カテゴリー
企業レポート

ビックカメラ(3048)の分析|コジマは業績回復を果たすが先行投資が重荷

基本情報

ビックカメラ(3048)は、東京都豊島区に本社を置く大手家電量販店である。かつては業界中堅の立ち位置であったが、2000年代以降にソフマップやコジマなどを連結子会社に加えることで規模拡大を果たし、現在ではヤマダ電機に次いで業界2位の売上高を誇る。ビックカメラは都市部の駅近隣を商圏としてきた歴史的な経緯から地方都市における店舗ネットワークが貧弱であったが、2012年に地方都市のロードサイド店舗を主力とするコジマを連結子会社としたことで店舗ネットワークを日本全国に拡大することに成功している。最近のビックカメラはネット事業の拡大に注力しており、2019年にECサイト「ビックカメラ.com」が売上高1000億円に到達する好調ぶりを発揮している。

目次

株価の推移

株価は上昇傾向から調整局面へ

■株価の特性
株価は2007年以降は160円台(2009年)から1900円台(2017年)のレンジで推移しており上下変動が激しい推移を描いている。ビックカメラの業績は景気動向に左右されにくい安定的な推移を描いている反面、株価の上下変動は相当に激しい。尤も、ビックカメラは安定的に利益剰余金を蓄積してBPSを向上させてきたことから、長期的には株価の上昇傾向を維持していると見てよい。2018年4月に記録した上場来高値1942円を頂点に上昇傾向が腰折れして調整局面を迎えているが、2017年の株価1900円台はPBR2.0倍を優に上回る明確な割高圏であったことを踏まえれば、健全な調整を経て平常水準に回帰したと見ることもできよう。

■過去の株価推移
2014年から2015年の期間における株価上昇が顕著である。同期間において、ビックカメラの株価は430円(2013年1月)から1641円(2015年7月)へと急伸する株価上昇を果たした。この株価上昇の原因は、①アベノミクスに端を発した株高局面の到来、②家電エコポイント制度の終了による反動減からの回復、③2012年に連結子会社に加わったコジマの業績再建の進展、が重なったことに起因している。特に、2014年以降はコジマの利益水準が急速な回復によってビックカメラのBPSの増加ペースが加速したことが株価上昇の追い風となった。

日経平均株価との相関性は高い

■日経平均株価との相関性
ビックカメラの株価と日経平均株価の相関性は高い(2008年7月から2020年3月の相関係数:0.93)。本来であればビックカメラの業績は景気動向の影響を受けにくいディフェンシブな側面があるが、過去10年間におけるビックカメラの株価が景気循環的に左右していたことで結果的に相関性が高まっている。同業他社と異なり、ビックカメラは2013年以降にコジマの業績再建に成功したことで株式価値を急激に高めたことで、アベノミクス以降の日経平均株価の上昇局面に追従することができたと見てよい。尤も、依然としてビックカメラは景気敏感な株価推移を描きやすい性質があり、同業他社よりも日経平均株価との相関性は高い。

■過去の日経平均株価との相関性
2016年および2018年に日経平均株価との相関性が急激に低下している点が目につく。ビックカメラは業績の安定的な推移に反して景気敏感な推移を描きやすく、チャイナショックや米中貿易摩擦によって景気減速の懸念が高まると株価下落しやすい。反面、2017年以降の日経平均株価は株安局面にも底堅い推移を保つ性質が強まっており、景気減速の懸念が高まるとビックカメラの株価が先行して低迷する構図となっている。これは、最近の日経平均株価が景気後退局面にも底堅いエクセレントカンパニーの株価に牽引される性質を強めていることに起因していると推測される。

