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企業レポート

井関農機(6310)の分析|海外展開を急ぐが国内市場への依存を脱せず

基本情報

井関農機(6310)は、1926年に創業した中堅農業機械メーカーである。取扱製品はトラクタ・耕耘機・田植機・コンバインなど多岐にわたり、農業機械メーカーとしては日本第3位の売上高を誇る。日本第4位の三菱マヒンドラ農機は売上高400億円規模と小規模である為、事実上はクボタ・ヤンマー・井関農機の3社が日系農業機械メーカーの基幹を担っている。

目次

株価の推移

株価は上下反復だが目先は底値圏

■株価の特性
過去10年間に渡って1500円台から3500円台のレンジで推移している。過去10年間の井関農機の業績が横ばいであった為、株価のレンジが変化しないのは当然である。業績好調時には株価上昇し、業績悪化時には株価下落する素直な推移である。過去10年間に渡って1500円台が底値圏として機能していたが、2018年以降は底値圏であった1500円台を割り込む状況となっている点は気がかりではある。

■過去の株価推移
2009年頃の急騰が特に力強い。同年は、穀物価格急騰を背景とした農林水産省の食料供給力向上緊急機械リース支援が施行されたことで農機需要が喚起されており、これを材料視した株価急騰が起こった。更に、2009年の衆議院選挙で政権交代が決定した民主党の公約で農業政策が訴えられていたことも株価急騰を支えていた。

日経平均株価との相関性は低い

■日経平均株価との相関性
日経平均株価との相関性は低い。特に2013年以降は日経平均株価が堅調な上昇を遂げた反面、井関農機は底値圏を切り下げながら過去と同じレンジでの株価推移を強いられている。過去10年間における井関農機は日経平均株価が低迷する景気後退局面において株価が好調になりやすい傾向がある。製造業としては珍しく、景気動向に関わらず堅調な業績推移を果たす性質が原因であろう。

■過去の日経平均株価との相関性
日経平均株価が低迷した2009年と2016年に急騰を遂げた点が目につく。景気動向に業績を左右されやすい製造業は日経平均株価の低迷時により厳しい株価推移を強いられがちだが、井関農機の株価推移は様相が異なる。2009年の株価急騰は農林水産省の政策を材料視した急騰である反面、2016年の株価急騰は米価格上昇による農機需要拡大が理由である。典型的な製造業とは異なる株価推移である。

業績の推移

売上高は1500億円規模で停滞

■売上高の特性
売上高は過去10年以上に渡って1500億円規模で推移しており、変化に乏しい。日本国内における農業機械は普及が頭打ちしており、更新需要への依存度が高いことが安定的な推移を描かせている。井関農機は2017年に策定した中期経営計画で売上高1900億円を目標としたが目立った成果はない。同目標の達成時期は2年先送りとなったが、この推移では達成困難であろう。

■過去の売上高推移
過去10年間の推移を見ると、特に2013年の売上高が傑出しているが、これは消費増税を控えた駆込需要によって国内市場が活性化したことに起因する。なお、この時に記録した売上高1691億円が過去最高の売上高であることから、国内動向に売上高が左右されやすい性質が分かる。とはいえ、消費増税前の駆込需要は所詮は需要の先食いに過ぎず、2015年の売上高が証明している。

営業利益は上下変動が激しい

■営業利益の特性
営業利益は30億円規模を中心に推移しているものの、売上高の安定性に反して営業利益の上下変動は大きい。売上高1500億円規模であることを踏まえると営業利益率は3%未満であり利益水準は低い。日系農機メーカー4社が競合関係にある日本市場への依存度の高さが井関農機の収益性と効率性を損なっている点には注意したい。

■過去の営業利益推移
2014年には営業赤字に転落している。これは、①前年の消費増税を控えた駆込需要の反動減、②米価格低下による投資意欲減退、が原因である。急減した農機需要を競合他社と奪い合ったことで収益性が損なわれ、営業赤字に転落した格好である。

売上高の構成

日本事業(78%)

■事業内容
日本事業は、日本国内における農業機械の製造販売が含まれる。国内農機市場は長期的な衰退が続くが、近年は農家の大規模化と機械化需要という構造変化によって、農機需要は堅調である。2017年からは長年の競合であったヤンマーと国内向け製品で相互OEM関係を構築しており、効率化を推進している。

