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企業レポート

リゾートトラスト(4681)の分析|景気後退による会員権販売の失速が焦点

基本情報

リゾートトラスト(4681)は、1973年に設立されたリゾート運営企業である。分譲型会員制リゾート施設において国内シェア70%以上を誇る有力企業であり、日本全国に会員制ホテル40拠点を運営している。タイムシェア方式の会員制ホテルの草分け的な存在であり、現在は、会員14名で1部屋を共同所有する方式の会員制ホテルを「エクシブ」ブランドで展開する他、1フロアを区分所有する方式の会員制ホテルを「ベイコート倶楽部」ブランドで展開する。かつては売上高300億円規模の企業であったが、会員権販売によって開業以前から建築費用を回収できる会員制ホテルの特徴を活かしながら、バブル崩壊後に競合他社から積極的に施設を買収することで急激に規模を拡大して業界首位へと躍進した。1994年にはメディカルツーリズムの勃興を受けてメディカル事業を設立しており、現在では先進機器による高精度医療を会員に提供する「ハイメディック」を全国9箇所に展開している。

目次

株価の推移

株価は2013年以来の水準まで下落

■株価の特性
2013年以降の景気回復局面において急激に株価水準を切り上げて以降は1500円台から3400円台のレンジで株価が推移してきたが、2020年に株価レンジの底抜けによって1000円台にまで下落している。リゾートトラストは長年に渡って純利益を安定的に確保し続けてきたことでBPSが過去10年間で219%の増加を遂げている他、業績の拡大基調が継続していることから、株価が長期的な右肩上がりの推移を描くことは当然である。反面、景気動向に業績を左右されやすいホテル業に属することから株価は経済環境に敏感に反応しやすく、景気後退局面においては弱含みの推移を描くことが多々ある点には留意したい。

■過去の株価推移
2011年から2015年に至るまでの株価上昇が顕著であり、2015年には株価3200円台にまで到達したが、同年を頂点に株価は下落傾向に転換している。これは、リゾートトラストの利益水準が2011年から2015年に至るまで急拡大を継続してた反面、2015年以降は利益水準の拡大が停滞を迎えたことが株価の推移に表れていると見てよい。2015年以降においてもリゾートトラストの業績好調が継続している点を踏まえると株価下落が過剰気味である様にも思われるが、2018年以降は世界経済における景気減速が強く警戒される局面であったことからリゾートトラストの業績への先行きを楽観視しにくい為、やむを得ない。2020年にはCOVID-19の流行によるホテル需要の急減という新たな脅威に襲われたことで株価はレンジを底抜けして900円台を割り込む展開となった。

日経平均株価との相関性は高い

■日経平均株価との相関性
リゾートトラストの株価と日経平均株価の相関性は高めである(2007年4月から2020年3月の相関係数:0.76)。リゾートトラストが手掛ける会員制ホテルは富裕層の贅沢消費に依存することから景気動向に業績を左右されやすく、日経平均株価が景気動向のバロメーターとして機能している点を踏まえれば、一定の相関性が見られるのは当然ではある。リゾートトラストの過去の決算資料(2016年3月期決算説明資料)では「会員権契約高は長期的には日経企業の配当金総額と比較的近い動きをとっている」と言及しており、株式市場の動向に業績が影響されやすいことを示唆している。

■過去の日経平均株価との相関性
長期的には日経平均株価との相関性は高い推移を描いているが、2016年以降は日経平均株価と乖離する価格変動が継続している。リゾートトラストの株価が2015年を頂点に下落基調が継続した反面、日経平均株価は2016年以降にも上昇基調が継続したことで乖離が拡大した構図である。景気後退局面にも底堅いエクセレントカンパニーの株価に牽引される日経平均株価とは異なり、リゾートトラストは景気後退局面で業績低迷を懸念されやすい為、こうした差異が生じると見てよい。

業績の推移

売上高は1500億円規模へ拡大

■売上高の特性
売上高は2008年から右肩上がりで推移しており、直近では1800億円規模にまで拡大している。景気循環に業績を左右されやすいホテル業に属することから、リーマンショックおよび東日本大震災に見舞われた2008年以降の景気後退局面においては売上高の拡大が停滞したが、2013年以降に到来した世界的な景気回復局面において売上高の拡大速度を加速させている。リゾートトラストの会員権販売は株式市場の動向に左右されやすく、世界的な株高局面が継続した2014年以降は特に業績が好調となっている。尤も、リゾートトラストの運営する会員制ホテルは過去10年間で3拠点が純増した他、高級志向が強い「ベイコート倶楽部」が4拠点の増加となった為、景気後退局面が到来しても2000年代後半の売上高まで回帰する公算は低いと見てよい。

