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企業レポート

内海造船(7018)の分析|造船不況で業績低迷するも底堅い

基本情報

内海造船(7018)は、広島県尾道市に本社を置く造船メーカーであり、造船業では中堅に位置している。フェリーや内航船の建造ノウハウに優れており、津軽海峡フェリーやハートランドフェリーは内海造船が建造したフェリーを多数保有している。既に造船から撤退した日立造船との関係が深い事情があり、現在は同社が筆頭株主である。

目次

株価の推移

造船バブル後の株価は長期低迷

■株価の特性
好不調の落差が大きい造船業らしい極端な株価推移である。内海造船の株価は株価指数に影響されることもなく、内海造船の業績を追従する様に推移する。とはいえ、既にPBR0.3倍という解散価値を大きく下回る水準で底這いしていることから、更なる株価下落の余地にも乏しい。内海造船に限らず、造船業は好不況サイクルが10年単位で形成される業界であることから、株価推移も気長な推移となりがちである。

■過去の株価推移
造船バブルが2007年に崩壊して以降、長期的な株価低迷が継続している。2007年6月には10500円を記録したが、造船バブルの崩壊と海運不況の長期化によって2019年には1500円台にまで下落している。1990年代の内海造船の株価が1500円台であった為、実に20年ぶりの安値圏に回帰した格好である。歴史的には1970年代から現在に至るまで1000円前後でのレンジ推移を続ける銘柄であるため、造船バブル期の異常高が解消された見方が正確か

日経平均株価との相関性は低い

■日経平均株価との相関性
日経平均株価との相関性は低い。アベノミクス以降の日経平均株価の上昇を尻目に、内海造船の株価は下値圏を彷徨い続けている。造船不況という構造的問題が原因とはいえ、ここまで日経平均株価に逆行し続ける銘柄も珍しい。過去10年間の株価推移は、造船業の将来性を警戒する株式投資家に内海造船が敬遠されてきた証明であろう。

■過去の日経平均株価との相関性
短期的には日経平均株価をアウトパフォームすることもある。業績上振れが発覚した2016年9月には1260円から2820円にまで急騰して株価2倍を達成している。出来高が少ない東証二部の小粒株である為、動意づいた際の価格変動幅が大きい点は留意しておきたい。造船不況の解消まで株価低迷は続きそうだが、必ずしも絶対的に日経平均株価に劣後するわけではない。

業績の推移

売上高は低迷が長期継続

■売上高の特性
売上高は300億円規模で推移している。造船バブル期には売上高600億円規模に乗せる局面もあったが、現在は当時の半減規模となっている。造船業は受注船価が売上高を決する業界であり、受注船価は海運市況に応じて激しく変化する。内海造船の売上高減少は船舶余りによる受注船価の低迷が原因であるが、造船バブルで過剰供給された船舶が解撤されない限り受注船価の回復は見込み難い。しかし、船舶寿命から逆算すると2040年以降までは造船バブルで建造された船舶の解撤が本格化する見込みは薄い。

■過去の売上高推移
2009年の売上高659億が傑出している。これは、2007年頃の船舶不足時に受注した好採算船舶が建造されていた為である。造船は受注から売上高計上まで数年のタイムラグがある為、造船バブル期の受注が業績に反映されるまで数年を要する点が特徴である。船舶の受注状況は四半期ごとの決算短信の中で言及される他、日本海事新聞などの業界紙で報道される為、造船業への投資を考える場合にはよく確認したい。

営業利益は少ないが相対的に堅調

■営業利益の特性
営業利益は2013年以降は概ね5億円前後で推移しており、営業利益率は2%未満である。造船不況によって受注船価が低迷する中でも低採算工事を続けていることが営業利益の低迷を誘発している。造船業は工場が止まれば損失に直結する為、受注船価が下落していても受注せざるを得ない。通常であれば、弱小企業が淘汰されることで受注船価の低迷は解消に向かうが、造船業は中韓の造船所が国策による支援を受けて低採算船舶の建造を続けている為、需給ギャップが解消されない異常状態にある。他の日系造船メーカーの赤字転落が続出している点を踏まえると、内海造船の健闘ぶりは際立っている点は念頭に置いておきたい

