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企業レポート

日本鋳造(5609)の分析|長期的な売上高の減少傾向に底打ちの兆し

基本情報

日本鋳造(5609)は、神奈川県川崎市に本社を置く1920年創業の鋳鋼鋳造メーカーである。半導体製造装置や鉱山機械向けの高付加価値材を得意とする他、橋梁部品の製造にも注力している。JFEホールディングスおよび日立建機との取引関係が深く、両社共に日本鋳造の大株主となっている。

目次

株価の推移

株価はレンジ推移が長期継続

■株価の特性
景気敏感な小粒株らしい株価推移だが、価格変動の大きさが目につく。おおよそ800円から2000円のレンジでの往復推移である為、高値圏と底値圏が明瞭である。業績が低迷していた2011年や2014年にも1500円を超える価格帯にまで急騰しており、好材料が認められれば業績に関わらず高騰する。ただし、株式併合が2017年に実施されるまで日本鋳造は低位株として有名であり、急騰が始まると割安感から買いが殺到する傾向があった点には注意したい。

■過去の株価推移
おおよそ3年サイクルで急騰と暴落を繰り返している点が特徴的である。日本鋳造の業績は好不調の落差が大きいため、こうした株価推移を描くのは当然である。上手く底値を拾えば大きな利益を得られると期待したくなるものの、底値をピンポイントで当てることは困難である。なお、徐々に底値を切り下げていることから、超長期保有には適さないだろう。

日経平均株価との相関性は低い

■日経平均株価との相関性
日経平均株価との相関性は極めて低い。同じ日本株である以上、景気回復期には共に株価上昇を演じるものの、アベノミクス以降は底値を切り上げながら株価上昇を続ける日経平均株価と異なり、日本鋳造は景気失速する度に1000円未満に暴落することが特徴である。

■過去の日経平均株価との相関性
景気回復期においては、価格変動が激しい日本鋳造は日経平均株価を大きく上回る株価上昇を見せる。チャイナショックの影響から脱した2017年には日経平均株価を大きく上回る株価上昇率を記録している。この価格変動の大きさを魅力と感じるか脅威と感じるかで、投資判断が分かれてくるだろう。

業績の推移

売上高は右肩下がりだが底打ち

■売上高の特性
売上高は右肩下がりで推移しており100億円規模にまで衰退している。鉄鋼業は景気循環的に売上高が推移しやすい業界であるが、過去10年間は景気回復期においても売上高拡大は見られない。世界景気が拡大基調に転じた後も売上高が低迷していることから、実体経済の活況と日本鋳造の売上高の相関性はかなり低いと考えられる

■過去の売上高推移
1990年代には売上高240億円規模に乗せる局面もあったが、この20年間で半分以下の水準にまで減少した。2007年には再び鋳造業が好況となったことで売上高213億円を記録したが、その後の10年間で売上高100億円規模にまで衰退している。2017年以降は増加に転じており、底打ちを迎えた気配がある。

営業利益は長期低迷から脱出

■営業利益の特性
営業利益は2016年を底に回復基調にある。日本鋳造は低熱膨張材(熱膨張による寸法変化が極めて少ない素材) の開発に力を入れるが、これが半導体製造装置の台座や治具に採用されたことで営業利益は回復基調に転じた。2016年以降は半導体製造装置メーカーが特に好況であり、日本鋳造も恩恵を受けている。日本鋳造は半導体製造装置メーカーと鉱山機械メーカーが主要顧客であるが、これらの好況時には営業利益を拡大しやすい

■過去の営業利益推移
2016年に営業損失3億円を計上している。これは、売上高が100億円を割る水準にまで落ち込んだことで収益力が低迷したことに加えて、品質対策と長期滞留棚卸資産の評価減を行ったことが原因である。品質対策と評価減は一過的な損失であるが、売上高が100億円水準にまで落ち込むと固定費に圧迫されて利益を稼ぎにくい構造が読み解ける。

売上高の構成

鋳鋼品・鋳鉄品事業(58%)

■事業内容
鋳鋼品・鋳鉄品事業には、鋳造に関わる素材および製品の開発製造販売が含まれる。日本鋳造は低熱膨張材などの高付加価値材の開発に熱心であり、特に建設機械や半導体製造装置の部品製造が事業の柱になっている。

