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企業レポート

日野自動車(7205)の分析|国内販売は成長継続するが海外展開は停滞

基本情報

日野自動車(7205)は、東京都日野市に本社を置く自動車メーカーである。トラックやバスなどの商用車の製造に長けた自動車メーカーであり、特に中大型トラックにおいては国内シェア1位の地位を占めている。日系自動車メーカーの中ではいすゞ自動車に並ぶ歴史の長い企業であり、1910年に東京瓦斯から機械部門が独立して設立された東京瓦斯工業が源流企業である。1950年代から1960年代までは仏ルノーと提携して同社の乗用車の生産を手掛けていたが、1966年にトヨタ自動車と提携してからはトラックやバスなどの商用車に特化した自動車メーカーへと転換した経緯がある。ただし、トヨタ自動車から「ランドクルーザープラド」「FJクルーザー」「トヨエース」などの生産を受託しており、今なお乗用車を生産する能力を有している。なお、2004年にいすゞ自動車と共同でバスの車体生産を担うジェイ・バスを設立したことで、実質的にはバスの車体生産は同社へ移管している。

目次

株価の推移

株価は2013年以前の水準に回帰

■株価の特性
2007年から2019年の期間において、日野自動車の株価は158円から1916円のレンジで推移している。とはいえ、2015年に記録した株価1916円を頂点に株価下落が続いており、直近では2013年以前の水準にまで下落している。本来、自動車セクターは景気動向に業績が左右されやすい事情から、株価が景気循環に追従しやすい。しかし、2013年以降の世界的な景気回復局面において、日野自動車の株価はアベノミクスの初動を除けば株価は振るわない。これは2013年をピークに日野自動車の利益水準が停滞していることに起因しており、株価が。日野自動車は日本市場に売上高の約67%を依存している事情から、為替動向や海外動向によって株価が極端に上下変動することは滅多にない。強いて言えば、海外市場の売上高の大半がアジア地域に集中している事情から、アジア諸国の新興国通貨の為替レートの変動が材料視されて株価変動することが多いか。

■過去の株価推移
2013年における株価上昇が顕著である。2012年9月の時点では景気低迷と円高圧力によって株価500円前後で推移していたが、2012年12月に第二次安倍内閣が発足したことで株高局面が到来すると2013年5月には株価1752円にまで急騰している。この株価上昇は相場環境の好転だけに支えられたものではなく、①2011年以降は世界的な商用車需要の回復による販売台数の増加が見られた点、②決算予想の前提であった1ドル90円よりも遥かに円安が進んだことで業績の上振れが期待された点、などの要因に支えられていた。日野自動車の株価が1000円台を上回るのは1996年以来のことであり、実に17年ぶりの大台回復であった。

日経平均株価との相関性は高い

■日経平均株価との相関性
日野自動車の株価と日経平均株価の相関性は高めである(2007年4月から2020年3月の相関係数:0.71)。日野自動車は景気循環に業績が連動しやすい自動車セクターに属することから、景気循環的な推移を描きやすい日経平均株価との相関性が高くなりやすい。2013年以降は日野自動車の株価が下落傾向にあるとはいえ、新車販売台数が景気循環に連動する性質には変わりないことから日経平均株価と連動した推移を描きやすい点には変わりない。

■過去の日経平均株価との相関性
2017年以降は日経平均株価の堅調な推移を描く局面において日野自動車の株価が下落する局面が散見される。これは、最近の日経平均株価が指数寄与度の大きいエクセレントカンパニーの躍進に支えられた上昇を遂げることが多く、景気循環に素直に連動した推移を遂げにくくなっている点に起因している。2018年は米中貿易摩擦に端を発した景気減速への根強い懸念によって自動車セクターなどの景気動向に敏感な業種は株価が冴えない局面が多く、明暗が分かれる結果となった。また、2018年8月に発生したトルコリラショックから波及した新興国通貨の下落局面はアジア市場において高いシェアを誇る日野自動車の業績悪化を想起させる不安材料として重荷となった。

