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企業レポート

リズム時計工業(7769)の分析|時計事業の地盤沈下を他事業の成長で補い切れず業績低迷

基本情報

リズム時計工業(7769)は、1950年に設立された時計製造を主力とする精密機器メーカーである。1953年に同業のシチズン時計と資本提携を締結して以来、現在に至るまでシチズングループとの関係が深い。掛時計や置時計などの大型時計の製造を得意としており、シチズングループにおける大型時計部門としての役割を担っている。近年は時計製造で培った精密加工技術を活かして、電子部品・接続端子・精密部品などの製造販売への進出を果たしており、総合精密機器メーカーとしての性質が色濃くなっている。

目次

株価の推移

株価は安定性を喪失して底値圏へ

■株価の特性
過去10年間に渡って500円台から2500円台のレンジで推移しており上下変動が激しい。2010年以降は概ね1000円から2000円台で安定的に推移していたものの、2018年以降は一転して500円台までの下落を演じており、底値圏を目指している。リズム時計工業の株価は必ずしも業績と連動しておらず、過去10年間で特に好業績を示した2012年および2014年よりも、2017年に高値2530円を記録している。これは、株式市場が活況を呈する中で発行済株式数の7.5%にも及ぶ自社株買いを発表したことが株式市場に好感された点に起因している。

■過去の株価推移
2017年までリズム時計工業の業績は堅調であったが、2018年には接続端子事業を除く全セグメントで業績低迷が顕在化したことで株価は急落した。当初計画では2018年には純利益9.5億円を目指す予定であったが、実際には純損失2.6億円を計上しており、株式投資家からの失望を買ったことで株価は下落に転じた。2019年1月には連結子会社の麗声東莞で不適切な会計処理が発覚したことで株式投資家からの失望を買った他、特別損失6億円と調査費用3.5億円を計上するなど業績に対する下方圧力が更に強まったことで更なる株価低迷を招いた。リズム時計工業の株価が500円台を示したのは1973年来47年ぶりの事態であり、歴史的には底値圏に近い水準である様に思われる

日経平均株価との相関性が低下

■日経平均株価との相関性
リズム時計工業の株価は日経平均株価との相関性は高い(2007年4月から2020年3月の相関係数:0.55)が、2018年以降は相関性が低落している。これは、時計産業を取り巻く環境変化に起因する業績悪化や連結子会社の麗声東莞での不適切な会計処理などの影響でリズム時計工業の株価が低落したことに起因する。景気後退局面にも底堅いエクセレントカンパニーの株価に牽引される日経平均株価との性質的な差異もあるとはいえ、歴史的には日経平均株価との相関性がこれほど急低下する事態は珍しい。

■過去の日経平均株価との相関性
2008年から2016年にかけて日経平均株価との相関性は高い推移を描いていた。強いて言えば、アベノミクスによる株高局面を迎えたことで日経平均株価が急上昇を遂げた2013年は、リズム時計工業の株価が冴えない推移を続けたことで相関性は低かった。しかし、2017年には日経平均株価の上昇に迎合する様にリズム時計工業の株価も上昇を遂げており、相関性の低下は解消されている。リズム時計工業の業績は2012年から低迷が続くものの、日経平均株価が上昇する株高局面では連動的に上昇を遂げており、日経平均株価との相関性は高い部類か。

業績の推移

売上高は300億円規模で安定推移

■売上高の特性
売上高は過去10年以上に渡って300億円規模で推移しており、変化に乏しい。尤も、表面的には売上高に大きな変化はないものの、売上高の内訳は過去10年間で大きく変容している。2010年の時点では時計事業が売上高の41%を占めていたが、2018年の時点には32%にまで減少しており、時計事業以外のセグメントの存在感が相対的に拡大している。現在では2011年に協伸工業を買収することで加えた接続端子事業の成長が時計事業の衰退を下支えする構図となっており、旧来の時計メーカーとしての色彩はかなり薄くなっている。

■過去の売上高推移
2014年の売上高373億円を頂点に、緩やかな減少傾向にある。協伸工業の買収による接続端子事業の追加という要因を除けば、リズム時計工業の売上高は2007年から漸減傾向が継続している。買収効果によって2011年から2014年までの売上高の拡大が実現した反面、2014年以降は時計事業および電子事業の売上高の減少を接続端子事業の成長では補い切れなくなり、売上高の減少傾向が表面化している。過去最高の売上高は1992年の610億円であるが、当時は大型時計や置時計における新興国メーカーとの競争も希薄であり、嗜好性の高い高価格帯製品の需要が活況であった。背後の産業構造がまったく異なる為、参考にはならない。