業績の推移

売上高は9000億円到達を目指す

■売上高の特性
売上高は2013年以降は8000億円規模で推移してきたが、2017年以降は右肩上がりの増加傾向が継続して9000億円規模を目指している。家電量販店の売上高は常に一定の買替需要が存在することから安定的な推移を描きやすい反面、政治動向に左右されやすい特色がある。過去においては、家電エコポイント制度や消費税増税によって買替需要が喚起されることで売上高が急伸してきた反面、所詮は需要の先食いに過ぎないことから翌年には反動減に見舞われる特徴がある。長期的には日本国内における人口減少による家電需要の縮小によって家電量販店業界は衰退に向かうと想定されるが、近年のビックカメラは売上高の増加傾向を維持している。これは、①連結子会社に加わったコジマの業績再建に成功したこと、②ECサイト「ビックカメラ.com」の成長軌道を維持していること、③ビックカメラの地盤である都市部は人口減少の影響が少ないこと、④外国人観光客のインバウンド需要を捉えたこと、に起因している。

■過去の売上高推移
2013年からコジマが連結子会社に加わったことで売上高5180億円(2012年)から売上高8053億円(2013年)への急拡大を果たしている点が顕著である。当時、業界5位の売上高に留まったビックカメラは電機メーカーとの価格交渉力の低さを解消する為の規模拡大を望んでおり、経営再建の道半ばであったコジマを買収することで業界2位となる売上高9000億円規模にまで駆け上がった経緯がある。2012年以降はコジマの不採算店舗のスクラップ&ビルドが進められたことで売上高の減少が続いて売上高の成長は頭打ちとなったが、2017年以降はコジマが業績回復に成功したことで再び成長軌道へ回帰している。

営業利益は200億円規模で安定

■営業利益の特性
営業利益は12億円(2012年)から270億円(2018年)のレンジで推移しているが、2014年以降は営業利益200億円規模へと利益水準が切り上がっている。この営業利益の増加は、2012年に連結子会社に加わったコジマの業績再建に成功したことに起因している。ビックカメラは2012年以降にコジマの不採算店舗のスクラップ&ビルドを進めつつ、自社のノウハウをコジマに転写して新業態「コジマ×ビックカメラ」を展開することで業績再建に成功した経緯がある。この業績再建の効果が2014年以降に顕在化したことでビックカメラの営業利益が改善した構図である。尤も、ビックカメラ事業の営業利益は過去10年間で成長していない点には注意を要する。過去10年間においてビックカメラの利益水準を改善する施策は成功を収めておらず、コジマの業績回復に依存した利益水準の向上である点には留意したい。

■過去の営業利益推移
2012年に営業利益40億円にまで低落している点が顕著である。リーマンショックに端を発した景気後退が直撃した2008年ですら営業利益88億円を確保していたことを踏まえれば、著しい営業利益の減少であったことが理解できよう。この営業利益の原因は、①家電エコポイント制度の終了に伴う反動減、②地上デジタル放送への移行完了による買替需要の反動減、③欧州債務危機に端を発した景気減速による買い控え、などである。ビックカメラは歴史的に黒物家電(テレビ・オーディオ・パソコン)を得意とするが、2012年は家電エコポイント制度の終了と地上デジタル放送への移行完了が重複したことで、テレビやオーディオ機器の販売が著しく落ち込んで営業利益を圧迫した。特にテレビの売上高は前年比▲72.4%の下落に直面しており、販売不振が顕著であった。

売上高の構成

ビックカメラ事業(57%)

■事業内容
ビックカメラ事業には、「ビックカメラ」ブランドの都市型家電量販店43店舗が含まれる。大型店舗を駅前に出店することで高い集客力を確保できる反面、必然的に出店できる立地が限られることから店舗数は全国43店舗に留まる。都市型家電量販店の特徴は、①ニッチ商品までを網羅する幅広い品揃え、②駅前に立地する高い利便性、である為、ビックカメラはヨドハシカメラと並んで都市型家電量販店の代表格として評価される。ビッグカメラは家電領域に留まらない品揃えを志向しており、最近ではスポーツ用品・玩具・メガネ・酒類・飲食物・医薬品・日用雑貨等など幅広い領域を取り扱っている。家電に留まらない品揃えを確保することで、顧客の来店頻度を向上させて囲い込む戦略である。尚、最近のビックカメラはネット事業の拡大に注力しており、ECサイト「ビックカメラ.com」を中心としたオムニチャネル化を推進している。2019年に「ビックカメラ.com」は売上高1000億円に到達したが、ヨドハシカメラの「ヨドバシ・ドット・コム」は2017年に売上高1000億円に到達しており、やや後塵を拝している状況が継続している。