■過去の売上高分析
売上高の約60%が鋳鋼品・鋳鉄品事業が占める。2016年までは売上高が漸減していたものの、2017年以降は拡大に転じて80億円規模への反転を果たしている。これは、①2016年まで減少が続いた大型鉱山機械向け製品の販売回復、②半導体製造装置の需要活況、による。両者ともに好採算かつ売上高に占める割合が大きい為、業績を見通す上では重要である。

■将来の売上高予測
現状維持を見込む。当面の景気後退が懸念であるが、主要顧客である半導体製造装置メーカーと鉱山機械メーカーの趨勢は変わらない。半導体製造装置メーカーは好調が続くと想定されるが、2016年から2018年にかけての急拡大は持続し得ず、頭打ちとなろう。鉱山機械メーカーは資源価格低迷から脱する糸口が見えず、現状水準の低迷が当面持続しそうである。こうした背景を踏まえ、鋳鋼品・鋳鉄品事業の売上高は現状水準を維持する現状維持を想定する。

鋼構造品・景観事業(36%)

■事業内容
鋼構造品・景観事業には、鋼構造品および景観製品の製造販売が含まれる。橋梁の構造体を支える支承部材や歩行者の落下を防ぐ防護柵、建物に意匠を付与する建築構造物などを生産している。橋梁向け製品が多くを占める為、公共事業による建築需要に業績が依存する。余談であるが、過去には東京スカイツリーや東京モノレールの構成部品を製造した実績もある。

■過去の売上高分析
売上高の約40%を鋼構造品・景観事業が占める。2016年まで鋼構造品・景観事業の売上高は横ばいであったが、2017年には東京オリンピック関連特需によって前年比+59%の急激な増加を演じた。2018年以降は東京オリンピック関連特需こそ終息したものの、好調が持続している。常識論からすれば景気後退局面の財政政策で公共事業は増加する為、景気後退による主力事業の縮小を僅かながら補完する役割を期待できそうである

■将来の売上高予測
微増を見込む。日本国内の橋梁は老朽化が深刻であり、2019年時点で約30%が建設後50年以上が経過している。建替や補修需要が活性化していくことは既定路線であるものの、橋梁向け製品は近年競争が激しく、販売価格は停滞気味である。東京オリンピックに向けた建設需要は既に剥落した為、好況事業に依存した極めて緩やかな需要拡大が継続すると思われる

その他事業(6%)

■事業内容
その他事業には、加工品の製造およびその他の事業が含まれる。具体的には、①日本鋳造の設備保全や出荷業務を担当する子会社の白石興産の事業、②日本鋳造の設備保全と設備工事を担当する子会社のエヌシーシーの事業、などが含まれる。

■過去の売上高分析
その他事業の売上高は縮小傾向にある。2011年までは売上高の約20%を占めていたが、売上高は縮小して現在では6%を占める程度となっている。売上高の縮小は子会社の売却清算が原因であり、子会社数は2007年から3社も減少している。主力事業との関係が薄い非コア事業の売却清算をすることで、経営資源を主力事業に集中させる効果がある。

■将来の売上高予測
微減と想定する。日本鋳造は残る3社の子会社のうち2社の清算を既に決定しており、2020年には子会社数は1社になる予定である。清算する子会社の事業は別会社が引き継ぐものの、連結対象から離脱する為、その他事業の売上高縮小は既定路線であろう。

営業利益の構成

鋳鋼品・鋳鉄品事業(非公開)

■過去の営業利益分析
鋳鋼品・鋳鉄品事業の営業利益は非公開である。過去の業績を考えると、半導体製造装置または鉱山機械に向けた製品が好調である時期には業績好転しているため、これらの採算が良好であることが推察できる。

■将来の営業利益予測
微増を見込む。主要顧客の半導体製造装置メーカーが需要旺盛であることに加えて、2019年以降に実施したコスト削減を主眼とする設備投資の効果が発露しそう。とはいえ、景気後退懸念による設備投資の抑制傾向が重荷となり、営業利益の急拡大を期待できるだけの材料には乏しい。加えて、主要顧客の鉱山機械メーカーは資源価格の低迷による需要低迷が継続する。総合的に鋳鋼品・鋳鉄品事業の営業利益は微増に留まるだろう。