営業利益は2012年から減少傾向

■営業利益の特性
営業利益は2007年を底に回復基調が続いていたが、2012年から減少傾向に転換している。営業利益こそ確保できているものの、直近の営業利益率は約2.5%と低めの水準である。これは主力の時計事業の営業利益が2012年から低迷している点に起因している。リズム時計工業は事業の多角化が進んだ企業であるものの、依然として売上高の約30%を占める最大セグメントである時計事業が低迷している点が営業利益にとって重荷となっている。

■過去の営業利益推移
2007年から2012年までの営業利益の回復基調が顕著である。国内の大型時計需要は2000年代から既に顕在化した問題であり、2007年前後のリズム時計工業は、現在と同様に時計事業の営業利益の低迷に苦しんでいた。当時は、①高付加価値製品に力点を置いた商品ラインナップの再編、②生産販売プロセスの効率化による収益力の向上、によって時計事業を立て直したことで営業利益は回復傾向に転じた。主力事業の大型時計の需要縮小がリズム時計工業の長年の苦悩の種であり、時計事業の再建およびM&A戦略による営業利益の確保が求められよう

売上高の構成

時計事業(31%)

■事業内容
百貨店事業には、掛時計・置時計・目覚時計・デジタル時計・設備時計・ムーブメントなどのクロックおよびUSBファン、防災行政ラジオなどの製造販売が含まれる。同業他社と異なり、腕時計分野のラインナップは極めて少ないものの、非腕時計分野のラインナップは幅広い。数千円の目覚まし時計から数百万円の大型置時計までを網羅しているが、特に贈答用途や嗜好性が高い大型時計の分野で強みがある。長年に渡ってシチズンブランドを利用してきた経緯からリズムブランドの認知度は低いが、2014年からはシチズンブランドと並行してリズムブランドの時計を製造販売する方針に転じた。中期経営計画のKPIとしてブランド認知率を採用する等、自社ブランドの普及に熱心である。2019年に外国製時計の輸入を主力事業とするアイ・ネクストジーイーを買収したことで、新規販路を確保しつつブランドの幅を拡大している。

■過去の売上高分析
時計事業の売上高は9億円から13億円と上下変動は緩慢であるが、2012年以降は売上高の減少傾向が継続している。2012年の売上高13億円から2018年には売上高9億円にまで減少しており、減少率は▲31%に及ぶ。スマートフォンの普及と新興国メーカーの台頭によって時計事業の逆風は強いが、中高価格帯の大型時計を主力とするリズム時計工業は特に厳しい。腕時計分野であれば嗜好性やステイタス性によってスマートフォンや新興国メーカーとの差別化を図れるものの、リズム時計工業の主力はそうした要素が希薄な大型時計である。こうした逆境への対抗策として、①北米および中国におけるインターネット販売の拡充、②リズムブランドの認知度の向上による贈答品需要の開拓、③人気キャラクターとのコラボ商品の投入、④高価格製品の積極開発、⑤Bluetoothなどによるスマートフォン連携機能製品の開発、など多岐に渡る方策を実行しているものの、時計事業の売上高の縮小が底打ちするには至っていない。

■将来の売上高予測
微減を見込む。2012年から長期的な減少傾向が継続していることで底打ちが近づいていると想定されるものの、反転して増加に転じる材料にも乏しい。時計事業の売上高の減少は、①新興国メーカーの台頭による競争激化、②スマートフォンの普及による需要低下、③嗜好性が高いカラクリ時計などの高価格機種の需要減少、などの構造変化は依然として逆風である。強いて言えば、景気回復局面においては贈答品需要を中心として高価格機種の需要が若干の回復を起こすと見込まれるが、COVID-19の流行による景気後退局面が水を差す格好となった。当面は、リズムブランドの認知度向上に向けたマーケティング施策を実行しつつ、景気回復局面を待つ状況が継続すると見込む。

電子事業(17%)