業績の推移

売上高は長期的な成長傾向が継続

■売上高の特性
2009年から売上高の増加傾向が続いており、直近の2019年には売上高1.81兆円に到達している。2003年に日野自動車は売上高1兆円に初めて到達したが、同年から約15年をかけて売上高2兆円規模にまで拡大を果たした。日野自動車の売上高が成長を続けている理由は、①成熟市場である日本市場において販売台数の増加が続いている点、②アジア地域において中大型トラックでシェア首位級に到達した点、②商用車の機能向上が続いたことで単価上昇が続いている点、に起因している。特に、日本市場とアジア市場で販売台数が増加したことで、日野自動車の販売台数は10.9万台(2007年)から20.3万台(2018年)に倍増しており、これが売上高の増加に貢献している。日野自動車は日本市場に売上高の約67%を依存していることから、日本経済が安定している期間においては業績が極端に落ち込むことは少ない。これは海外展開が進んだ他の日系自動車メーカーとは異なる日野自動車ならではの特性であろう。

■過去の売上高推移
2007年から2009年の期間において、売上高が1.36兆円(2007年)から1.02兆円(2009年)にまで急落している。同期間における売上高の減少はリーマンショックに端を発した景気後退局面における商用車の販売不振に起因している。日野自動車は商用車が主体という事業構造が災いして景気後退局面における販売縮小が起こりやすく、リーマンショックに端を発した景気後退局面においては商用車が世界的に販売不振に陥ったことで、売上高が1.36兆円(2007年)から1.02兆円(2009年)にまで減少する状況に陥っている。逆に、景気回復局面においては売上高が安定しやすく、2013年以降は売上高を安定的に拡大させることに成功している。ただし、日野自動車は売上高の約65%が日本市場に依存する事情から、日本経済が安定している時期であれば同業他社よりも売上高の下落は限定的に留まりやすい。実際、2016年には世界的な景気減速によって海外市場における販売縮小に直面したが、日本市場が堅調な拡大を続けたことで売上高の減少は限定的であった。

営業利益は2013年以降は冴えない

■営業利益の特性
営業利益は▲194億円(2008年)から1121億円(2013年)のレンジで推移しているが、2013年以降は営業利益の減少が続いている。過去10年間で日野自動車の売上高は1.02兆円(2009年)から1.81兆円(2019年)にまで増加したが、営業利益は2013年から低迷が続いており、売上高の増加が営業利益の増加に結び付いていない。この営業利益の減少は、①原材料価格の高騰、②新興国通貨の下落、③研究開発費および減価償却費の増大、に起因している。とりわけ、自動車セクターにおける急激な技術進歩に追従する為の研究開発費の増大や古河工場などの新鋭工場への設備投資による減価償却費の増加は著しい。特に研究開発費は395億円(2007年)から605億円(2009年)まで増加しており、企業規模が相対的に小さい日野自動車にとって重荷となっている。とはいえ、①商用車を取り巻く諸々の法規制への対応、②先進技術領域における急激な技術進歩、を踏まえると積極投資を緩めることは日野自動車の競争力を削ぐことになりかねないことから、積極投資を緩めることができない事情がある。

■過去の営業利益推移
2013年からは営業利益の増加が失速して下落基調へ転換している。この営業利益の減少は、①原材料価格の高騰、②新興国通貨の下落、③研究開発費および減価償却費の増大、に起因している。とりわけ、自動車セクターにおける急激な技術進歩に追従する為の研究開発費の増大や古河工場などの新鋭工場への設備投資による減価償却費の増加は著しい。特に研究開発費は395億円(2007年)から605億円(2019年)まで増加しており、企業規模が相対的に小さい日野自動車にとって重荷となっている。商用車を取り巻く環境規制の強化に対応しながら、先進技術領域において激化する同業他社との競争を勝ち抜く為には積極投資を緩めることができない。

売上高の構成

自動車事業(100%)

■事業内容
自動車事業には、トラック・バス・産業用ディーゼルエンジンの製造販売およびトヨタ自動車の乗用車の委託生産が含まれる。代表的な製品は中大型トラックであり、主要車種には「プロフィア」「レンジャー」「デュトロ」などがある。日野自動車は主要部品のモジュール化による価格低減と納期短縮を得意としており、顧客から要求される多種多様なバリエーションを迅速に生産する体制を整えている。2018年には新鋭工場となる古河工場を新設して中大型トラックの生産を移管したことで、従来の日野工場と比較して大幅な納期短縮を果たした。日野自動車のトラックは世界90カ国以上に輸出されており、特に東南アジアとオセアニア地域における中大型トラックのシェアは圧倒的であり、いすゞ自動車と共に寡占体制を敷いている状況にある。もっとも、欧州地域や米州地域における存在感は薄く、中大型トラックにおける世界シェアは上位10社にも入らない。1968年からトヨタ自動車から乗用車の生産を受託しており、過去には「パプリカ」「ハイラックス」「カリーナ」などの小型車種を生産してきた。現在では大型車種の受託生産が中心であり、「ランドクルーザープラド」「FJクルーザー」「トヨエース」などの受託生産を羽村工場が担っている。