■過去の売上高推移
2000年には637億円に過ぎなかったリゾートトラストの売上高は、2018年には1800億円規模にまで拡大を果たしており、長期的には成長企業であることが読み解ける。過去10年間では、特に2015年と2017年の売上高の急伸が顕著である。2015年の売上高の急伸は「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」の買収と「芦屋ベイコート倶楽部」の会員権販売の好調による反面2017年の売上高の急伸は「ラグーナベイコート倶楽部」の会員権販売の好調と「芦屋ベイコート倶楽部」の開業効果である。リゾートトラストは、会員制ホテルの開発および販売の状況によって売上高が拡大する反面、景気後退や自然災害によって売上高が縮小しやすい。

営業利益は190億円規模へ拡大

■営業利益の特性
営業利益は2008年を底に右肩上がりの成長を継続しており、直近では190億円規模への拡大を果たしている。営業利益率は直近では概ね10%前後の水準で推移しており、ホテル業としては利益水準がやや高めの水準である。高級ホテル分野は経費削減によるコストコントロールが難しいことが一般的であるが、リゾートトラストの会員制ホテルを観察すると、①数百万円~数千万円の高価格帯での会員権販売、②富裕層の会員が会員制ホテルを利用する際の付帯施設からの収益、③宿泊人数を事前に確定することによる人員配置の最適化、などの特徴によって高い利益水準を維持していると推測される。リゾートトラストは会員制ホテル分野で国内シェアの70%以上を掌握する独走状態を長年に渡って維持しており、高価格帯の会員権販売における競合が少ない点が利益水準を高めていると想定できよう。

■過去の営業利益推移
2008年および2011年の営業利益の減少が目につく。リーマンショックによってホテル需要が急減した2008年の営業利益は前年比▲62%の急減に見舞われたが、同年のリゾートトラストの会員制ホテルの稼働率は堅調に推移しており、主力の「エクシブ」の稼働率は前年比▲2%の減少に留まっていた。反面、同年は会員権販売の急減によって会員権事業の営業利益が前年比▲83%の急減を強いられており、これによって営業利益が低迷した。東日本大震災によってホテル需要が急減した2011年においても、会員制ホテルの稼働率は堅調に推移したが、会員権販売が急減速したことで会員権事業の営業利益が前年比▲50%の急減となっている。会員制ホテルは会員が割り当てられた利用権を行使する性質からホテル需要の低迷期においても底堅い推移を遂げるものの、会員権販売が景気後退局面で急減する結果として、景気減速で営業利益が減少する構造となっている

売上高の構成

会員権事業(36%)

■事業内容
会員権事業には、会員制ホテルの開発及び各種会員権の販売等が含まれる。会員権事業が展開する会員制ホテルは「エクシブ」と「ベイコート倶楽部」のブランドで展開されるが、いずれも会員が施設を区分所有する形式である。会員は区分所有する部屋・フロアを年間所定日数だけ占有利用できる他、会員同士で利用施設を交換して利用することができる。会員制ホテルの特徴には、①会員権販売によって建築費用を開業以前から回収できる点、②固定資産税などを区分所有する会員が負担する点、③富裕層によるサービス利用による売上高を安定的に確保できる点、④来客数が事前に確定することから人員配置を最適化できる点、などがある。会員権事業は宅地建物取引業法に基づいてリゾートトラストが保有する会員制ホテルの会員権を販売する業務を担っており、不動産業に近い性質を有する。

■過去の売上高分析
会員権事業の売上高は362億円から640億円のレンジで推移しているが、セグメントとして独立した2013年から売上高の拡大傾向が継続している。会員権事業の売上高は、新しい会員制ホテルの販売開始時と開業時に売上高が集中する特性がある。これは、販売価格のうち、登録料(約40%)は契約時に売上高として計上される反面、不動産代金(約50%)はホテル開業時に売上高として計上されるまで繰り延べられることに起因する。過去の推移を観察すると2017年および2018年の売上高が傑出しているが、これは新しい会員制ホテルの開業によって繰延収益が一括計上されることに起因する。2017年の売上高541億円は「芦屋ベイコート倶楽部」の開業、2018年の売上高640億円は「エクシブ六甲」および「ラグーナベイコート倶楽部」の開業によるものである。総じて、会員権事業の売上高はリゾートトラストの会員制ホテルの開発動向を観察することで将来的な予測が立てやすいと判断できよう。