■過去の売上高分析
売上高の約80%を国内事業が占める状況が定着している。業界1位のクボタが海外売上高比率が約70%であることを踏まえると、国内依存度は極めて高い。2014年に売上高が急増しているのは消費増税の駆込需要によるものであり、国内動向に左右されやすい。近年はJA全農が国内農家のトラクタ購入を取りまとめて一括発注するコスト削減策を推進しており、同業他社との価格競争が厳しくなりつつある。

■将来の売上高予測
微減を見込む。既に日本国内の農家数は急減期を終えており、寧ろ農家の集約化と機械化による需要は底堅く、急激な売上高の減少は起こり得ない。農業振興策などの政策次第では短期的反発もあろうが、基本的には日本国内の農家数減少に伴う超長期的な微減が継続する。こうした背景に加えて、当面は景気後退への懸念が色濃く、更新需要の低迷による売上高微減は避けがたいか。

アメリカ事業 (7%)

■事業内容
アメリカ事業は、アメリカおよびカナダにおける農業機械の販売が含まれる。井関農機はアグコ社と25年間に及ぶ協業関係にあり、トラクタをOEM供給している。アメリカにおける農機市場の花形は大型トラクタであるが、井関農機は他市場で販売するコンパクトトラクタをOEM供給するに留めている。

■過去の売上高分析
過去の推移を見ると、売上高の約5%をアメリカ事業が占める。2007年には67億円だったアメリカ事業の売上高は2018年には96億円に成長している。アメリカにおける売上高は約10年間で約1.4倍に成長したが、そもそも全社の売上高に占める比率が7%に過ぎない為、全体からすれば微々たる増加幅である。 中期経営計画の目標である海外売上高比率40%の達成は難しそうである。

■将来の売上高予測
微減を見込む。北米は中長期的に農業生産が拡大継続する見込みであり、アメリカにおける農機メーカー最大手の一角を占めるアグコ社との協業が続けば売上高の拡大が可能である。ただし、当面の景気後退によってアメリカにおける売上高は微減を余儀なくされるだろう。アメリカ事業は、アグコ社のブランド力と販売網に依存する部分が大きく、他事業に比べて自由度が低い点には注意したい。

ヨーロッパ事業 (9%)

■事業内容
ヨーロッパ事業は、フランス・イギリス・ドイツ・ベルギーなどにおける農業機械の販売が含まれる。意外にも井関農機は欧州進出を1967年代に果たしており、欧州における事業展開の知見は厚い。加えて、アメリカ事業とは異なり井関農機ブランドで販売している為に自由が効く。

■過去の売上高分析
売上高の約25%をヨーロッパ事業が占める。2007年には89億円だったヨーロッパ事業の売上高は2018年には131億円に成長している。近年は他エリアに比べて堅調に推移しているが、これはフランス市場における販売が堅調であることが理由である。2014年にはフランスの販売代理店を子会社化してヨーロッパ事業の中核拠点とし、更に補修部品の物流センターを設置する等、積極投資が進む。

■将来の売上高予測
微減を見込む。欧州は将来的にも農業生産が拡大する見込みであり、農業生産高が大きいフランスでの地位確立は好印象である。イギリスでは景観整備に用いる芝刈機需要を取り込んで成長している等、フランス以外の諸国においても業容を維持している。ただし、短期的にはCOVID-19の流行による経済停滞によってヨーロッパ事業の売上高は低迷を強いられそうである。

中国事業 (1%)

■事業内容
中国事業は、中国における農業機械の製造販売が含まれる。井関農機の中国進出は2003年と最近であるが、急激な市場拡大を受けた積極攻勢を進めている。2011年には中国における自動車メーカー最大手である東風汽車との合弁企業を設立してトラクタ・コンバイン・田植機の生産を行っている。

■過去の売上高分析
売上高は不安定である。2010年には33億円だった中国事業の売上高は2013年には75億円にまで拡大を果たしたものの、2018年は16億円にまで縮小している。2018年の急激な縮小は中国政府の農家補助金発表遅れと米麦価格下落による投資抑制が原因であるが、他事業と比べて売上高が不安定である。

■将来の売上高予測
現状維持ないし微減を見込む。中国の農機市場は既にアメリカを抜いて世界最大規模に到達しているものの、農機メーカー間の競争も激しい。中国の農機市場を俯瞰すると、中国企業のみで約8000社が存在する他、数多の外資メーカーが中国市場に参入しており、世界屈指の激戦区である。井関農機は田植機で人気を博してきたが、高価格帯以外では中国企業との厳しい競争を強いられる