■過去の売上高分析
ビックカメラ事業の売上高は過去10年間において3986億円(2012年)から5160億円(2019年)のレンジで推移している。家電量販店の売上高は景気動向に左右されやすく、過去の売上高を観察すると、景気減速に見舞われた2009年・2012年・2016年にそれぞれ売上高の減少に見舞われている。尤も、長期的なトレンドとしては売上高の成長が継続しており、過去10年間では4655億円(2009年)から5160億円(2019年)へと増加を果たしている。この売上高の増加は、①世界的な景気回復局面が続いたことによる旺盛な家電需要が追い風となったこと、②都市部の駅前に立地することで外国人観光客の消費を捉えたこと、③ネット事業の育成に成功したこと、に起因している。業界1位のヤマダ電機が地方都市の衰退に直面して業態転換を強いられる反面、ビックカメラは都市部の駅近隣に立地することから売上高を維持しやすかった。更に、都市部の駅近隣は外国人観光客の増加によるインバウンド需要を享受しやすく、外国人観光客の増加が著しかった2014年前後には免税売上高比率は1%(2012年)から12%(2015年)にまで急増している。

■将来の売上高予測
減少を見込む。2019年9月に消費増税前の駆込需要が起こったことによる反動減に加えて、COVID-19の流行による景気後退による外出自粛が重荷となる。ビックカメラの店舗は都市部の駅近隣に立地する為、都市部で感染拡大が深刻化したことで通勤通学の往来が落ち込んだことが痛い。既に厳格な外出自粛は緩和されたとはいえ、COVID-19の流行を経てリモートワークやオンライン授業などが普及したことで通勤通学で駅周辺を往来する人口が減少していることを踏まえれば、依然として事業環境は厳しい。尤も、相対的にはビックカメラなどの家電量販店はCOVID-19の流行による打撃が軽い点には着目したい。実際、ビックカメラの直近の売上高は前年比▲7.3%(2020年第3四半期)に留まっており、着目に値する底堅さを示している。売上高の減少が軽微に留まった理由としては、①リモートワークの普及に伴うパソコン需要の喚起、②巣籠需要によるゲーム機やテレビの需要増加、③現金10万円の一律給付による消費、④ECサイト「ビックカメラ.com」による顧客流出の阻止、がある。

コジマ事業(29%)

■事業内容
コジマ事業には、「コジマ」および「コジマ×ビックカメラ」ブランドの家電量販店142店舗が含まれる。コジマはかつてベスト電器・ヤマダ電機と業界1位の座を奪い合った名門家電量販店であり、1997年には業界1位の売上高を奪取したこともあった。反面、過剰な出店攻勢による収益力の劣化が深刻化して2000年代以降は同業他社に追い抜かれて業界中堅に低落した経緯がある。2012年にビックカメラの傘下入りを経て、不採算店舗の撤退による収益力の回復を進めている。歴史的な経緯からコジマは地方都市のロードサイド店舗に強みを持ち、ビックカメラと商圏を住み分けることが可能となっている。品揃えは白物家電(冷蔵庫・エアコン・洗濯機など)に強みを持ち、黒物家電(テレビ・オーディオ・パソコン)を得意とするビックカメラとは販売ノウハウを補完する関係にある。最近では、より魅力的な店舗づくりを果たすべく、店舗にミニ四駆サーキットを設置してミニ四駆大会を開催するなど、斬新な集客手法を展開している。尚、コジマはビックカメラの連結子会社であるが、東京証券取引所への株式上場は維持されている。