■将来の売上高予測
減少を見込む。目先はCOVID-19の流行による景気後退が会員権販売にとって強い下方圧力として作用する。過去に会員権販売の逆風として作用したリーマンショックおよび東日本大震災の時期には売上高が前年比▲30%以上の急減を強いられており、COVID-19の流行はこれらと同等かそれ以上の下方圧力となりそうである。2020年6月に「横浜ベイコート倶楽部」の開業が控えていることから不動産代金の繰延収益が一括計上される点は救いであるが、2020年2月から会員権販売を開始した「ザ・カハラクラブハワイ」の販売は、COVID-19の感染拡大が続く海外への渡航自粛が続く環境において相当に苦しい展開を強いられそうである。

ホテルレストラン等事業(45%)

■事業内容
ホテルレストラン等事業には、ホテル及びレストランの運営、ホテル等の清掃業務、会員制ホテルの施設相互利用サービス、損害保険代理業務、ヘアアクセサリー等の製造・販売及びトータルビューティー事業、ゴルフ場の運営が含まれる。リゾートトラストが日本全国に所有している会員制ホテル「エクシブ」「ベイコート倶楽部」の運営を担う事業であるが、これ以外にもシティホテル「ホテルトラスティ」の展開を担う他、過去に展開していた会員制ホテル「サンメンバーズ」の運営を担っている。更に、各施設ホテルに併設されているレストラン・エステサロン・ゴルフ場の運営を通じて、宿泊した会員に各種サービスを提供することで継続的な収益を確保している。会員制ホテルの宿泊客は数千万円-数百万円の会員権を購入できる富裕層が中心である為、継続的かつ安定的な高額消費が期待できる点が特徴である。

■過去の売上高分析
ホテル事業の売上高は623億円から803億円のレンジで推移しているが、2013年から緩やかな成長が継続している。ホテルレストラン等事業の売上高が成長しているのは、リゾートトラスト傘下の会員制ホテルの新規開業が継続している点に起因している。新しい会員制ホテルが開業すると併設されたレストランやゴルフ場などの稼働が開始する為、売上高が増加する構図である。尤も、会員制ホテルの宿泊客数が伸び悩むと付帯施設の稼働率が低下することから売上高が減少する点は、通常のホテル業と同様である。2015年の売上高の増加が顕著であるが、これは2014年10月に取得した「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」の売上高の通年寄与が開始されたことによる。反面、2018年は「エクシブ」ブランドの会員制ホテルからの売上高が計画に劣る推移となったことから売上高が伸び悩んだ。

■将来の売上高予測
減少を見込む。日本国内におけるCOVID-19の流行は当初の想定に比べれば軽度であったが、ホテル需要は依然として低迷が継続しており、ホテル事業の事業環境は依然として悪い。会員制ホテルは会員が割り当てられた利用権を行使する性質から、リゾートトラストの会員制ホテルは過去の景気後退局面において相対的には底堅い推移を描いてきたが、今回は様相が異なる。リーマンショックや東日本大震災によるホテル需要の急減とは異なり、COVID-19の流行は外出自粛という形態を伴ったことで会員が利用権を行使することを困難にした。2020年のゴールデンウイーク期間には主力の「エクシブ」および「ベイコート倶楽部」が営業停止を強いられた他、ホテル需要の減少へ対応する為に「ホテルトラスティ」は2020年7月まで営業停止となった。過去に類を見ない長期的な営業停止を強いられたことを踏まえれば、売上高の減少は不可避的と見てよいだろう。

メディカル事業(19%)