■過去の売上高分析
自動車事業の売上高は1.02兆円(2009年)から1.98兆円(2018年)のレンジで推移しており、過去10年間で売上高が倍増している。成熟市場の日本市場に売上高の約67%を依存しながら売上高の増加が継続しているのは、中大型トラックの新車価格の高騰が長期的に続いている点に起因している。なお、中大型トラックの新車価格の高騰は、①環境規制の強化への対応、②燃費性能の追求、③原材料価格の高騰、などに起因している。売上高の大半を依存する日本市場の販売動向に業績を左右されやすいが、日本市場は買替需要が主体の成熟市場であることから売上高の上下変動は緩やかである。過去10年間の日野自動車の売上高の拡大に貢献したのはアジア市場における拡販であり、同市場における売上高は1925億円(2008年)から4174億円(2018年)にまで拡大している。特にタイとインドネシアにおける拡販は日野自動車の成長ドライバーとしての機能を果たしている。更に、過去10年間で北米市場におけるディーラー網の開拓が進んだことで、その他市場における売上高が796億円(2008年)から2623億円(2018年)にまで増加している。総じて、自動車事業の売上高の長期的な成長は、①売上高の大半を依存する日本市場の堅実な成長、②アジア市場およびその他市場における拡販、が相乗したことで起こったと評価できよう。ただし、商用車が主体という事業構造が災いして景気後退局面における販売縮小が起こりやすい点には注意を要する。

■将来の売上高予測
減少を見込む。COVID-19の流行による経済停滞が商用車を所有する企業の業績に打撃となった点が痛い。直近の2020年第1四半期において自動車事業の売上高は前年比▲32.7%の下落となっており、COVID-19の流行による経済停滞の影響は甚大であった。日野自動車の売上高を依存する日本市場は諸外国と比べて経済停滞が相対的には緩やかであったことから、他の日系自動車メーカーと比べると健闘した部類ではあるが、歴史的な売上高の減少であることには変わりない。

営業利益の構成

自動車事業(100%)

■過去の営業利益分析
四輪事業の営業利益は▲194億円(2008年)から1121億円(2013年)のレンジで推移している。過去10年間においてはリーマンショック直後に営業損失194億円(2008年)を除けば、営業利益を確保することに概ね成功している。特に、2009年から2013年の期間においては、アジア市場の拡販と為替レートの円高推移によって営業利益1121億円にまで拡大した。反面、2013年以降は営業利益の減少が続いており、直近では営業利益548億円(2019年)にまで半減している。特に日本市場における営業利益が減少しているが、これは研究開発費が日本市場に含まれていることに起因している為、日本市場の営業利益の減少幅のうち〇億円程度は研究開発費の増加によると見てよい。本来であればアジア市場の拡販によって営業利益を拡大させる局面であるが、為替レートの円高推移が災いしてアジア市場の利益水準が停滞している。2012年以降のアジア市場の営業利益は418億円(2012年)から347億円(2019年)と増加に乏しく、営業利益を拡大させるドライバーが不在の状況が続いている。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の流行による販売台数の急減と新興国通貨の下落が重荷となる。とりわけ、2020年第1四半期には新車販売台数が前年比▲33.7%にまで下落したことで営業損失106億円を計上する事態に陥っている。とはいえ、2020年第2四半期以降は極端な経済停滞が緩和したことで利益水準はやや緩和しつつあり、最悪期は脱した公算が高い。また、長年に渡って重荷となってきた研究開発費を抑制する手段として積極的な業務提携が進行している点には期待したい。2019年には独フォルクスワーゲングループとの業務提携(部品調達および先進技術開発)が開始された他、2020年には中BYD(商用EV開発)との業務提携が開始された。こうした業務提携の活用によって研究開発費を抑制しながら競争激化に追随する目途が立ちつつある点は、過去の業績悪化の要因を解消できる明るい兆しである。