■過去の営業利益推移
造船バブルで受注した好採算船舶の建造が剥落した2013年以降の低迷が著しい。造船バブル期に過剰供給された船舶の解撤が始まる2040年まで営業利益の低迷が続く可能性が高い。ただし、造船業はこうした長期的不況と短期的好況を繰り返す業界であり、歴史上特筆して厳しいわけでもない。最近は造船業の再編が加速しており、①中国船舶工業集団と中国船舶重工集団の合併、②現代造船と大宇造船の合併、③三井E&Sの千葉工場閉鎖、④三菱重工の長崎造船所売却、などが起こっている。造船メーカーの淘汰が始まっていると考えるのであれば、造船不況の解消が早まる可能性がある。

売上高の構成

船舶事業(96%)

■事業内容
船舶事業には、新造船事業と改修船事業が含まれる。新造船事業は好況時に素晴らしい業績を上げる反面、造船不況時には否応なく低迷する。他方で、改修船事業は常に一定の需要がある為に業績は安定的である。根本的な性質が異なる事業が含まれる点に注意したい。内海造船は新造船事業が主軸であり、フェリーとRoRo船の建造において多くの実績を有している。

■過去の売上高分析
売上高の約95%を船舶事業が占めており主力事業である。売上高は200億円から600億円と上下変動が極めて激しい。これは、①船舶の受注船価が海運市況に大きく左右されること、②造船の工事進捗に合わせて売上高が計上されること、が原因である。特に2010年代は造船バブルで大量建造した船舶が供給過剰を起こしており、新造船需要は低迷した。船舶過剰に窮した海運会社が余剰船舶を中古船市場へ大量供給したことも、新造船需要の下落要因として作用している。主力事業の上下変動が極めて激しいことから事業運営の舵取りの難しさが見え透く

■将来の売上高予測
微増を見込む。造船不況は2040年代まで長期化する可能性が高いが、内海造船が得意とする内航船については若干景色が異なる。日本の内航船は約74%が法定耐用年数14年を超える老朽船舶であり、今後10年以内に老朽化更新あるいは改修工事の需要が高まる。トラックドライバー高齢化やモーダルシフトを発端とする脱トラック化の趨勢による内航船シフトの進行も追い風である。他の日系造船メーカーとの競合リスクはあるが、内海造船は大型フェリーやRoRo船など競合が薄く採算がよい分野の内航船で競争力を有することから優位である。

その他事業(4%)

■事業内容
その他事業には、船舶事業以外の全事業が含まれる。具体的には、子会社の内海エンジニアリングが担当している造船業以外の事業が含まれる。例としては、①太陽光発電、②土木住宅工事、③自動車修理、④ホテルレストラン(ナティーク城山)、などが挙げられる。

■過去の売上高分析
売上高の約5%をその他事業が占める。近年はその他事業の売上高の減少が目立つが、業績不振というわけではなく、2009年以前は内海エンジニアリングが造船事業に積極的に関与していてセグメント間売上高が多く計上されていた点に原因がある。余談であるが、その他事業において内海エンジニアリングが経営するナティーク城山は、かつて日立造船が迎賓館として建設した施設を改修して仕立てたホテルだ。日立造船は内海造船の株式の39%を保有する大株主であり、同じ因島に事業所を有していることから関係が深い。

■将来の売上高予測
微減を見込む。内海エンジニアリングはあくまで本業の造船業から派生した副業である為、急激な拡大も縮小も見込み難い。手掛けている事業も、いわゆる地元の名士企業が進出しがちなものばかりである。良くも悪くも平凡な事業継続が期待されるが、地盤の広島県の地方経済に依存する側面が大きい点に注意したい。

営業利益の構成

船舶事業(99%)

■過去の営業利益分析
船舶事業の営業利益は▲19億円から48億円で推移しており安定性を欠く。営業利益を考える上では受注船価と工事進捗のみならず、為替と原材料価格も重要である。造船業は代金支払いがドル建てであり、円高は営業利益を圧迫する。更に、受注後の原材料価格の変動は価格転嫁しない業界慣習によって、受注から完成までの数年間で原材料価格が想定外の変動を起こすと営業利益を直撃する。円安と原材料価格の安定が営業利益にとっては重要である。

