方、配当利回りも5.37%と相当な高利回りとなっている。PBR1.0倍となる株価718円では配当利回り9.7%という異常値となる為、配当利回りを加味した株価としてPBR1.5倍前後の水準に落ち着いている。

■過去のPBR分析
2015年にPBR0.98倍にまで低落している点が目につく。このPBRの低落はタマホームが成長企業としての期待を失ったことに起因している。同年のタマホームは2014年の消費税増税で発生した駆込需要の反動減に見舞われたことで売上高が1383億円まで減少しており、株式上場を果たした2013年の売上高1695億円と比較すれば約300億円の減少である。タマホームは株式投資家から成長企業として期待されたことでPBR2.5倍前後という割高圏で推移した時期があったが、売上高の縮小によって既に成長に持続性がないことが明白となった。こうした背景から、成長企業としての期待が剥落したことでPBR0.98倍という凡庸な水準へと転落した構図である。2015年以降はタマホームの売上高は増加傾向へと転換したが、依然として住宅事業の売上高は2012年前後から成長を果たしていない点には注意したいか。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。タマホームは配当政策として「経営成績に応じて株主の皆様への利益還元を継続的に行うこと」を掲げており、実際に配当金は配当政策に従って推移している。もっとも、タマホームが純損失に転落した2014年から2015年の期間を含めて継続配当されており、無配転落は回避する傾向があるか。2014年以降は増配傾向が顕著であるが、純利益の拡大に合わせた配当金の増加であり、概ね配当性向30%前後の水準で推移している点を踏まえれば、無理のない増配の範疇である。ただし、2018年以降は不動産事業における販売用不動産の売却益が上乗せされたことによる業績拡大である為、配当金の増加に持続性がない点には注意したいか。

■過去の配当金分析
2015年から2019年までの期間における配当金の急増が顕著である。この配当金の増加は、2014年の消費税増税による駆込需要の反動減によって低落した業績が回復傾向に転換したことで配当金を増加させる余力が生じたことに起因する。同時期のタマホームは景気回復局面における消費マインドの回復を追い風としつつ、新たに投入した地域限定商品ラインナップの販売好調によって業績を拡大させることに成功した。更に、2018年以降は不動産事業における販売用不動産の売却益が上乗せされたことで過去最高益を連続更新しており、配当金の追い風となっている。

配当利回りは増加傾向が継続

■配当利回りの特性
配当利回りは1.97%から5.37%のレンジで推移しており、株式上場から配当利回りの増加傾向が続いている。タマホームは利益水準に応じた配当金を支払うことから配当水準が上下しやすく、株価の上下変動の激しさも相まって配当利回りは安定しない。もっとも、長期的に見れば、日本株の平均的な配当利回りである2%前後をやや上回る水準に収束しており、成長企業には珍しい高めの配当利回りとなっている。タマホームは株主優待として、特製クオカードを配布しており、この利回りを加味すれば実質的な配当利回りは更に高い。クオカードは換金性と汎用性に優れる為、実質的な配当利回りとして加味しやすい。

■過去の配当利回り分析
2018年から2019年の期間において、配当利回り5%を上回る水準に到達している。この配当利回りの増加は、不動産事業で保有不動産の売却利益が計上された一時的な要因による利益水準の向上によって増配されたことに起因している。通常であれば、配当利回り5%を上回る水準は減配を警戒する水準であるが、タマホームの場合は一時的な要因による増配が理由であることが明白であることから減配を既に織り込んでいる。将来、一時的な要因による配当利回りの増加が剥落する局面においては、せいぜい配当利回り4%前後の水準に収束すると見込むべきだろう。

総合評価

目標株価

1360円

COVID-19の流行による株価下落から足元は立ち直りつつあるが、やや過大評価の株価水準に依然としてある。目先の業績を予測するにあたっては、①景気後退局面における消費マインドの低迷、②不動産事業における販売用不動産の売却益の剥落、を視野に入れておきたい。リモートワークの普及によって注文住宅の価値が見直される追い風を加味したとしても、景気後退局面における住宅需要の低迷は歴史的な必然であり軽視すべきではない。尚、目標株価の設定にあたっては、タマホームの販売棟数の回復が早々に頭打ちを迎えて停滞すると想定している。

投資判断

中立

2015年以降のタマホームは業績回復が続いており、純利益は▲4億円(2015年)から98億円(2019年)まで増加している。しかし、過去数年の高い利益水準は不動産事業が保有していた販売用不動産の売却益が上乗せされており、実際の利益水準よりも高く見える点に注意したい。不動産事業における一時的な要因を差し引けば、純利益60億円前後の水準にあると見るべきである。更に、タマホームの本業である住宅事業の業績は過去10年間で売上高こそ拡大したとはいえ、利益水準の停滞が顕著である。最近のタマホームは地域限定商品ラインナップによる薄利多売が目立ち、利益水準の向上は道半ばである。これは中期経営計画「タマステップ2021」が2030年までに売上高1兆円という壮大な規模拡大を狙っていることから、売上高の増加を優先している影響であろう。規模拡大を目標とすることは誤りではないが、売上高1兆円という目標は非現実的である。今後10年間で売上高を約5倍にする目標設定は、日本国内における住宅需要の縮小という実態をあまりに無視していると評価せざるを得ない。実際、最近のタマホームは非現実的な売上高1兆円という目標に向けた過剰な拡販で利益体質の改善が置き去りにされている印象が強い。ただし、タマホームのビジネスモデルはスケールメリットが競争力を大きく左右する為、規模拡大を利益体質の改善に繋げることができれば、評価が一変する可能性を秘めているのも事実である。タマホームへの投資判断にあたっては、足元の業績回復を評価しつつも薄利多売に陥りつつある点を考慮して、中立に設定した。