財務の健全性

手元資金は明白に少ない水準

■手元資金の特性
手元資金は過去10年間に渡って300億円前後の水準で推移しているが、2017年以降は概ね400億円規模にまで増加している。売上高が年間1.8兆円規模と考えると手元資金としては1500億円が目安となる為、明白に少ない水準である。日野自動車の手元資金は月商0.5か月分にも満たない水準であり、手元資金を潤沢に確保する傾向が強い日系自動車メーカーとしては異色の水準である。売上債権が買掛債務を大幅に上回る状況が定着しているのであれば、売上債権からのキャッシュフローによる資金繰りの安定化も望めるが、日野自動車はそういった事情はない。事業内容が共通するいすゞ自動車の手元資金が3000億円規模であることを踏まえれば、日野自動車の手元資金の薄さはやや気がかりな水準である。

■過去の手元資金分析
2013年に手元資金が急増して575億円に到達している。この手元資金の増加は、①業績好調によって営業キャッシュフローが1429億円の増加となった点、②業績好調ながら積極投資には慎重な姿勢を貫いていた点、に起因している。同年の日野自動車は世界的な景気回復局面の到来によって商用車需要が急激に回復したことで業績好調を謳歌していた経緯があり、これが手元資金の増加に大いに貢献した。翌年の2014年には手元資金は300億円水準へと回帰しているが、これは、①日野自動車の利益水準の拡大が腰折れして営業キャッシュフローが細った点、②法人税の支払いや棚卸資産の増加が営業キャッシュフローを減らした点、③積極投資の姿勢をやや強めたことで投資キャッシュフローが増大した点、に起因している。

自己資本比率は業界上位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率はリーマンショックに端を発した景気後退では24.7%(2011年)にまで下落したが、直近では42.5%に到達している。同業他社と比較すると、トヨタ自動車39.0%・日産自動車23.9%・本田技研工業39.2%・いすゞ自動車44.3%・三菱自動車工業39.9%となっており、業界上位の水準である。自動車メーカーは巨額の投資資金を借入金で賄うことが多い背景から自己資本比率が停滞しやすい傾向があるが、日野自動車の自己資本比率は高水準を維持している。自動車セクターは景気後退局面に業績不振に陥りやすいことから自己資本比率を厚く確保すべきであり、特に商用車メーカーは景気動向による急激な業績悪化への耐性を保つ必要がある。日野自動車の自己資本比率は商用車メーカーとしての事業継続に必要な財務健全性を担保できる水準にあると見てよい。

■過去の自己資本比率分析
2007年から2011年の期間において自己資本比率の減少が継続している。同期間において日野自動車の自己資本比率は、33.3%(2007年)から24.7%(2011年)にまで低落しており、実に4年間に渡って自己資本比率の低落に苦しんだ。この自己資本比率の低落はリーマンショックに端を発した景気後退局面における業績不振に起因している。特に2008年には商用車需要の急激な冷え込みとトヨタ自動車からの受託生産が急減したことで純損失618億円にまで転落した他、急激な株価下落による有価証券評価差額金が▲137億円となったことで自己資本比率の低落が起こった。特にリーマンショック以降の企業活動の停滞においては、商用車需要の冷え込みが世界的に長期化したことで日野自動車にとっては苦しい状況であった。

株価の割安感

BPSは増加傾向が安定的に継続

■BPSの特性
BPSは2010年以降は右肩上がりで推移しており、安定的な増加傾向が継続している。最近は利益水準の悪化が目立つとはいえ、日野自動車は過去10年以上に渡って安定的に純利益を確保したことで利益剰余金の蓄積が進んでおり、BPSは安定的に拡大している。ただし、日野自動車は海外拠点などを含む在外子会社への投資額が大きい為、在外子会社の評価額が減少する円高局面では純資産が減少しやすい。日野自動車が得意とするアジア諸国の為替レートにはBPSを特に左右されやすく、2015年以降に進んだ新興国通貨の下落によってBPSが下押しされやすい点には注意を要する。実際、直近の2019年には為替換算調整勘定が▲146億円(2019年)に低落して純資産を圧迫しており、BPSの増加ペースを失速させる要因となっている。もっとも、海外展開が進んだ他の日系自動車メーカーと比べれば日野自動車の海外展開は限定的であることから、為替変動によるBPSの上下変動は相対的に見れば少ない方である。