鋼構造品・景観事業(非公開)

■過去の営業利益分析
鋼構造品・景観事業の営業利益は非公開である。日本鋳造の決算情報を読み解くと、橋梁部品自体の利益率は高めであるものの、競合他社との受注競争が収益拡大を阻んでいる。日本鋳造は橋梁以外にも建築構造物なども手掛けるものの、販売規模を考慮すると営業利益への貢献度は薄いと想定される。

■将来の営業利益予測
微増を見込む。国内橋梁老朽化と公共事業増加を見越して需要拡大を予測するが、競合他社との競争を考慮し過度の期待は据え置いている。日本鋳造が差別化を図るとすれば、建設後の補修保全が容易な製品の投入であろう。笹子トンネルの事故以来、これまで手薄だった道路設備の保全補修への関心が高まっている。こうした領域に対する高付加価値製品の投入によって競合他社との差別化を図っていくことができるかが重要となる。

その他事業(非公開)

■過去の営業利益分析
その他事業の営業利益は非公開である。日本鋳造は子会社の売却清算を過去10年に渡って進めてきたことから、過去においても営業利益への貢献度は薄かったものと想定される。

■将来の営業利益予測
その他事業の営業利益は減少を見込む。既に子会社の売却清算は概ね完了している為に、その他事業の営業利益に将来的に大きな変化が起こる可能性は低い。2020年の清算が決定している子会社は事業規模が小さい為、この清算が業績に与える影響は些少であると想定される

財務の健全性

手元資金は最低限の水準

■手元資金の特性
手元資金はおおよそ3億円から5億円で推移している。売上高が年間150億円規模と考えると手元資金としては最低10億円が適正水準である為、手元資金は明らかに少ない。しかし、日本鋳造は売上債権が買掛債権の約4倍の規模を維持しており、資金繰りへの懸念は考えにくい。日本鋳造の有利子負債は22.5億円に留まっており、更なる資金調達の余地もある。

■過去の手元資金分析
過去の手元資金は上下変動が大きい。しかし、そもそもの手元資金が少ない為、決算のタイミングでの残高が顕著に上下変動している様に見えてしまう点に注意したい。例えば2013年には顕著に手元資金が減少しているが、同年は固定資産への投資を10億円規模で遂行した影響で一時的に手元資金が減少していた過ぎない。いずれにせよ、売上債権が巨額であることから回収タイミングを適正にコントロールすることで資金繰りは十分に維持できよう。

自己資本比率は業界水準を上回る

■自己資本比率の特性
自己資本比率は右肩上がりで推移して直近では50.9%に到達している。同業他社と比較すると、大和重工49.2%・日本製鉄40.1%・JFEホールディングス40.9%となっており、業界水準を上回っている。鉄鋼メーカーは自己資本比率が高くなる傾向があるものの、鉄鋼メーカーの中でも特に自己資本比率が高い水準にある。設備投資の負担が重い装置産業である鉄鋼業に属するものの、他人資本への依存度が低い点が日本鋳造の特徴である。

■過去の自己資本比率分析
自己資本比率は2007年から概ね右肩上がりで上昇しており、2014年には自己資本比率57%に到達した。リーマンショック以降の日本鋳造が負債規模を縮小しており、これが自己資本比率の推移に表れている。ただし、2016年には純損失の発生で自己資本比率52%に低下した。2017年以降は利益水準が好転したが、ここで得た利益は内部留保に回されることなく製造コスト削減に向けた設備投資に向けられた為、自己資本比率50%水準のまま推移している。

株価の割安感

BPSは完全に横ばい

■BPSの特性
BPSは2000円前後の横ばい推移である。過去10年間で日本鋳造の業容は純資産100億円規模で変化しておらず、BPSはフラットな推移となっている。過去10年間の日本鋳造は業績が振るわない局面が多かったものの、純資産を毀損する程の不振には至らなかった。売上高が縮小傾向にあっても利益水準を維持さえできれば株式価値を維持できることの好例だろう。