■事業内容
電子事業には、車載関連機器・情報関連機器・加飾複合品などの製造販売が含まれる他、EMS(他企業からの電子機器の受託生産)にも進出している。クオーツ時計の製造で培った電子技術を応用した事業でありながら、現在は情報機器および車載製品を中心とした幅広い製品を取り揃えている。車載製品の主力製品は車載用時計・バックカメラ・スピードメーターパネル・シフトインジケーターなどであり、情報関連機器の主力製品はパチンコ機器製造大手のダイコク電機へ納入しているパチンコ関連製品などである。意外にも船舶製品にも進出しており、船舶用LCDメーターや船舶時計なども取り揃える。電子事業は中国およびベトナムに拠点を有しているが、近年は現地に進出している顧客企業からの受託生産が活況である。

■過去の売上高分析
電子事業の売上高は過去10年間に渡って9.6億円から5.6億円のレンジで推移しているが、長期的な売上高の減少傾向が続いているる。過去10年間で売上高の内実は大きく変容しており、2011年の時点では電子事業の海外売上高比率は約1%に留まっていたが、2018年の時点では約50%にまで急伸している。これは、①2013年に連結子会社のリズムプレシジョンベトナムがEMS製品の生産を開始した点、②電子事業が注力してきた情報関連機器と車載関連機器の売上高は減少が続いた点、に起因している。特に情報関連機器はパチンコ関連製品の需要縮小による売上高の減少に見舞われており、電子事業の売上高の減少を惹起した最大要因となっている。情報関連機器の衰退という背景を踏まえて、これまで自社製品の製造で培ってきた技術を基に他企業から電子機器を受託生産することで売上高を維持している構図へと変化しつつあると言えよう。

■将来の売上高予測
微減を見込む。ベトナムにおけるEMS需要は依然として堅調に推移するものの、情報関連機器および車載製品の売上高は停滞を迎えると予測する。情報関連機器はパチンコ機器製造メーカー、車載製品は自動車メーカーが主要顧客であるが、いずれもCOVID-19の流行による経済停滞で打撃を被っている。特にパチンコ機器製造メーカーは、日本全国のパチンコホールが感染拡大防止を目的とした営業自粛を強いられた影響から、売上高が停滞する懸念が強い。現在では電子事業の売上高の約50%がEMSによって確保されており、過去と比べれば情報関連機器と車載製品の構成比率は低下しているものの、COVID-19の流行に端を発した景気後退局面の影響は不可避的であると想定される。

プレシジョン事業(20%)

■事業内容
プレシジョン事業には、産業機械・光学機器・事務機器・精密部品・高難度精密金型の製造販売が含まれる。取扱製品は多岐に渡るものの、実態としてはプラスチック加工と金属加工の領域に集約されると考えてよい。いずれも高い工作精度が求められる製品を手掛けており、プラスチック加工はカメラなどの光学機器向けが主力であり、金属加工は工作機械向け部品などが主力となっている。金属加工においては精密金型の製造実績は顕著に多い。主に連結子会社の東北リズムおよびプリテックが担う事業であるが、中国およびベトナムにも拠点を有している。東北リズムは1977年にリズム時計工業の部品加工部門および金型製造部門を分離して設立された企業であり、時計製造を源流としている点は変わりない。

■過去の売上高分析
プレシジョン事業の売上高は過去10年間に渡って50億円から69億円のレンジで極めて安定的に推移している。プレシジョン事業の売上高はカメラなどの光学機器向け製品への依存度が高く、過去10年間に渡って工作機械向け部品や精密金型の売上高の拡大に注力してきた経緯がある。スマートフォンの普及が本格化した2011年以降はカメラの販売台数減少によって売上高の減少を強いられたものの、プレシジョン事業は早期から光学機器向け製品への依存度を下げる戦略を掲げていたことで影響を軽微に留めることに成功した。新規顧客の開拓努力によって事務用機器や通信機器向けの部品製造を受注したことで2013年の売上高50億円を底に反転しており、近年は売上高60億円規模で推移している。2017年には工作機械向け部品の新工場を福島県に建設しており、リズム時計工業にとって過去最大規模の約30億円を投じた。

■将来の売上高予測
微減を見込む。プレシジョン事業が売上高を依存していたカメラの需要はスマートフォンの普及によって急減を強いられてきたが、コンパクトデジタルカメラを除けば出荷台数の減少は概ね底打ちしており、売上高への下方圧力は緩和されつつある。寧ろ、過去10年間に渡って光学機器向け製品に代わるべく注力してきた工作機械向け部品や精密金型の売上高がCOVID-19の流行による景気後退局によって打撃を被る点を懸念したい。工作機械向け美品や精密金型の主要顧客は景気動向に設備投資意欲を左右されやすい製造業であり、景気後退局面においては需要が急減する懸念が大きい。2017年に建設した工作機械向け部品の生産を担う新工場の稼働率に影響が及ぶかを注視したい局面である。