■過去の売上高分析
コジマ事業の売上高は過去10年間において2261億円(2015年)から2817億円(2012年)のレンジで推移しており、連結子会社に加わった2012年を頂点に売上高が減少している。ビックカメラの連結子会社に加わった時点のコジマは、多くの不採算店舗を抱えた状況にあり、売上高こそ中堅家電量販店の規模を維持していたとはいえ利益水準が低迷していた。ビックカメラがコジマの利益水準を改善すべく、不採算店舗のスクラップ&ビルドを推進したことで売上高が減少した構図である。過去10年間でコジマの店舗数は、222店舗(2009年)から142店舗(2019年)へと減少しており、不採算店舗のスクラップ&ビルドが進行していることが伺える。尤も、コジマの売上高は2015年の2261億円で底打って回復傾向に転換しており、直近の2019年では2681億円にまで回復している。これは単なる不採算店舗の閉鎖に留まらず、新業態である「コジマ×ビックカメラ」の積極攻勢が一定の成功を収めたことに起因している。「コジマ×ビックカメラ」の特色は、①ビックカメラとの提携を活かした家電以外の品揃えの強化、②ビックカメラと協業関係にあるユニクロやタミヤとの提携による魅力的な店舗づくり、によって、売上高を増加させることに成功した。

■将来の売上高予測
増加を見込む。コジマの商圏である地方都市はCOVID-19の流行が深刻化しなかったことに加えて、自家用車で来店できるロードサイド店舗の強みを発揮して巣籠需要を捉えると見込む。実際、コジマの直近の売上高は前年比2.5%(2020年第3四半期)の増加を示しており、COVID-19の流行を追い風としている。売上高が増加した理由としては、①外出自粛による地方都市の昼間人口の増加、②巣籠需要によるゲーム機やテレビの需要増加、③現金10万円の一律給付による消費、④自家用車で来店できるロードサイド店舗の安心感、がある。尚、コジマは店舗が地方都市を地盤とする為、営業自粛は全店舗の10%未満に留まっている。このコジマの好調は、①本来は斜陽であった筈の地方都市のロードサイド店舗が復活した点、②ビックカメラとコジマの明暗が逆転した点、において興味深い事例である。

営業利益の構成

ビックカメラ事業(43%)

■過去の営業利益分析
ビックカメラ事業の営業利益は10億円(2012年)から163億円(2011年)のレンジで推移しており、過去10年間に渡って利益水準は停滞感が強い。過去の推移を観察すると、景気後退局面であった2011年の営業利益163億円が傑出しているが、これは家電エコポイント制度の終了に伴う駆込需要が殺到したことに起因しており、翌年の2012年には反動減によって営業利益10億円に急落している。2014年以降は世界的な景気回復局面の到来によって家電需要が持ち直したことで利益水準は改善を示しており、営業利益130億円規模を概ね維持している。反面、2019年には営業利益99億円まで低下しているが、これは販売費及び一般管理費の増加に起因している。ビックカメラはネット事業の成長に注力すべく、①ECアプリの大型アップデート、②物流施設へのロボット導入、③NFCを搭載した値札の店舗導入、など積極投資を推進したことが販売費及び一般管理費の増加を招いて重荷となっている。ビックカメラは依然として販売好調であるが、将来変化を見据えた積極投資が営業利益を圧迫する構図が見え透く。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の流行による販売減少による下方圧力の他、2017年以降に増加した減価償却費が営業利益の重荷となる。家電量販電は実店舗における販売規模によって利益水準を左右されやすいが、COVID-19の流行の影響による販売規模の縮小が利益水準を低迷させる公算が高い。既に厳格な外出自粛は緩和されたとはいえ、COVID-19の流行を経てリモートワークやオンライン授業などが普及したことで通勤通学で駅周辺を往来する人口が減少している為、都市部の駅近隣に立地する店舗における販売は依然として厳しい。現金10万円の一律給付による消費効果の剥落も加わって、販売規模の縮小による利益水準の悪化は不可避であろう。近年のビックカメラはネット事業の成長に向けて積極投資を繰り返したことで減価償却費が増加しており、これも営業利益の下方圧力として作用することは念頭に置いておきたい。