■将来の営業利益予測
増加を見込む。造船メーカーは数多存在するが、造船所ごとに得意とする船種は異なる。幸いにも内海造船の得意分野であるフェリー船やRoRo船は競争が緩く、内航船の老朽化も相まって受注は安定的である。近年の内海造船はフェリー船やRoRo船に注力しているが、中韓の造船所はタンカーやコンテナ船の同型船種大量生産を得意とする為、これらの船種で競合しない点は重要である。営業利益は2012年以前の10分の1の低水準には留まるものの、当面は営業黒字を確保しながらの安定操業が継続すると見込む

その他事業(1%)

■過去の営業利益分析
その他事業は営業利益に貢献していない。実に2008年から2015年に至るまで営業赤字が続いており、2016年以降にようやく営業利益への貢献が再開した体たらくである。とはいえ、内海エンジニアリングは塗装作業や運搬作業などの造船事業の一部を担っている不可分一体の子会社である為、セグメント赤字はやむを得ない。

■将来の営業利益予測
微減を見込む。営業利益が発生したとしても全体に占める割合は極めて低い為、誤差の域を超えないであろう。内海エンジニアリング自体は従業員100名規模の業容である為、内海造船の業績を特段に左右する様な営業利益を稼ぐことは見込み難い。とはいえ、広島県の地方経済に依存する側面から将来的な微減は避けがたいか。

財務の健全性

手元資金は潤沢な水準を維持

■手元資金の特性
手元資金は増加を続けており、2018年には約100億円に到達している。売上高が年間250億円規模と考えると手元資金としては20億円が目安となる為、手元資金は明らかに過剰である。しかし、造船業は長期的不況に見舞われやすい業界である為、潤沢な手元資金は事業存続の必須条件である。内海造船の手元資金は一過的な業績悪化であれば耐えられる水準を維持している為、安心材料として評価したい。

■過去の手元資金分析
内海造船を始めとする小規模な日系造船メーカーは、資本でも技術でも中韓の大手造船所には敵わない。こうした競合に真っ向勝負を挑まず、潤沢な手元資金で持久戦に持ち込んで競合の自滅を待つのも戦略である。実際、2015年には韓国の造船業2位の大宇造船が5200億円の営業赤字を計上しており、内海造船の内部留保を増やして持久する戦略はあながち間違いでもない。ちなみに、同業他社の名村造船所も同じ戦略を採っていると評される。

自己資本比率は業界下位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は右肩上がりで25%に到達している。同業他社と比較すると、サノヤスホールディングス21.7%・名村造船所42.6%・住友重機械工業47.5%となっており、業界水準をやや下回る。特段危惧する水準ではまったくないが、オーナー系の日系造船メーカーの雄である名村造船所と比べると低めの自己資本比率である点は気がかりではある。

■過去の自己資本比率分析
2007年から概ね右肩上がりで上昇している。貸借対照表から内実を探ってみると、利益剰余金が2008年の31億円から2018年には61億円と倍増している。負債は2008年の292億円から2018年には174億円と減少傾向にあることも相まって、自己資本比率(自己資本÷総資本)の向上が起こっている。こうした右肩上がりの自己資本比率の推移は、内海造船が造船不況を生き延びる戦略を着実に遂行している結果系であろう。

株価の割安感

BPSは堅調な拡大が継続

■BPSの特性
BPSは2007年から上昇傾向を続けて4689円に到達している。常識論で考えれば、BPS4000円台の株式が1500円未満で買えるというのは極めて魅力的な割安水準である。しかし、造船業は業績変動が激しい業種である為、環境次第では膨大な純損失が発生しうる。純損失が発生すればBPSが毀損する為、BPSと株価との間の乖離はBPS毀損リスクのマージンとも解釈できよう。純損失発生リスクの織込具合によって、割安性の魅力度合いが変化するだろう。