接続端子事業(30%)

■事業内容
接続端子事業には、タブ端子・テーピング端子・端子台などの製造販売が含まれる。2011年に協伸工業(現リズム協伸)を買収して発足した事業であるが、2013年に梅田工業から取得した梅田工業インドネシア(現リズム協伸インドネシア)が加わっている。協伸工業は高い信頼性を要求される自動車および電化製品に使用される接続端子の製造を得意としており、電子事業で車載部品を手掛けてきたリズム時計工業は顧客網および技術面のシナジーを期待して買収した経緯がある。接続端子事業の製造する接続端子は自動車・家電製品・太陽光パネル・エレベータなどに幅広く用いられているが、高い信頼性を要求される最終製品の比率が高い。

■過去の売上高分析
接続端子事業の売上高は売上高24億円から売上高97億円と幅広いが、2011年の協伸工業を買収して以来、高成長が継続している。2018年以降は製造業における景気減速が目立ち始めたが、接続端子事業は、①電機メーカーへの家電およびAV機器向け製品の拡販、②インドネシアにおける自動車および二輪車向け製品の旺盛な需要、③日本における電気自動車およびハイブリッド車向け製品の拡販、に支えられて売上高を伸ばしている。2014年の売上高97億円が傑出しているが、これは2013年に買収したリズム協伸インドネシアの決算月変更によって15か月分の業績が反映された点による。2016年にはドイツに駐在員事務所を置いて情報収集を開始しており、欧州市場への進出機会を伺っている。

■将来の売上高予測
微減を見込む。過去10年間で積極的な事業拡大と顧客開拓を果たしてきたことから、2011年前後の売上高には回帰し得ないものの、接続端子事業が売上高を依存する顧客企業の不調が打撃である。接続端子事業の主要顧客は自動車メーカー・電機メーカーであるが、製品あたりの使用量が多い自動車メーカーへの依存度が特に高い。新車販売台数はCOVID-19の流行に端を発した景気後退局面によって、当面は停滞を余儀なくされると想定され、こうした経済環境において接続端子事業が積極的に売上高を拡大することは難しい。電機メーカーは相対的には早期に回復基調に向かうものの、自動車メーカーへの売上高の減少を補うほどの効果は見込み難い。最終製品に組み込まれる部品に過ぎない以上、顧客企業の動向に売上高を左右される点は、部品メーカー共通の課題か。

営業利益の構成

時計事業(0%)

■過去の営業利益分析
時計事業の営業利益は▲2.5億円から16億円と上下変動が激しいが、2013年以降は低迷傾向が継続している。円高局面になると部品調達コストを圧縮できることから、円高は時計事業にとっての増益要因であり、2012年は1ドル80円前後での円高推移となっていたことが増益に貢献している。2013年以降の営業利益の低迷は、①為替が円安推移にシフトしたことによる部品調達コストの上昇、②スマートフォンの普及による低価格帯製品の販売減少、③大型時計の需要減少の継続、が大きい。2016年以降は営業赤字が継続しており、再建に向けた諸施策を急ぐものの成果には乏しい状況が続く。近年の時計事業は販売数量が減少する中でも営業利益を確保できる体制への転換を志向して、国内外工場の生産合理化にも力を入れており、2019年にはベトナムにおける時計生産からの撤退を決断している。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。時計需要の減少の底打ちが未だに見られず、販売数量の減少が継続すると見込まれる。生産体制の合理化による利益水準の確保を目指すものの、販売数量の減少による下方圧力を相殺する程の効果は期待できない。COVID-19の流行による景気後退局面においては嗜好性が高い高価格帯製品の売上が低迷することで利益水準が更に低下しそうである。COVID-19の流行という世界的な危機的局面においても為替推移が1ドル110円前後での円安推移が定着している点も、更に営業利益を下押しするか。

電子事業(3%)