コジマ事業(28%)

■過去の営業利益分析
コジマ事業の営業利益は▲18億円(2013年)から64億円(2019年)のレンジで推移しているが、2013年以降は利益水準が急速に改善している。連結子会社に加わった時点では営業損失を計上してビックカメラの業績を下押しする要因となっていたが、現在ではビックカメラの営業利益の約30%を稼ぐ事業へと変容している。この変容が起こった要因は、①不採算店舗の撤退再編を進めたこと、②新業態である「コジマ×ビックカメラ」が成功を収めたこと、③ビックカメラとの協業関係によるシナジー効果を享受したこと、に所在する。2012年から2015年の期間において、コジマはシステム統合・仕入一本化・在庫共有化などビックカメラとの協業関係を深化させており、自前主義を貫いていた時代と比べて根本的な利益体質が改善したことも大きい。2012年以降のコジマが利益水準を大きく好転させて業績回復を為した事実は、近年の家電量販店業界において特筆すべき成功事例として評価される。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の流行に反して売上高を伸ばした反面、ビッグカメラとの間で役務提供等に係る費用負担に関する契約締結が発効したことによる減益を見込む。コジマはビッグカメラの経営資源を活用して業績回復を成し遂げたが、これまではビッグカメラへ対価を明確に支払うことなく恩恵を享受してきた経緯がある。こうしたグループ企業間における不公平感を払拭すべく、コジマとビッグカメラは2019年10月に「親会社である株式会社ビックカメラとの役務提供等に係る費用負担に関する契約」を締結しており、2020年からコジマはビックカメラに対価を支払うことが明文化された。この契約によって支払われる金額は公表されていないが、コジマは業績予想において営業利益▲20%を見込んでおり、営業利益の下方圧力として作用することになることが明白である。COVID-19の流行による打撃が少なかったとはいえ、この影響を相殺するほどの業績拡大を成し遂げていない点を踏まえれば営業利益の縮小は不可避であろう。

財務の健全性

手元資金はやや少なめの水準

■手元資金の特性
手元資金は2012年を除けば概ね200億円前後の水準で推移しており、安定的な推移を描いている。売上高が年間8000億円規模と考えると手元資金としては660億円が目安となる為、やや少なめの水準である。直近のビックカメラの貸借対照表を観察すると、現金を含めた流動資産2585億円に対して流動負債1790億円となっており、流動比率は144%に留まる(通常であれば流動比率200%以上が理想的)。尤も、家電量販店などの小売業は商品の仕入れが事業の根幹であることから流動負債が増大しやすい反面、商品販売による現金回収が早い特色がある。手元資金がやや少なめに感じるとはいえ健全な範囲であろう。

■過去の手元資金分析
2012年のみ手元資金が急増して468億円に到達している点が顕著である。これは、同年にビックカメラがコジマの第三者割当増資を引き受けて、コジマの株式の50.6%を取得して連結子会社に加えたことに起因している。当時のコジマは手元資金292億円を保有しており、ビックカメラが株式取得に投じた総額141億円を上回っていた。この場合の連結会計は、株式取得に投じた総額を差し引きしたコジマの手元資金が投資キャッシュフローの収入として処理される為、ビックカメラの手元資金が却って増加した構図である。尤も、翌年の2013年にビックカメラは潤沢な手元資金を短期借入金の返済に充てた為、手元資金の増加は一時的に留まった。

自己資本比率は業界下位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は2012年から増加傾向が継続した結果、直近では33.4%に到達している。同業他社と比較すると、ヤマダ電機54.6%・エディオン51.5%・ノジマ30.8%・上新電機45.2%となっており、業界下位の水準である。ビックカメラは景気動向に業績が左右されやすいとはいえ極端な純損失を計上することは滅多にないことから自己資本比率は安定的に推移しやすい。ビックカメラに限らず、今や成熟産業である大手家電量販店は、利益剰余金の安定的な蓄積を通じた自己資本比率の拡大が継続しやすい傾向が見られる。