その他地域 (5%)

■事業内容
その他地域は、韓国・台湾・タイ・オーストラリア・ニュージーランドなどにおける農業機械の製造販売が含まれる。井関農機はインドネシアに工場を置いており、ここで生産した低価格帯トラクタを全世界に出荷している。また、インドでは同国第2位の農機メーカーであるTAFEと技術業務提携関係を構築しており、井関農機の製品がTAFEの販売網で流通している。

■過去の売上高分析
売上高は拡大傾向である。2012年には23億円だったその他地域の売上高は2018年には62億円にまで拡大した。6年間で売上高が約3倍に拡大しており、他事業と比較して売上高の成長が速い。市場自体の成長に加えて、井関農機がアセアン地域を有望市場と位置付けて積極投資を進めたことが奏功したか。

■将来の売上高予測
増加を見込む。アセアン地域は2050年に至るまで農業生産高の拡大が続くと予測され、経済発展による所得増加も相まって最大の有望市場である。井関農機はアセアン地域への積極攻勢を進めており、代理店販売支援と補修部品供給の体制強化を進めている。アセアン地域は農業機械化が遅れており、拡販余地は大きい。ただし、当面は新興国通貨安が売上高拡大の重荷となりそうである。

営業利益の構成

日本事業(非公開)

■過去の営業利益分析
日本事業の営業利益は非公開である。売上高の約80%が日本国内に依存していることを踏まえれば、営業利益の大半が日本事業によるものと考えて問題ないだろう。消費増税の駆込需要が起こった2013年には営業利益が急伸していることも、日本事業の営業利益の厚さを想起させる。海外では販売が少ない高価格帯モデルで利益を確保しやすい構造である点や、地域別の販売網による合理的供給体制が完成している点も長所である。

■将来の営業利益予測
微増を見込む。近年の井関農機は、ヤンマーとの相互OEM関係によって廉価帯製品の開発費の負担を減らす一方で、T.Japanシリーズなど高価格帯モデルに注力する利益戦略を進めている。高価格帯モデルには農業のICT化を踏まえた自動運転機能やクラウド管理機能などを搭載することで利益水準の切り上げを見込んでいる。農機販売の絶対数は減少するものの、利益水準については未だに拡充の余地があろう。

アメリカ事業(非公開)

■過去の営業利益分析
アメリカ事業の営業利益は非公開である。アメリカ事業が売上高に占める割合は10%にも満たないことに加えて、アメリカ事業の主力商品は廉価帯のコンパクトトラクタであり利鞘が薄い。こうした背景から、アメリカ事業の営業利益への貢献度は高くないと考えて問題ないだろう。

■将来の営業利益予測
微増を見込む。アメリカ事業はアグコ社へのOEM供給が主であることから、同社の販売網に相乗りしての製品供給が可能である点が長所である。OEM先のアグコ社への依存が懸念である反面、販売網と物流網を自社構築する必要がない点から利益水準は悪くなさそうである。当面は景気後退による販売減が営業利益の下方圧力として作用しそうだが、緩やかな営業利益の拡大が継続すると見込む

ヨーロッパ事業(非公開)

■過去の営業利益分析
ヨーロッパ事業の営業利益は非公開である。ヨーロッパ事業が売上高に占める割合が10%にも満たないことに加えて、ヨーロッパ事業の主力商品は廉価帯のトラクタと芝刈機などの景観製品であり利鞘が薄い。こうした背景から、ヨーロッパ事業の営業利益への貢献度は高くないと考えて問題ないだろう。

■将来の営業利益予測
微増を見込む。ヨーロッパ最大の農機市場であるフランス市場におけるシェア拡大が期待されるが、同国で展開する製品は低中価格帯モデルのみであり高価格帯モデルは展開されておらず利幅は限られる。イギリスは芝刈機の堅調な展開が続くもトラクタの拡販余地は限られる。当面はCOVID-19による経済停滞による打撃が営業利益の下方圧力として作用するが、長期的には営業利益が微増傾向で推移すると見込む

中国事業(非公開)

