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企業レポート

日本トムソン(6480)の分析|配当水準は凡庸だが株価の再現性に着目

基本情報

日本トムソン(6480)は、東京都港区に本社を置く機械部品メーカーである。工作機械や半導体製造装置に欠かせない部品である直動案内機器においては、THKと並ぶ世界的シェアを有する。同業他社のTHKと同じく寺町博によって創業された企業である点は殊更に有名である。

目次

株価の推移

株価は業績追従で上下変動

■株価の特性
株価は綺麗なレンジ推移を描いており、リーマンショック以降は3年周期で上昇下落を反復している。日本トムソンの業績は3年周期で好不調を繰り返しており、それが株価に反映されている格好だ。日本トムソンの株価は1992年から約30年間に渡って300円台から700円台のレンジを中心に推移しており、株価の長期的再現性が高い部類ではある。

■過去の株価推移
過去10年間では2017年の株価上昇が特に力強い。この時期は日本トムソンが得意とする直動案内機器において世界的品薄が発生していた時期と重なる。データセンター投資活性化と5G投資の急展開を受けて半導体製造装置メーカーへの部品供給が間に合わず、日本トムソンなどの部品メーカーの業績拡大が期待されていた。実際に業績は拡大したものの、2018年以降は景気後退懸念が拡大したことで、株価と業績は一服した。

日経平均株価との相関性は低い

■日経平均株価との相関性
日経平均株価との相関性は低い。日本トムソンの企業規模と株式価値は10年前と大差がないことから10年前と同じ株価レンジでで推移し続けている為、2013年以降の日経平均株価の様な右肩上がりの上昇は得られなかったのは当然である。同じ日本株であることから短期的な値動きは日経平均株価と類似するが、長期的な株価推移の様相は大きく異なっている

■過去の日経平均株価との相関性
過去においても日経平均株価との相関性は低い。これはリーマンショック後の日経平均株価の低迷局面において日本トムソンの株価が急回復を遂げた点に特に顕著である。反面、2016年と2019年には日経平均株価を超える株価下落に見舞われており、下落局面においても日経平均株価との相関性は見出せない。結果的に日経平均株価と同様の価格変動に至る場合が多いものの、長期的には日本トムソン自身の業績への追従性の方が高そうである

業績の推移

売上高は400億円規模で推移

■売上高の特性
売上高は400億円規模で推移している。日本トムソンの製品は景気次第で需給が変動するものの、売上高の上下変動は比較的落ち着いている印象である。主要顧客の業界は半導体製造装置・輸送用機器・工作機器であるが、実際にはそれ以外の領域でも直動案内機器やベアリング機器は活用されており、アフターセールス需要も底堅いことが売上高を下支えしている。

■過去の売上高推移
2017年および2018年の売上高は傑出している。これは、①半導体製造装置メーカー向けの需要拡大、②買収した中国精密機械メーカーのUBC(優必勝精密軸承製造)の連結効果、③北米と日本における売上高拡大、に牽引されたものである。2019年以降は半導体製造装置および北米と日本における需要拡大が後退へと転換した為、更なる業績の右肩上がりは望みがたい状況へと転換している。

営業利益は3年周期で好不調転換

■営業利益の特性
営業利益は3年周期で好不調を繰り返しており、営業利益の変動幅が大きい。年度によって営業赤字転落から営業利益率10%超など様々である。日本トムソンの営業利益は為替や原材料価格にも影響されるものの、売上高への依存度が大きい。例えば、2018年度と2019年度の第三四半期を比較すると、売上高が▲23%の落ち込んだことが営業利益を▲57%の下落要因となっている。売上高が営業利益に大きく影響を及ぼす点は留意しておきたい。

■過去の営業利益推移
過去の推移を見ると、リーマンショック直後の2009年の営業赤字が顕著である。この年の営業損失は46億円に達しており、売上高400億円規模の企業であることを踏まえると大打撃であった。これは、①金融危機による顧客企業の設備投資の消失、②急激な円高進行による利鞘縮小が原因である。上述した通り、日本トムソンの営業利益は売上高に強く影響される為、金融危機によって売上高が急減したことが多額の営業損失を招いた。

売上高の構成

軸受等事業(88%)

■事業内容
軸受等事業には、直動案内機器とニードルベアリングを主力とする機械部品の製造販売が含まれる。直動案内機器は高精度を求められる機械の直線運動部に必要不可欠な製品であるが、高精度で製造できるメーカーは世界的にも限られる。更に、日本トムソンは直動案内機器に欠かせないニードルベアリングの自社製造に日本企業として初めて成功した歴史を持っている。

■過去の売上高分析
2009年を除けば概ね400億円規模で推移している。軸受等事業で扱う製品は、顧客業界の工作機械や半導体製造装置の需要動向に左右されやすい。実際、リーマンショックで設備投資が停滞した2009年には売上高が急減している。ただし、実際には交換需要などアフターセールス需要も底堅い為、壊滅的な需要急減が起こらない限りは売上高400億円前後での推移を保つ。2017年からは買収した優必勝精密軸承製造(UBC)が連結対象となったことで売上高500億円が視界に入りつつある。