■過去のBPS分析
2012年と2016年にBPSの低下が起こったが、原因はそれぞれ異なる。2012年のBPS下落は日立建機に対する第三者割当増資で929万株を追加発行したことで発行済株式数が増加したことが原因であり業績は好調であった。2016年のBPS下落は業績不振によって純資産が毀損したことが原因である。2016年以降は業績が上向いたことでBPSは拡大基調に転じた。

PBRは上下変動が大きい

■PBRの特性
PBRは上下変動が大きい。BPSはフラットな推移であるものの、株価の上下幅が大きい為にPBRの上下変動も大きくなっている。業績好調だった2007年と2013年はPBR1倍前後で取引されているものの、通常時はPBR0.5倍前後で推移している。過去10年間の推移を見る限りでは、PBR0.5倍未満であれば底値水準であると考えられるだろう。

■過去のPBR推移
2007年以降はPBRの低迷が際立つものの、2007年と2013年のPBRが傑出している。2007年は鋳造業が特に活況であり過去最高の営業利益を記録したことが株価高騰に繋がりPBR1.0倍水準までの上昇した。2013年は高性能低熱膨張材の開発に成功した報道を発端に株価高騰したことが原因でPBR1.0倍水準に到達していた。

配当金の推移

配当金は安定配当型

■配当金の特性
配当政策は安定配当型である。日本鋳造は配当方針として「経営基盤の強化及び将来の事業展開に備えるための内部留保の充実等を勘案した上で、株主に対する利益還元を実現 」を掲げている。景気影響を受けやすく業績縮小が続くことを考えれば驚くべき横ばい推移である。日本鋳造は過去12年間で5回の純損失計上を経験したが配当金の支払いは継続してきており、今後も急速に業績悪化しない限りは安定配当を見込めるだろう。

■過去の配当金分析
業績好調だった2007年も年間25円配当である点に着目したい。著名な上場企業は業績好転すれば増配圧力が加わるものの、日本鋳造の様にマイナーかつ大株主の庇護下にある企業は増配圧力が加わりにくい。これもあって、業績好調時に増配せず業績低迷時にも減配しないフラットな配当推移が実現できている。業績好調時には株価急騰によるキャピタルゲインが見込める為、増配以外で株主還元が結果的に実現されていると考えれば、投資妙味はある。

配当利回りは少ないが安定

■配当利回りの特性
配当利回りは概ね2%前後で推移している。配当利回りとしては凡庸である為、配当目的の長期投資には向かない。しかし、リーマンショック直後も減配することなく配当維持している点は、景気変動に弱い製造業としては特筆すべき点である。株価変動が激しい特性と相まって、配当利回りを安定的に得ながら、業績好転時のキャピタルゲインを狙う戦略が成立する。

■過去の配当利回り分析
株価の上下変動に応じて配当利回りも上下している。特に株価が低迷した2008年と2015年は配当利回りが2.5%に到達しており、若干の向上を果たしている。2018年は業績不振を警戒した株価低迷が進行したことで過去10年間で最高水準の配当利回りとなる4%台に到達している。株式市場は減配を織り込みつつあるが、配当金推移が極めて安定的な日本鋳造が現在の業績水準で減配に転ずる可能性はそう高くはなさそう

総合評価

目標株価

820円

短期的に業績好転を見込む材料には乏しいものの、業績低迷も底打ちに到達したと想定。割安感と安定配当、業績好転時の株価急騰を見据えれば、余剰資金を投入するフェーズにある。政府による国土強靭化投資に期待したい。

投資判断

やや強気

2018年で半導体需要拡大と東京オリンピック関連需要がピークアウトした為、業績好転には時間を要するものの、深刻な業績悪化には至らないと想定される。米中貿易摩擦によって設備投資を見送っていた半導体メーカーが設備投資に向けた動きを再開しつつあることを踏まえると、鋳鋼品・鋳鉄品事業は若干の好転余地が残されている。鋼構造品・景観事業についても、自民党政権が続く限りは息長いテーマである国土強靭化によって橋梁向け部品の出荷増加が下支えされると見込まれる。過去10年間の株価推移からしても既に株価は底値水準に接近しており、投資妙味が感じられる。