■過去のBPS分析
2013年には純損失20億円が発生したことで造船バブルで蓄積した利益剰余金が減少してBPSが5153円から3760円にまで下落している。翌年以降は黒字転換して再び利益剰余金の蓄積が再開したことでBPSも再拡大を果たしている。このBPSの上昇も、内部留保の蓄積による造船不況下の持久戦略の結果系としての表れであろう。

PBRは叩き売りの水準

■PBRの特性
PBRは2007年から下落が続く。2014年以降はPBR0.5倍を下回る水準で取引されており、極めて割安と言えよう。2018年はPBR0.3倍を下回る局面すら時折発生しており、極めて割安な銘柄である。とはいえ、①2040年以降まで新造船需要の低迷が予想される点、②船価低迷や造船不況という逆風、③造船業自体が斜陽産業の代表格である点、④景気後退懸念の中で敢えて景気敏感な造船株を買う動機に欠ける点、など株式市場が造船株を敬遠する状況がPBRに表現されていると思えば、非常識とも言い切れない。

■過去のPBR分析
2007年に記録したPBR2.5倍は傑出している。現在の株式市場でいえば村田製作所(PBR2.5倍)やアステラス製薬(PBR2.5倍)などの超優良企業と同格である。内海造船に限らず、2000年代後半の造船株はこのような割高水準で売買されていた。今となっては信じられない過去であるが、造船業はこういった乱高下を過去数十年に渡って繰り返している業界である。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。内海造船は配当方針として「内部留保との調和をはかりながら、業績に裏付けられた成果の配分」を掲げている。内海造船を取り巻く厳しい事業環境を考えれば、配当水準の低迷はやむを得ない。造船業は業績が極めて不安定な業種である為、業績悪化時に備えた内部留保の蓄積が重要となる。好況時に配当で内部留保を吐き出していては長引く造船不況を生き残れないのである。

■過去の配当金分析
過去の推移を眺めると、やはり造船バブル期は高配当である。とはいえ、造船バブル期も配当性向は約40%前後に抑制されており、当時から既に内部留保の蓄積を意識していたことが伺える。近年は配当性向を約15%前後に抑制しており、造船不況の長期化を見据えた内部留保の蓄積に余念がない。このあたりは流石に幾多の造船不況を経験してきた老舗企業である。

配当利回りには期待しない

■配当利回りの特性
配当利回りは概ね2%前後で推移している。配当利回りとしては平凡だが、業績不安定な造船株を配当利回り目当てで保有すること自体がナンセンスである。造船株は造船不況時の出口付近で購入して、人生に数度だけ到来する造船バブルで膨大なキャピタルゲインを狙う分野である。極端な上下変動を描く株価推移もそうした性質の写し鏡だろう。

■過去の配当利回り分析
2008年から2011年にかけては配当利回りが3%を超える水準で推移している。当時は造船バブルが出口に差し掛かった段階であり、造船バブルで受注した高採算船舶の受注残が多く残っていたことで業績もまずまずであった。しかし、高採算船舶の手持ち受注残が切れれば業績低迷するのは当然である。結果的に、当時の配当利回りは維持されず、株価も当時の半額規模にまで低落している。配当利回りを目当てに造船株に手を出す危険性を示す典型例である。

総合評価

目標株価

1200円

中長期的には造船不況が継続すると想定。株式市場が好調である限りは、既に極めて割安な水準であることから底堅く推移する。更なる業績悪化を織り込むほどの悪材料は現状見当たらず、内航船需要が堅調に推移すれば小幅ながらも業績好転する機会を見込む。

投資判断

やや強気

当面の業績低迷は約束されているものの、倒産リスクは低い。内部留保の蓄積によって手元資金は潤沢であり、自己資本比率にも問題がない。事業の先行きを考えても、中韓の造船メーカーと得意とする船種が異なる為に差別化が可能であり、好採算なフェリー船やRoRo船の建造に特化することで営業赤字に転落しない程度の業績維持は可能であろう。過去を振り返っても、1970年代のオイルショック、1980年代のプラザ合意による円高不況、2000年年代の造船バブル崩壊といった時代の荒波を乗り越えた実績と経験を有する為、目先の不況を乗り越えてくれる期待値は決して低くない。