■過去の自己資本比率分析
2012年に自己資本比率19%にまで急落している点が顕著である。2012年にコジマを連結子会社に加えたことで同社の負債が加わった為、ビックカメラは自己資本比率が19%にまで低落した。コジマが新規に連結されたことでビックカメラは負債1272億円の増加に見舞われており、これが自己資本比率を低落させた構図である。2012年以降のビックカメラの自己資本比率は、コジマの業績再建に成功したことで安定的な増加を継続して2019年には自己資本比率33.4%まで回復している。尤も、同期間において、同業他社も同様に自己資本比率を増加させたことで、ビックカメラの自己資本比率の低さが相対的に目立つ状況が継続している。

株価の割安感

BPSは右肩上がりの上昇傾向

■BPSの特性
BPSは2008年以降は右肩上がりで上昇傾向が継続している。2008年を除けば、ビックカメラは安定的に純利益を確保しており、これが利益剰余金の蓄積を通してBPSの上昇傾向に貢献している。在外子会社や有価証券への投資額が大きい企業は株安局面や円高局面でBPSが上下変動しやすいが、ビックカメラはいずれも小規模であることから経済環境によるBPS変動は少ない。こうした背景からビックカメラのBPSは極端な下落に見舞われることがなく、安定的な増加を継続している。

■過去のBPS分析
BPSの上昇傾向が長期的に継続しているが、2014年から2019年の期間における上昇が特に顕著である。同期間においてビックカメラのBPSは492円(2014年)から761円(2019年)への上昇を経ており、約1.5倍に増加している。これは2012年に連結子会社に加えたコジマの業績再建に成功したことに起因している。2014年以前のビックカメラは営業利益200億円規模に届くことが稀であったが、2014年以降にコジマの業績回復が顕在化してからは営業利益200億円を安定的に確保できる体質へと変容しており、これがBPSの上昇を加速させた構図である。

PBRはレンジ内での推移が継続

■PBRの特性
PBRは長期的に0.89倍(2010年)から2.12倍(2015年)のレンジで推移しているが、長期的にはPBR1.5倍を中心に推移している。一般的に斜陽産業と見做されやすい家電量販店業界の同業他社がPBR1.0倍を下回る水準で推移する反面、ビックカメラはPBR1.0倍を上回る水準での推移が定着しており、やや割高な水準である。これはビックカメラと同業他社の事業構造が大きく異なる点に起因する。PBRが低迷する同業他社はいずれも、①地方都市の衰退による商圏の地番沈下、②ネット販売の出遅れによる顧客流出、に直面しており将来性を懸念されているが、ビックカメラはこれらの問題に直面していない。長期的な株式価値の向上が依然として期待できることからPBRは底堅い推移を描いていると解釈できよう。

■過去のPBR分析
2014年にPBR2.12倍にまで急騰している点が顕著である。同年のPBRの急伸は、同年にビックカメラの株価が急伸したことに起因する。この株価の急伸は、①ビックカメラの業績が好転したこと、②株高局面の到来による個人投資家の資金流入、③外国人観光客の急増によるインバウンド需要への期待、に起因する。2014年は百貨店業など外国人観光客の爆買い需要が注目されたが、ビックカメラは都市部の駅近隣に店舗を構えることから特にこの恩恵を受けることが期待された経緯がある。当時、ビックカメラの株価は株式投資家の期待が重なったことで上場来高値を更新する上昇を演じており、この結果としてビックカメラのPBRが上昇したと見てよい。

配当金の推移

配当金は安定配当型

■配当金の特性
配当政策は安定配当型である。ビックカメラは配当政策として「業績に応じた適正な利益配当の実施」を掲げているが、実際には配当金は安定的に推移している。ビックカメラの配当政策は本質的には業績連動型であると解釈できるが、業績が安定的であることから結果的に安定配当型の推移を描いている。短期的な業績悪化であれば減配を回避して配当金の維持を図る傾向が強く、2008年にリーマンショックの影響で純損失16億円を計上した局面においても配当金を据え置いている。2008年から2019年の期間において減配を経験せず、安定的な株主還元を継続してきた実績は評価できるだろう。