■事業内容
メディカル事業には、メディカル会員権の販売、その管理業務及びメディカルコンサルティング業務、居宅介護サービス事業等が含まれる。会員に最先端の医療機器による検診治療を提供する「ハイメディック」、会員に快適な健診を提供する「ミッドタウンクリニック」が主力であるが、現在では老人ホーム・老人向け住居・サプリメントや美容品の販売なども手掛けている。「ハイメディック」は入会金300万円と高額であるが、最先端の医療機器を揃えることで一般的な人間ドックを大きく上回るガン発見率を記録した点が話題を呼び、現在では会員数2万名規模の事業へと成長している。メディカル分野における存在感の拡大にも熱心であり、最近では東京大学・名古屋大学・京都大学との共同研究を遂行している。

■過去の売上高分析
メディカル事業の売上高は173億円から344億円のレンジで推移しているが、2013年から緩やかな成長が継続している。近年のメディカル事業の売上高の増加は、会員制検診施設および会員制健診施設の新規開業が相次いだことと関係している。過去5年間で首都圏で「ハイメディック」の新規開業が相次いだ他、これまで未進出だった京都および名古屋への「ハイメディック」を新規開業したことで会員獲得が見込める地域が拡大した。更に、継続的に老人ホームと高齢者向け住居を新規開業することで、会員数を増加させている。2016年の売上高の増加は、新たに連結子会社に加わった医療施設運営施設向けコンサルティングを主力事業とする厚生の売上高が加わったことによる。2017年以降は新規開業こそ一巡したものの、メディカルツーリズムへの関心の高まりや積極的な広告施策によってメディカル会員の増加ペースが加速したことで、売上高は年率4%の増加傾向を維持している。

■将来の売上高予測
横ばいを見込む。2016年以降はメディカル会員の増加傾向が続いており、COVID-19が流行したことで失速こそ懸念されるものの、売上高が減少傾向に転じる程の影響はないと見込む。2020年のゴールデンウイーク期間には主力の「ハイメディック」が営業自粛を強いられたが、医療施設という事業の性質から同年6月には営業再開しており、自粛期間は相対的には短かった。通常の医療施設と異なり、既に会員権を購入した会員は割り当てられた利用権を行使したい動機がある他、健康に不安のある会員が少なくないことから、稼働率の落ち込みは限定的となるか。メディカル事業の売上高の約31%が高齢者向け住居からの賃料収入による為、短期的要因に売上高が左右されにくいことにも着目しておきたい。

営業利益の構成

会員権事業(67%)

■過去の営業利益分析
会員権事業の営業利益は62億円から126億円と上下変動が激しいが、2017年以降は営業利益110億円以上での推移となっている。営業利益の上下変動は概ね、新しい会員制ホテルの会員権の売上高の計上が特定の時点に集中することで形成されていると見てよい。販売価格のうち、登録料(約40%)は契約時に売上高として計上される反面、不動産代金(約50%)はホテル開業時に売上高として計上されるまで繰り延べられる為、特に大型ホテルの開業があると営業利益が拡大しやすい傾向にある。会員権の販売価格が高い「ベイコート」ブランドの開業があった2018年には営業利益が前年比+17.5%の拡大が起こっている。新しい会員制ホテルの開業日程を把握することで将来の営業利益の動向をある程度は予測することができるだろう。尤も、営業利益の大局的な方向性は会員権販売の動向に依存しており、これがリゾートトラストの商品力と世間における会員権需要に左右される点は言うまでもない。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。会員権販売は富裕層の贅沢消費に依存する性質から景気動向に左右されやすく、COVID-19の流行に端を発した景気後退局面においては相当の減益を強いられる。過去に会員権販売の逆風として作用したリーマンショックの際には営業利益が前年比▲83%に及ぶ急減を強いられており、景気後退局面における会員権事業の脆弱さが見え透く。尤も、株式市場が長期低迷を強いられたリーマンショックとは異なり、COVID-19の感染拡大による株価急落は早々に最悪期を脱した為、富裕層の資産毀損は一過的に留まった。こうした背景から、会員権事業の営業利益は当面に渡って低迷を強いられるが、中長期的には回復基調へ転換する余地が残されていると見込む。

ホテルレストラン等事業(9%)