■過去の営業利益分析
電子事業の営業利益は▲2.8億円から5.3億円のレンジで推移しているが、2010年以降は営業利益が明らかに低迷している。2009年の営業利益5.3億円を最後に営業利益が明確に切り下がっており、好調だった2010年および2014年の営業利益も2億円未満に留まっている。売上高こそEMSの成長によって横ばいを維持しているものの、パチンコ関連製品を主力とする情報関連機器の需要減少が営業利益にとって打撃となっている公算が高い。リズム時計工業はパチンコ関連製品に関する情報開示を避ける傾向がある為に推測の域をでないが、電子事業が好調を示した2009年は主要顧客であるパチンコ機器製造大手のダイコク電機の業績が好調であった時期とも重なる。パチンコ機器の需要は長期的な減少傾向にあることから電子事業はEMSへ軸足をシフトしたものの、利益水準ではパチンコ関連製品には及ばず営業利益が低迷していると推測されるだろう。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。ベトナムにおけるEMSの引き合いが強いことから売上高こそ長期的な成長を継続しているものの、中国およびベトナムのEMS工場における原価率の上昇が営業利益を相殺して減益となる。為替が1ドル110円前後での円安推移となっている点は営業利益を下支えするが、利益水準の低下は不可避的であろう。COVID-19の流行による新車販売台数の急減によって車載関連機器の操業度の低下が見込まれる点も重荷である。海外のEMS拠点は人件費や為替の変動によって利益水準が上下変動を強いられやすく、必ずしも売上高の成長が営業利益の拡大と直結しない点には留意しておきたい。リズム時計工業は電子事業を担ってきた益子工場を閉鎖して東北リズムに生産機能を統合する方針を打ち出しており、利益水準の改善に向けた効率化は継続しそうである。

プレシジョン事業(58%)

■過去の営業利益分析
プレシジョン事業の営業利益は▲1.2億円から7億円のレンジで推移しているが、2015年から急激な改善傾向を示しており、特に2016年以降は営業利益5億円以上を確保している。これは衰退が続いたカメラなどの光学機器向け製品への依存度を脱却するべく、工作機械向け部品や精密金型の売上高の拡大に注力した成果が表面化したことに起因する。2017年以降は採算が良い非光学機器向け製品の比率の増大と、既存の生産ラインにおける効率化施策が結実したことで更に営業利益が上積みされる構図となった。2017年以降は営業利益率が10%を超える水準で推移しており、リズム時計工業にとって有望な事業となっている。

■将来の営業利益予測
微減を見込む。プレシジョン事業の成長を支えた工作機械向け部品は景気動向に左右されやすく、米中貿易摩擦に端を発した景気後退が懸念された2018年以降は受注減少が進んできた。2020年からはCOVID-19の流行による設備投資意欲の冷え込みが打撃となり、当面は低調な推移を強いられる局面である。プレシジョン事業が福島県に立ち上げた新工場への設備投資に意欲的であり、自動化を主眼に置いた20億円規模の投資計画を有している点も営業利益に対する下方圧力として目先は作用しそうである。将来的には新工場による利益水準の向上が期待されるが、新工場の生産が軌道に乗るまでは減益要因となりうる点には留意したい。

接続端子事業(55%)

■過去の営業利益分析
接続端子事業の営業利益は1.4億円から9.6億円のレンジで推移しているが、2013年以降は概ね5億円以上で推移している稼ぎ頭のセグメントである。営業利益率こそプレシジョン事業にやや劣る7%前後の水準で推移しているが、売上高の規模が勝ることから営業利益の絶対額ではプレシジョン事業と互角になっている。2014年の営業利益9.6億円が傑出しているが、これは2013年に買収したリズム協伸インドネシアの決算月変更によって15か月分の業績が反映された点による。円安は接続端子事業にとって原材料高として減益要因になるが、2013年以降は円安影響による営業利益の下方圧力を受けながらも健闘している印象である。

■将来の営業利益予測
微減を見込む。接続端子事業は成長セグメントとはいえ、最終製品に組み込まれる部品に過ぎない性質から顧客企業の動向に利益水準を左右される。2018年以降は米中貿易摩擦に端を発した景気後退局面に差し掛かったことで主要顧客の自動車メーカーおよび電機メーカーの業績が冴えないことから、接続端子事業の利益水準も低落を強いられると見込む。特に接続端子の使用数量が多い自動車メーカーはCOVID-19の流行による経済停滞を受けて新車販売台数が激減したことは、営業利益に痛撃を与える見通しである。2019年にはベトナムに新工場を建設する設備投資の支出も予定されており、これも営業利益にとっては重荷である。当面は利益水準の低迷に耐えながら、将来に向けた布石を打つ段階であろう。