■過去の配当金分析
2016年から配当金の増加傾向が継続しており、直近では年間20円にまで増加している。ビックカメラは配当性向20%前後を維持していることから純利益と配当金が連動する関係にあるが、2016年以降のビックカメラは純利益150億円規模への拡大を果たしたことで配当金が増加している構図である。尤も、2019年にはビックカメラの利益水準が低下したことで配当金の増加傾向はやや停滞しそうである。最近のビックカメラの純利益は、コジマの業績回復に支えられている節があり、配当水準の維持にはコジマの業績安定が不可欠になっている。

配当利回りはやや上昇傾向

■配当利回りの特性
配当利回りは0.84%(2015年)から3.03%(2010年)のレンジで推移しており、近年の配当利回りの低迷からやや上昇傾向へ転じている。ビックカメラの配当利回りは日本株の平均的な配当利回りに劣後する水準で推移しやすく、インカムゲインを目的として保有する意欲が湧きにくい。尤も、ビックカメラは株主優待として、「株主様お買物優待券」を配布しており、この利回りを加味すれば日本株の平均的な配当利回りを上回る水準に到達する。尚、「株主様お買物優待券」はECサイト「ビックカメラ.com」で使用できることから地域差なく消化可能である点も評価できる。

■過去の配当利回り分析
2014年から2018年の期間において配当利回り1.5%を下回る水準での推移が続いていた点が際立つ。この配当利回りの低下は、同時期のビックカメラがPBR2.0倍付近の高値圏で推移したことに起因している。ビックカメラの業績拡大を踏まえて株価が上昇した反面、配当金は2018年に至るまで年間10円から年間12円で推移していたことで配当利回りが相対的に低下した構図である。尤も、2018年以降にはビックカメラの株価が調整直面を迎えたことと年間20円までの増配が重なったことで、配当利回り2%に迫る水準へと上昇傾向へ転換している。

総合評価

目標株価

1200円

COVID-19の流行による打撃を最小限に留めた点は評価できる反面、株価は既にPBR1.5倍前後の水準に回帰しており値頃感は希薄である。当面は利益水準の低迷が継続することが見込まれる割に、COVID-19の流行以前の株価水準を維持している点にはやや疑問が残る。コジマは健闘しているとはいえ、ビックカメラの店舗は依然として来客数の減少に苦悩しており、楽観先行の気配が強い。同業他社と比較してネット事業への進出が先行している点を加味しても、この程度の株価水準が当面の限界であろう。

投資判断

中立

最近のビックカメラの事業動向を概観すると、①2012年以来の課題であったコジマの業績再建は見事に成功、②ECサイト「ビックカメラ.com」は成長軌道を維持、③ネット事業と実店舗のオムニチャネル化を志向した積極投資は道半ば、と評価できる。特にコジマの業績再建に成功したことは、都市部の商圏に依存するビックカメラの弱点を補完しつつ電機メーカーとの価格交渉力を底上げする効果を発揮しており、高く評価されるべきであろう。反面、最大の課題はビックカメラの利益水準が過去10年間に渡って成長しておらず、コジマの業績回復に依存している点である。この問題を解消すべく、ネット事業とオムニチャネル化に積極投資を継続するが、この投資が重荷となって利益水準が低下する状況に陥っている。更に、COVID-19の流行によってビックカメラが得意とする都市部の駅近隣の往来が減少しており、事業環境が悪化した点も軽視できない。当面はコジマの業績回復に支えられることになろうが、ビックカメラが押し進めるネット事業とオムニチャネル化への積極投資が実を結ばない場合は将来的に成長ドライバーを失う状況に至ることが想定されよう。反面、現在の株価水準はPBR1.5倍前後のやや割高な水準で推移しており、積極的に買い急ぐ程の値頃感ではない。