■過去の営業利益分析
中国事業の営業利益は非公開である。中国事業が売上高に占める割合は5%にも満たない。他事業と異なり、日本国内で展開する田植機やコンバインなど稲作用農機が展開されている点は長所であるが、如何せん販売規模が小さいことから営業利益を拡大し難い。2018年には田植機の販売不振によって東風井関が営業赤字に転落しており業績不振となっている。

■将来の営業利益予測
現状維持を見込む。2018年に至るまで競争激化による業績不振に苦しんでいたが、東風汽車が業績再建を目指して出資比率を拡大している。中国市場における競争激化と農業補助金の減少から営業利益を回復軌道に戻すにまでは至らないが、東風汽車が自動車生産で培った生産コスト改善を転写することで業績不振は底打つか。政府の補助金が景気刺激策で回復軌道に乗れば反転余地は広がる。

その他地域(非公開)

■過去の営業利益分析
その他地域の営業利益は非公開である。その他地域が売上高に占める割合は10%にも満たない。成長市場であるアセアン地域は低価格帯モデルが中心かつ新興国通貨安に業績を圧迫されやすい為、利益水準が低迷しがちである。2018年には洪水や干ばつの影響で販売が停滞して利益水準を損ねた。井関農機のグローバル戦略を担う廉価トラクタを生産するインドネシア事業は2014年から2016年まで営業赤字が続いたが、2018年以降は営業利益が1億円から3億円の規模で発生している。

■将来の営業利益予測
現状維持を見込む。干ばつや洪水などの天候影響で需要拡大が停滞を迎えたが、将来的な農機需要の拡大を見越せば一時的な停滞と割り切れる。特に近年はミャンマーにおける機械化需要が旺盛であり、アセアン地域におけるラストフロンティアとして期待される。韓国ではフラグシップモデルを投入するなど、国内市場に準ずる高価格帯モデルを投入しており利益水準の切り上げが期待される。当面は新興国通貨安や景気後退を耐え忍びながらの現状維持が続きそうである

財務の健全性

手元資金は微増するが並水準

■手元資金の特性
手元資金は概ね80億円台で維持している。売上高が年間1500億円規模と考えると手元資金としては150億円が目安となる為、少なめの水準である。井関農機は売上債権が買掛債権と同規模であり、売上債権からのキャッシュフローによる資金繰りの安定化はそこまで望めない。とはいえ、製造業には珍しい安定的な業績推移を考えれば、この水準の手元資金があれば問題ないか。

■過去の手元資金分析
2016年の手元資金の急増が際立つ。同年の業績は平凡かつ設備投資に資金を要したものの、投資有価証券の売却と有利子負債の拡大によって約40億円の現金増加があったことが手元資金を増加させた。あくまで一時的な増加であったため、翌年には80億円規模へと回帰している。過去10年間の推移を見る限り、井関農機の手元資金は80億円規模で安定的にコントロールされていると判断できるだろう。

自己資本比率は業界中位

■自己資本比率の特性
自己資本比率は概ね30%台で維持している。同業他社と比較すると、クボタ46.0%・ヤンマーホールディングス24.7%となっており、業界中位の水準である。長所にも短所にもならない標準的な水準の自己資本比率であり、一過的な業績不振や環境悪化であれば十分に耐えうるだろう。

■過去の自己資本比率分析
2007年頃から微増傾向が続く。この自己資本比率の上昇は、利益剰余金の増加が原因である。井関農機はリーマンショック後も業績不振に陥らなかったことで、利益剰余金は2007年の40億円から増加が続き、2018年には169億円にまで増加している。反面、成長に向けた設備投資を目的として有利子負債を微増させている為、利益剰余金の増加が相殺されて自己資本比率の伸びは微増に留まっている。自己資本比率を適正水準に保ちながら、身の丈相応に成長投資を実施する姿勢が見え透く

株価の割安感

BPSは微増傾向が継続

■BPSの特性
BPSは2008年から右肩上がりで推移している。利益水準こそ低いものの業績悪化で致命的な純損失を計上することもなく、過去10年間で利益剰余金が約100億円の増加を遂げたことがBPSに表れている。BPSは株式の資産価値を表す指標として参照される為、BPSが向上することで株価の底値が切り上がる効果が期待できる。しかし、実際の井関農機の株価推移はBPSの増加をまったく反映しておらず、BPSの増加に着目した投資は報われないだろう。