■将来の売上高予測
短期的には減少を見込む。米中貿易摩擦に端を発した景気後退懸念による設備投資の需要後退によって、主要顧客である工作機械業界の受注総額が前年比▲35%となった影響は避けがたい。2019年にはCOVID-19の流行が更に設備投資意欲を下押しする。UBCの買収効果によって売上高400億円規模は維持すると見込むが、当面の売上高縮小は不可避だろう。日本トムソンは3年周期で好不調を繰り返す為、次の好調到来を待つ局面である。

諸機械部品事業(12%)

■事業内容
諸機械部品事業には、機械部品や関連部品の製造販売が含まれる。直動案内機器を利用したアライメントテーブルや精密昇降テーブルをパッケージとして販売することで、顧客企業の設計負担を緩和している。また、自社製品の応用利用に不可欠なボールネジやシャフトの販売代理店として取り扱うことで、顧客企業への対応力を拡張している点も特徴的である。

■過去の売上高分析
2009年を除けば概ね50億円規模で推移している。事実上は軸受等業に付帯する事業である為、軸受等事業が好調にあった2017年には過去最高水準の売上高72億円を記録している。軸受等事業の不振を補完する関係にはないものの、不況時にも売上高50億円規模で推移しており業績下支えの役割は果たしている。

■将来の売上高予測
短期的には微減を見込む。軸受等事業の売上高が停滞する中で諸機械部品事業が売上高を拡大できる要因には乏しい。景気後退懸念に伴う設備投資抑制が下押し要因として作用するものの、売上高50億円規模は維持可能と見込む

営業利益の構成

軸受等事業(非公開)

■過去の営業利益分析
軸受等事業の営業利益は非公開である。売上高の大半が軸受等事業に依存していることもあって、営業利益への寄与度は大きいだろう。また、日本トムソンの営業利益は売上高影響によって上下変動しやすい点が特徴である。例えば、リーマンショックによって売上高253億円にまで急落した2009年には営業損失46億円を計上した反面、反動増が到来した翌年の2010年に営業利益43億円を記録している。

■将来の営業利益予測
短期的には減少を見込む。軸受等事業の売上高が停滞する中で諸機械部品事業が売上高を拡大できる要因には乏しい。景気後退懸念に伴う設備投資抑制が下押し要因として作用するものの、売上高50億円規模は維持可能と見込む

諸機械部品事業(非公開)

■過去の営業利益分析
諸機械部品事業の営業利益は非公開である。売上高に占める割合は約15%に過ぎないことから営業利益への寄与度は限定的であると想定される。ただし、自社製品をパッケージ化した高付加価値製品が多いことから、利益率という観点においては軸受等事業よりも高採算である可能性がある。

■将来の営業利益予測
短期的には微減を見込む。軸受等事業に比べると需要低迷期においても売上高50億円規模を維持していることから、安定性が高い事業となっている。目先の営業利益の縮小は避けがたいものの、減少幅は限定的にとどまると想定する。ただし、売上高に占める割合が低いことから微減に留まっても全社的な営業利益を下支えする程の健闘は望めない。

財務の健全性

手元資金は潤沢な水準を維持

■手元資金の特性
手元資金は概ね150億円規模を維持している。売上高が年間400億円規模と考えると手元資金としては30億円が目安となる為、極めて潤沢な水準である。リーマンショックによる打撃を受けた2009年の純損失が60億円であったことを踏まえると、危機を乗り越える為に必要な資金力を常に確保している状態を維持している。

■過去の手元資金分析
手元資金の水準は過去10年間で変化していない。強いて言えば2012年に99億円にまで下落した点に着目したい。同年は業績面では問題がなかったものの、減損損失と棚卸資産減少によって営業収入が得られなかったことで手元資金が減少した。長期借入金返済と社債償還による支出が重なったことも手元資金を減少させた。とはいえ、業績好調でも手元資金が減少しうる点は日本トムソンに限った問題ではない。

自己資本比率は安全圏の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は微減が続くものの、概ね60%台での推移となっている。同業他社と比較すると、THK65.6%・日本精工49.4%・NTN27.4%となっており、業界水準をやや上回る。高すぎる自己資本比率は資本効率を削ぐとはいえ、売上高400億円規模かつ主力事業依存度が高い事情を踏まえれば、企業存続を担保する為に必要な水準であろう。

■過去の自己資本比率分析
2007年には自己資本比率70%に近い水準であったが、これは2005年から2007年にかけて歴史的な好業績が持続した為である。超長期的には自己資本比率60%前後で安定推移していると見てよい。直近では2016年に自己資本比率が下落しているが、これは長期借入金と社債の増加が原因である。同年に実施した①UBC(優必勝精密軸承製造)の買収、②基幹業務システム刷新と設備更新、を目的とした資金調達が自己資本比率を押し下げた格好である。