財務の健全性

手元資金は極めて潤沢な水準

■手元資金の特性
手元資金は増加傾向にあり、2015年以降は100億円規模で推移している。売上高が年間300億円規模と考えると手元資金としては25億円が目安となる為、極めて潤沢な水準である。リズム時計工業は売上債権を買掛債務を上回っており、手元資金への安全性は高めである。手元資金は財務健全性を測る指標であると同時に、当該企業が事業に積極投資して利益創出する能力があるかを測る指標でもあるが、リズム時計工業の姿勢は積極投資からは程遠い。

■過去の手元資金分析
2015年の手元資金の急増が際立つが、これは、①社債50億円の発行、②有価証券14億円分の売却、に起因する。リズム時計工業は2015年に特定投資株式(純投資以外の目的で保有する上場投資株式)を減らしており、これまで保有してきたスター精密・セイコーホールディングス・Olympicグループなどの株式をすべて売却したことで手元資金が急増した構図である。特にスター精密とは株式持合の関係にあったが、お互いの保有株を売却したことで現在では関係を喪失している。2017年に手元資金が94億円にまで後退しているのは自社株買いに約23億円を投じた影響であり、過剰な手元資金を株主還元に活用した結果である。

自己資本比率は業界上位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は微減傾向にあるものの、依然として70.3%と高水準に位置している。同業他社と比較すると、セイコーホールディングス36%・カシオ計算機59%・シチズン時計60%となっており、業界上位の水準である。事業規模こそ同業他社に大きく劣るものの、負債を抑制した保守的な事業運営を継続していることもあって、同業他社と比較した自己資本比率の高さは傑出している。手元資金の潤沢さも加味して考えれば、財務耐久力は高いと見てよい。

■過去の自己資本比率分析
2010年までは自己資本比率80%を超える水準で推移していたが、徐々に自己資本比率が減少している。この自己資本比率の低下は負債を緩やかに拡大している点に起因する。2007年の時点では実質的に無借金経営であったが、2015年に社債50億円を発行したことで自己資本比率がやや低下した。社債こそ発行したものの企業規模を考えれば明らかに負債は少なく、負債の拡大を極力避けようとする性質が見え透く。リズム時計工業の様に主力事業が衰退する企業の戦略としては、①負債を拡大して積極的な事業転換を図る戦略、②負債を極限まで抑制して衰退を受容しながら生存を模索する戦略、があるが、リズム時計工業は後者である。

株価の割安感

BPSは微増傾向が継続

■BPSの特性
BPSは2008年から右肩上がりで推移している。リズム時計工業は2007年から2008年の期間で累計22億円の純損失を計上したことを除けば、概ね安定的に利益を確保していることもあってBPSは緩やかに拡大している。リズム時計工業は資本金および資本剰余金として約200億円を計上している。リズム時計工業の事業規模からすれば純損失が発生しても精々10-20億円規模である為、BPSの減少幅は軽微に留まる。在外子会社や有価証券への投資額が大きい企業は株安局面や円高局面でBPSが上下変動しやすいが、リズム時計工業はいずれも小規模であることから経済環境によるBPS変動も少ない。

■過去のBPS分析
2011年から2014年の4年間におけるBPSの上昇傾向が際立つ。リズム時計工業の純資産は2011年の時点では約300億円であったが、2014年の時点では340億円に増加を遂げており、これがBPSに表れている。リズム時計工業の純資産の増加には保有する有価証券の評価額の拡大が貢献を果たしており、2011年から2014年のBPSの増加幅の約40%が有価証券評価差額金によるものである。同時期のリズム時計工業は過去10年間において特に業績が好調であったことも相まって、BPSが継続的に上昇した構図である。反面、2014年以降は株高局面の一服と業績の停滞が相まってBPSの上昇は極めて抑制的になっている。

PBRは長期的な低迷が継続

■PBRの特性
PBRは長期的に0.4倍から0.7倍のレンジで安定的に推移している。リズム時計工業は株価の上下変動こそ大きいものの、BPSが安定的に推移していることでPBRは安定的である。業績の停滞感が強いとはいえBPSが安定的に推移する点を考慮すれば、やや割安である様にも感じられるが、事業の多角化が進んだことで企業価値を評価し難く、接続端子事業を除けば有望な事業が少ない点を考慮すればこの程度のPBRに帰着するのは致し方ない。