■過去の営業利益分析
ホテルレストラン等事業の営業利益は24億円から49億円のレンジで推移しているが、2015年以降はやや利益水準が切り下がって営業利益1億円規模で推移している。2015年以降の営業利益の減少は、①運営ホテルの増加と改修による減価償却費の増加、②人手不足による人件費と福利厚生費の増加、③生産性向上施策への投資、が原因である。減価償却費が2014年の38億円から2018年には61億円に拡大して営業利益を圧迫する中で、人手不足による人件費などの増加が重荷となっている構図である。積極的な規模拡大によって運営する会員制ホテルおよび付帯施設が増加したことでホテルレストラン等事業の売上高は成長傾向が継続したが、会員制ホテルの高級路線を維持する為に要するコストが課題である。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の感染拡大によって積極的な規模拡大が裏目となり、営業利益の減少は不可避である。2020年のゴールデンウイーク期間には主力の「エクシブ」および「ベイコート倶楽部」が営業停止を強いられた他、ホテル需要の減少へ対応する為に「ホテルトラスティ」は2020年7月まで営業停止となった。この営業停止によってホテルレストラン等事業の売上高が激減する中であっても増加基調にあった減価償却費および人件費の負担は継続する為、営業利益が減少すると推測される。これまでは積極的な規模拡大を継続しても、新規開業した会員制ホテルが好調であったことから問題はなかったが、COVID-19の感染拡大という想定外の事態が状況を暗転させたと見てよい。尤も、日本国内におけるCOVID-19の流行は当初の想定に比べれば軽度であった為、2020年6月以降は段階的ながらリゾートトラストの会員制ホテルが営業再開している点は念頭に置いておきたい。

メディカル事業(21%)

■過去の営業利益分析
メディカル事業の営業利益は30億円から43億円のレンジで推移しているが、2015年以降は30億円規模で成長が停滞している。メディカル事業は会員数が堅調な増加傾向を継続しており、売上高は右肩上がりの増加が続く反面、営業利益の成長はやや停滞している。この営業利益の停滞は「ハイメディック」の新規開業が相次いだことによる費用の増加と、最新の診断機器の導入および検診内容の充実に向けた積極投資が原因である。尤も、積極投資で充実させた診断機器と検診内容を起点として、2018年から会員権価格が300万円となる「グランドハイメディック倶楽部プレミアム」の販売を開始したことで、メディカル会員権販売の利益水準は拡大している為、中長期的な営業利益の成長傾向は継続しそうである。

■将来の営業利益予測
微減を見込む。COVID-19の流行によって高額なメディカル会員権販売が減速を強いられると見込む。メディカル事業の営業利益は、①メディカル会員権の販売および年会費収入、②老人ホームおよび高齢者向け住宅の入居費用/賃料収入、③サプリメントや美容品の販売による収入、によって得られているが、②と③は事業の性質上、景気後退局面においても底堅い推移となる。反面、メディカル会員権は平均契約単価229万円にもおよぶ高額商品であることから、景気減速局面では販売停滞が懸念される。尤も、贅沢消費に過ぎない会員制ホテルの会員権とは異なり、健康不安のある富裕層には景気動向に関わらず継続的な需要が潜在的に存在すると見込まる為、メディカル会員権販売の落ち込みは相対的には軽微に留まる公算が高い。

財務の健全性

手元資金は標準的な水準

■手元資金の特性
手元資金は2014年の650億円を除けば、200億円規模を中心に概ね横ばいで推移している。売上高が年間1500億円規模と考えると手元資金としては125億円が目安となる為、標準的な水準である。ホテル業は多額の先行的な設備投資が必要であることから手元資金が増減しやすいが、リゾートトラストの会員制ホテルは資金回収が早期に完結する点から資金繰りには優位である。会員権販売によって建築費用を開業以前から回収できることで大規模な新規案件が進行している最中であっても、手元資金の急激な減少が起こらない点は評価できよう。

■過去の手元資金分析
2014年の手元資金の急増が際立っており、前年比144億円の増加を遂げて664億円に到達している。この手元資金の増加は、社債326億円および長期借入金362億円の資金調達を実行したことによる。資金調達の規模の割に手元資金の増加が限定的に留まっているのは、「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」を取得したことで有形固定資産への投資額が395億円に膨張した点に起因している。2015年の手元資金の急減は、売上債権114億円および棚卸資産133億円の増加によって営業キャッシュフローが減少する中で、新たな資金調達を抑制しつつ長期借入金67億円の返済を実行したことに起因している。