■過去のBPS分析
2010年から2014年にかけてのBPSの向上が目につく。2010年から2013年にかけての井関農機は業績が好調であり、利益剰余金がよく積み上がったことがBPSに表れている。2014年は急速な業績悪化で純損失3億円を計上したものの、アベノミクスによる株高局面によって保有する有価証券の評価額が上昇したことで却ってBSPは向上した。2014年以降はこうした追い風もなくBPSは横ばいに近づいている。

PBRは右肩下がりで低迷

■PBRの特性
PBRは上下変動が激しいが長期的には右肩下がりとなっている。株価が10年前と同じレンジで上下変動しながらBPSが微増している為、PBRが低迷するのは当然である。PBR1.0倍を下回っていても将来的に損失が発生して株式価値が毀損するリスクがあれば割安ではないものの、井関農機の業績は安定的である。井関農機の業績が安定的であることを踏まえるとPBRが過大に低迷している様にも思えるが、配当利回りの低さや国内市場への依存度の高さなどを踏まえれば、この水準の低迷は致し方ないか。

■過去のPBR分析
2016年まではPBR1.0倍前後で推移していたが、2017年以降はPBRのレンジが切り下がっている。BPSが過去最高水準にまで積み上がっている反面、株式市場の低迷の余波を受けて株価が底値圏で低迷している為、PBRが低迷するのは当然である。現状の井関農機はBPSが安定的に推移している為、株式市場が好調に転じるまではPBRの低迷が続きそうである。2009年と2012年にPBR1.2倍水準に達しているが、当時からBPSが拡大している為、相当な株価急騰を遂げない限り同水準へ回帰することは難しい。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。井関農機は配当政策として「連結業績のみならず、グループの財務体質や今後の事業展開、経営環境の変化などを総合勘案し、継続した配当の維持向上」を掲げているものの、過去の配当金推移は不安定である。配当金は業績に概ね連動するものの、業績好調であった2009年を無配としている他、業績急落した2014年には配当維持するなど一貫性を欠く

■過去の配当金分析
業績不振に陥った2007年に無配転落してから復配まで3年間を要している。2007年の業績不振は純損失14億円に留まっており、井関農機の企業規模を考えれば無配転落の決断が早計である印象を拭えない。業績回復の目途が立ってからも無配継続しており、2011年に至ってようやく復配となった。配当水準の低さも相まって配当金の支払いに対する消極姿勢を想起させる。

配当利回りは将来の減配を織込み

■配当利回りの特性
配当利回りは1%台で推移しており、日本株の平均的な配当利回りに劣後する水準である。歴史的に井関農機の配当水準は高くないため、長期保有したところでインカムゲインという観点では大したリターンを得ることができない。上下変動が大きい株価推移を活かした明確な利益戦略が必要であろう。

■過去の配当利回り分析
過去の配当利回りは概ね1%台で安定的に推移している。配当金の絶対額が少ないため、株価が変動しても配当利回りはそこまで変化しない。井関農機の配当政策が安定していないことを考慮すれば、配当利回りの上下変動に一喜一憂する必要はないだろう。ただし、株価下落しても配当利回りが低水準で変化しない為、配当利回りを目的とした投資資金が集まりにくい点には注意が必要である。

総合評価

目標株価

1550円

現状の株価はやや過剰警戒の割安水準で低迷しており、投資妙味はある。過去10年間の業績停滞と国内市場への依存から将来性が懸念されがちだが、当面は国内農業の機械化とICT化への需要は旺盛。農業の構造転換を捉えれば利益水準を維持する道もあろう。同業他社の株価水準および配当利回りの低さを加味して目標株価を設定した。昨今の株安局面では、井関農機の景気動向に左右されにくい性質は魅力か。

投資判断

中立

井関農機の主たる戦略は、①スマート農業を念頭に置いた高価格帯モデルの積極投入、②低価格帯モデルのヤンマーとの相互OEM供給による合理化、③アセアン地域を重視しながらの海外売上高比率の拡充、④インドネシア工場におけるグローバル標準廉価トラクタの生産、に集約されよう。国内市場を対象とした①および②について進捗は順調であるが、海外市場と対象とした③の進捗遅れが懸念である。井関農機の海外売上高比率はようやく20%を超えた段階であり、グローバル企業への道のりは遠い。当面は国内市場の機械化需要とICT化への需要を捉えれば凌げるものの、超長期的な企業存続の為には海外売上高比率の成長は不可避である。現状は海外展開の進捗が芳しくないことを踏まえて中立評価とした。