株価の割安感

BPSは増加傾向だが下落に警戒

■BPSの特性
BPSは2009年を底に右肩上がりの上昇が続く。業績の好不調はあっても純資産の毀損にまでは至らなかった点がBPSの拡大に貢献している。アベノミクス以降の株高局面が日本トムソンが保有する有価証券の評価額を押し上げたことも純資産の拡大基調を下支えしている。こうした過去を逆に解釈すると、業績不振かつ株安局面に見舞われた際にBPSが急低下する可能性を示唆している点には留意しておきたい。

■過去のBPS分析
日本トムソンは2012年と2016年に純損失を計上したものの、BPSへの影響は極めて限定的に留まっている。いずれも純損失による利益剰余金の減少を有価証券評価差額金が補ったことが理由である。日本トムソンは特定投資株式として45銘柄を保有しており、この評価額増減がBPSに反射しやすい。日本トムソンの保有株式は株価変動が激しい景気循環株が多いため、評価額変動が大きい点に注意したい。

PBRは過去10年間に渡り低迷

■PBRの特性
PBRは2007年以降は低迷が続く。BPSの安定的上昇に対して株価が低迷したことで、PBR0.6倍を中心とした推移となっている。PBR1.0倍を下回ると解散価値を下回る為、その半分以下のPBR0.6倍という水準はかなり割安な水準である。とはいえ、過去10年間で業績が特段に成長しておらず、業績不振かつ株安局面が到来するとBPSが急低下するリスクがあることを踏まえると非常識とも言い切れない。

■過去のPBR分析
2017年のPBRの急上昇が目を引く。2017年に直動案内機器の需要が世界的に急拡大したことで、日本トムソンの株価が急騰してPBRを高騰させた。当時は世界的な好景気によって工作機械や半導体製造装置の需要が拡大しており、これらに欠かせない直動案内機器の納期が半年以上という状況であった。日本トムソンの主要顧客は好不調の落差が大きい為、追い風が重なった場合にはこうした株価急騰が起こる点は覚えておきたい

配当金の推移

配当金は業績連動で安定感を欠く

■配当金の特性
配当金は業績連動型である。日本トムソンは配当政策として「業績水準等を総合的に勘案し、安定的な配当を継続すること」を掲げており、過去の配当金も業績に連動している。業績が上がれば増配する反面、業績が下がれば減配にも躊躇がない。2015年からは自社株買いを3年連続で実施しており、配当金以外での株主還元にも関心を払い始めている点には留意したい。

■過去の配当金分析
過去の配当金推移は、売上高との相関性が高い。日本トムソンの利益水準は年度毎の上下変動が激しい為、株主としては相対的に変動が緩やかな売上高に比例する方が良いだろう。特筆すべきは純損失60億円を計上した2009年にも配当金を支払っている点である。普段の配当水準は高くはないものの、潤沢な内部留保を抱えていることから無配転落の心配は薄そうである

配当利回りは凡庸な水準

■配当利回りの特性
配当利回りは概ね2%台で推移しているが、安定性はない。配当金が業績に連動するため、配当利回りも年度毎の上下変動が激しめである。配当利回りとしては凡庸であるものの、日本株の平均的な配当利回りを僅かに上回る水準であることから見劣りもしない。日本トムソンの株価は右肩上がりとは程遠い推移であるため、配当金以外の利益戦略を考えておきたい。

■過去の配当利回り分析
2015年にも配当利回りが3%台に到達しているが、これはチャイナショックによって日本トムソンの株価が急落した点に起因する。この時も業績と減配が懸念されたものの、結果的には限定的な純損失が起こったのみで減配もなく杞憂であった。その後に株価が急騰したことで配当利回りは再び低下しており、後知恵で言えば絶好の買い場であったといえる。

総合評価

目標株価

410円

当面は景気後退の懸念から設備投資意欲が世界的に低迷すると想定する。設備投資動向に業績が左右される日本トムソンは業績拡大が難しい局面に差し掛かるだろう。とはいえ、財務健全であることから企業存続への懸念は薄く、歴史的に裏付けされた株価推移から安定感は高い。この程度の株価であれば景気後退を織り込んでも尚、投資妙味はあるか。

投資判断

中立

日本トムソンの製品は工業分野にとって不可欠であるのみならず、高品質な製品を安定供給できるメーカーは世界的にも限られることから、競争力という観点では特段の懸念はない。問題は、目先の懸念は景気後退が現実となるかである。日本トムソンの顧客は半導体製造装置や工作機械など景気後退に弱い業界が多い為、次の景気後退が深刻であった場合には業績への下方圧力が強くなる。業績低迷と有価証券評価額減の二重苦に見舞われた場合にはBPSの低下も避けがたく、苦戦を強いられるだろう。ただし、元々がPBR0.6倍前後の割安圏での推移であった為、株価の下落幅はそれほど深くはなさそうである。

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