自己資本比率は業界中位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は2008年から増加傾向が継続しており、直近では31.9%に到達している。同業他社と比較すると、帝国ホテル76.2%・ロイヤルホテル32.0%・藤田観光25.4%となっており、業界中位の水準である。ホテル業は多額の先行的な設備投資が必要かつ業績の上下変動が激しいことから自己資本比率が低水準に留まりやすいが、リゾートトラストは営業利益率10%を超える高い利益水準を確保している為、新しい会員制ホテルの新規開業が相次ぐ割に自己資本比率は業界中位の水準を維持している。

■過去の自己資本比率分析
2008年の自己資本比率20.0%への下落が顕著である。同年のリゾートトラストは主力の会員権販売が急減する中でも純損失には転落せず、純利益5億円を確保する健闘を果たしていた。しかし、貸借対照表の健全性はやや悪化しており、負債が102億円の増加となった他、純資産が31億円の減少となったことで、自己資本比率が▲3.3%の減少となった。同年の負債の増加は「ホテルトラスティ神戸旧居留地」のリース資産を計上したことによる有形固定資産の増加が主要因であり、純資産の減少は自己株式の取得に起因している。現在のリゾートトラストは利益剰余金を蓄積したことで純資産1300億円規模に到達した反面、負債2700億円規模で推移している為、借入金などの負債の舵取りによって自己資本比率が上下変動しやすい

株価の割安感

BPSは増加傾向が長期継続

■BPSの特性
BPSは2008年から右肩上がりで推移している。リゾートトラストは概ね安定的に利益を確保していることもあってBPSは緩やかに拡大している。景気後退と自然災害に稼働率を左右されやすいホテル業に属しながら、リーマンショックや東日本大震災などの逆風に見舞われた2007年から2011年の期間においてもBPSは底堅い推移を保っている点は評価できるか。在外子会社や有価証券への投資額が大きい企業は株安局面や円高局面でBPSが上下変動しやすいが、リゾートトラストはいずれも小規模であることから経済環境によってBPSが打撃を受ける余地は少ない。尤も、2015年以降は米ハワイ州の名門ホテル「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」が連結子会社に加わったことで、やや在外子会社への投資額が拡大している。

■過去のBPS分析
2013年のBPS758円が2014年にはBPS1019円に増加しており、前年比25%の増加を遂げている。2014年におけるBPSの急増はユーロ円建転換社債型新株予約権付社債300億円を発行して株主資本191億円の増加を遂げたことに起因している。同社債は「ザ・カハラ・ホテル&リゾート」の買収によって急増した短期借入金を返済して財務負担を軽減する財務戦略に基づいて実行されたものであった。尚、同社債によって発行済株式総数に対して潜在株式数が8.68%の比率で存在することとなったが、新株予約権を行使できる転換価額は株価3343円である為、株価低迷が続く昨今における株式の希薄化の懸念は薄い。

PBRは下落して割安圏へと後退

■PBRの特性
PBRは長期的に1.07倍から3.25倍のレンジで推移しており、上下変動が激しい。リゾートトラストのBPSは底堅い推移を遂げる反面、株価の上下変動が激しいことがPBRの上下変動として表面化している。過去にホテル業の先行き懸念が高まったリーマンショックや東日本大震災などの局面においても、PBR1.0倍を割り込む局面は稀であり、PBT1.0倍が明確な底値圏として機能していた。COVID-19の流行による株価急落が起こった2020年3月にはPBR1.0倍を割り込む水準にまで下落したが、同時期は、①株式市場が恐慌的な下落を強いられた株安局面であった点、②ホテル需要の減少に留まらず営業停止にまで追い込まれた点、などの歴史的に見ても極端な状況であったことからやむを得ないか。

■過去のPBR分析
2011年から2014年の期間におけるPBRの上昇傾向が顕著である。同時期のリゾートトラストは世界的な景気回復局面を追い風とする業績回復が継続しており、これによる株価上昇がPBRを押し上げた。2013年に東京オリンピックの開催が決定した際には同業他社に比べて直接的な恩恵が乏しいリゾートトラストの株価上昇が限定的であった為にPBR2.0倍水準に留まっていたが、その後の2014年には国内景気がピークを迎えたことで富裕層への会員権販売が好調になることを見越した株価上昇が起こったことでPBR3.0倍前後の高値圏での推移が続いた。尤も、2015年以降はチャイナショックの勃発によって景気回復局面が一服したことでリゾートトラストの業績拡大が一巡した他、2018年以降は世界経済における景気減速が強く警戒される局面に到達するなどの逆風が強くなったことからPBRは凡庸な水準へと回帰している。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。リゾートトラストは配当政策として「資本を充実させ財務の健全性を維持し、成長が見込まれる事業への投資のために内部留保を確保しながら、原則として配当性向40%を目安とした安定的な還元」を掲げており、配当金推移は業績に連動して推移している。リゾートトラストは業績好調が続いていたことで配当金は増加傾向を描いているが、2008年の減配に見られる様に業績不振に陥った場合には躊躇なく減配となる。尤も、リーマンショック直後にも純損失に転落しない底堅さと配当性向を数値目標として掲げている配当政策が奏功して無配転落は生じにくい点は好感できる。