■過去のPBR分析
2013年から2015年まで3年間に渡ってPBR0.5倍を下回る推移を強いられている。同時期のリズム時計工業は、低水準ながら純利益を確保し続けたことで利益剰余金が増加したことに加えて、アベノミクスによる株高局面による有価証券評価差額金の増大によって、BPSが拡大基調を続けていた。しかし、2012年と比べて業績が続いたことで株価は冴えず、PBRは低迷を強いられていた。2013年以降は接続端子事業の成長など業績回復の兆しが見えたことで株価の底値が切り上がった為、PBR0.7倍の水準にまで上昇を遂げている。

配当金の推移

配当金は安定配当型

■配当金の特性
配当政策は安定配当型である。リズム時計工業は配当政策として「効率的な業務運営による収益力の向上、財務体質の強化を通じ、株主への安定的な配当の維持と配当性向概ね30%」を掲げており、実際に配当金推移は極めて安定的である。著名な上場企業は業績好転すれば増配圧力が加わるものの、リズム時計工業の様にマイナーかつ大株主の庇護下にある企業は増配圧力が加わりにくく、業績低迷も増配を回避する大義名分となっている。これもあって、業績好調時に増配せず業績低迷時にも減配しないフラットな配当推移が実現できている。

■過去の配当金分析
純損失19億円を計上した2008年には無配転落している。同年は、①リーマンショックに起因する投資有価証券評価損、②構造改善費用計上、③アメリカで販売した時計のメロディーが著作権を侵害したとして提訴された裁判における敗訴による損害賠償金の支払い、など逆風が特に強かったことから配当を見送った。配当金の推移こそフラットであるが、配当金の支払い以外による株主還元は遂行しており、2017年に自社株買い23億円を実施することで発行済株式数が約13%の減少を遂げている

配当利回りは凡庸な水準

■配当利回りの特性
配当利回りは2%台をやや下回る水準で推移しており、日本株の平均的な配当利回りである2%前後に僅かに劣後する水準である。株価の上下変動こそ大きいものの、配当金が年間30円でフラットに推移したことで、配当利回りは良くも悪くも安定的な推移となっている。長期保有したところでインカムゲインという観点では大したリターンを得ることができない反面、株価の上下変動の激しさから株価下落時の損失が拡大しやすい点には注意を要する

■過去の配当利回り分析
過去10年間に渡って配当利回りは概ね1%台で安定的に推移している。配当金がフラットで推移している為、配当利回りは株価変動によって左右される。過去10年間の傾向としては、株価が高値圏にある時期には配当利回り1%を下回る反面、株価が底値圏にある時期には配当利回り2%に迫る局面が見られる。そもそもの配当利回りが低水準かつ滅多なことでは配当金が変動しない為、配当利回りを意識する必要性は薄いか

総合評価

目標株価

750円

時計事業の業績悪化の底打ちが見えない点が懸念ではあるものの、財務体質は堅牢であり業績を好転させるだけの余力はある。潤沢な手元資金を活用して、協伸工業の買収によって成長を享受した2011年から2014年の再現を図る手段も残されている。COVID-19の流行によって業績低迷が長期化しようが、長期的な目線に立てばこの程度の株価であれば投資妙味はあろう。

投資判断

やや弱気

社名の由来でもある時計事業の衰退に対して、どう立ち回るかが問われる局面である。リズム時計工業の戦略としては、①時計事業は効率化による利益水準の維持とマーケティング施策による自社ブランドの認知度向上、②接続端子事業の成功例に見られる潤沢な手元資金を活用したM&A戦略、③カメラ需要の減少による低迷からの再建に成功したプレシジョン事業への更なる積極攻勢、④成長軌道にある接続端子事業およびベトナムにおけるEMS事業への継続投資、に概ね集約されるだろう。この中で最も重要でありながら状況が芳しくないのが時計事業であり、2012年からの売上高の減少が止まらない状況が継続しており、営業赤字からの脱却が実っていない。ブランドの認知度向上を目指してマーケティングに注力しているものの、置時計や壁掛時計のブランドに頓着する消費者が今時どれほど存在するのかは未知数であり、仮に存在していたとしてもブランドイメージで勝るセイコーやシチズンを選択せず敢えてリズムブランドを選ぶかは疑わしい。本レポートのリズム時計工業への投資判断は、プレシジョン事業および接続端子事業は成長を継続させる道筋が見えるものの、時計事業については再建の光明が未だに見えない点が懸念として設定した。