■過去の配当金分析
2014年以前は年間30円未満で推移しており、現在の配当金と比べて見劣りする。これは、①純利益100億円未満と現在よりも低水準で推移していた点、②2011年から2014年の期間は配当性向30%を掲げていた点、に起因している。利益水準と配当政策の両面において見劣りしていたことで年間30円未満での推移が続いていたが、2015年以降は目標とする配当性向が拡大され、純利益100億円を超える業績好調が継続したことから、配当金が年間45円の高水準で推移している。尚、2015年から2018年の期間が平坦な推移となっているのは、純利益190億円規模が連続したことが原因であり、安定配当型への変化を志向しているわけではない。

配当利回りは3%台まで上昇

■配当利回りの特性
配当利回りは1.5%から3%のレンジで推移しており、日本株の平均的な配当利回りである2%前後と概ね同水準と見てよい。リゾートトラストには株主優待制度が存在しており、1単元の保有から保有株式数と保有期間に応じた割引券を受け取ることができる。配当利回りの計算に株主優待制度による割引券を考慮すると、配当利回りは2%を安定的に上回る水準に到達する為、リゾートトラストの会員であれば投資妙味は高いか。実際、リゾートトラストの発行済み株式数のうち、個人投資家の保有比率は26.2%とやや高めの水準となっている。

■過去の配当利回り分析
2011年から2014年の期間に配当利回り1.5%まで下落した反面、2014年から2018年の期間には配当利回り3.0%まで上昇している。リゾートトラストの業績好調によって2011年から2014年にかけて配当金は年間20円から年間43円にまで増配されたものの、同期間の株価上昇が282%にも及んだことから結果的に配当利回りは低落することとなった。2014年以降は目標とする配当性向の拡大によって配当金が年間46円にまで増配された反面、景気減速が強く警戒されたことで株価下落が進行したことで配当利回りは拡大傾向となった。景気回復局面では株価上昇が進行することから配当利回りが低迷しやすいか。

総合評価

目標株価

1600円

日本国内では会員制ホテルの運営において屈指の存在であり、COVID-19の流行による停滞を踏まえても尚、将来的な成長期待は残される。反面、当面は景気後退局面における会員権販売の低迷が確実視される為、株価の上値の重さが意識される展開となりそう。リゾートトラストの会員権販売が復調するには富裕層の贅沢消費が活性化する株高局面の到来が必須であるが、そこまで待てる投資資金は他の割安感のある優良銘柄へ投資資金が流れる為、リゾートトラストの株価の停滞は続くと見込む。

投資判断

弱気

日本国内におけるCOVID-19の流行が当初に想定されたよりは軽微に留まった点が救いであるが、2015年以降の利益水準への回帰は当面に渡って難しい。リゾートトラストの利益水準について現状を観察すると、①過去10年間に渡る積極拡大による減価償却費と人件費が利益水準の下方圧力として残存している点、②景気後退局面において稼ぎ頭の会員権販売が急減速する点、が懸念となる。2013年以降は世界的な景気回復局面という経済環境による会員権販売の好調が幸いして、積極的な規模拡大と高い利益水準が両立されてきたが、2020年以降は利益水準が高い会員権販売による下支えがない状況で、過去の積極的な規模拡大で膨張した減価償却費と人件費をこなす必要がある。更に、COVID-19の感染拡大によってホテル需要は停滞しており、リゾートトラストの会員制ホテルの稼働率の減少は不可避であろう。会員が割り当てられた利用権を行使する性質から会員制ホテルの宿泊客は相対的には底堅く推移すると思われるが、過去の利益水準から切り下がった事業運営を強いられる公算が高い。