■過去のBPS分析
2011年から2014年の期間におけるBPSの急増が顕著である。同期間において日野自動車のBPSは366円(2011年)から730円(2014年)へと増加しており、約3年間でBPSが約2倍に増加する顕著な増加となっている。このBPSの増加は、①同期間の日野自動車が利益水準の拡大が続いた点、②アベノミクス以降の株高局面による有価証券評価差額金が増加した点、に起因している。特に同期間はリーマンショックから低迷が続いた商用車需要の回復が顕著であったことが業績の追い風となっており、日野自動車の利益剰余金は664億円(2011年)から2289億円(2014年)にまで増加した。事業好調による純資産の増加に加えて、アベノミクス以降の株高局面によって日野自動車が保有する有価証券の評価額が拡大したことでBPSの増加した構図である。

PBRは2009年以来の割安圏に下落

■PBRの特性
PBRは長期的に0.62倍(2019年)から2.58倍(2013年)のレンジで推移しており、2018年以降のPBRの低落が顕著である。かつての日野自動車は成長企業の色彩が強かったことからPBR2.0倍前後の高水準で推移しやすい性質があったが、2013年以降は業績拡大が鈍化したことでPBR1.4倍前後の水準に留まりやすくなっている。実際、2013年から売上高の成長が停滞している通り、日野自動車の事業構造は成長ドライバーに乏しい状況に陥っていると見る向きが強い。これは、①成長性に乏しい日本市場に売上高の半分以上を依存度する状況を脱していない点、②本来は業績成長を牽引する筈だったアジア市場の売上高が停滞している点、に起因している。過去10年間において日野自動車の販売台数は10.9万台(2007年)から20.3万台(2018年)に倍増したとはいえ、ここから更に日本市場の販売台数が拡大するとは考え難く、かといってアジア市場の成長も停滞している状況である。過去のPBRの水準に回帰する為には、改めて日野自動車の成長ドライバーを株式投資家に示す必要があるだろう。

■過去のPBR分析
2019年にPBR0.62倍にまで急落している点が目につく。このPBRの低落は、COVID-19の流行によって日野自動車の株価が急落した点に起因する。COVID-19の流行による経済停滞によって日野自動車の主力製品であるトラックやバスなどの商用車需要の蒸発が特に懸念されたことが株価下落を助長した結果、PBRが歴史的な割安圏にまで低落した構図である。大型トラック需要は経済停滞の最中においても物流が維持されたことで前年比▲10.5%の減少に留まったが、バスは観光需要の蒸発によってバス会社が打撃を受けたことで前年比▲33.3%の減少に見舞われており、特に打撃が大きかった。もっとも、日野自動車の売上高を依存する日本市場は諸外国と比べて経済停滞が相対的には緩やかであり、極端な割安圏までの株価下落は回避されている。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。日野自動車は配当政策として「財務体質の強化を図りつつ、毎期の業績、新規投資等を勘案しながら、連結配当性向30%を目安に安定的・継続的に行うよう努める」を掲げており、実際に配当金は配当政策に従って推移している。日野自動車が配当性向30%を目標として明言したのは2017年以降であるが、実際には過去10年間に渡って配当性向30%前後の水準が定着している。そのため、配当金は素直に業績と連動する推移を長期的に描いている。業績連動型であるにも関わらず継続配当への意思は強く、2008年に純損失618億円を計上した際にも年間2円を支払うことで無配転落は回避している。

■過去の配当金分析
2014年以降は配当金の減少傾向が続いている。この配当利回りの減少は、2013年以降の日野自動車の利益体質が悪化して純利益314億円にまで下落したことに起因している。この利益体質の悪化は、①原材料価格の高騰、②新興国通貨の下落、③研究開発費および減価償却費の増大、に起因している。他の日系自動車メーカーは多少の業績悪化では減配を回避する向きが強いが、日野自動車は業績変動をそのまま配当金に反映する性質が強い。特に2016年には38円(2015年)から26円(2016年)にまで減配されているが、これは原材料価格の高騰と為替レートの円高推移による業績悪化による。良くも悪くも業績動向を素直に配当金に反映する性格が強い為、業績の先行きをよく検討する必要があろう。

配当利回りは過去最高水準に到達

■配当利回りの特性
配当利回りは0.5%(2009年)から3.4%(2019年)のレンジで推移しており、配当利回りの増加傾向が長期的に続いている。この配当利回りの増加は、①売上高の規模拡大によって利益水準が底上げされた点、②日野自動車の株価が割安圏にまで下落した点、に起因している。特に業績成長期への期待が剥落したことによる株価下落は配当利回りの向上に貢献しており、株価下落による配当利回りの増加が減配による配当利回りの減少を実質的に相殺している構図となっている。過去10年間で日野自動車の配当利回りの性格は、成熟企業としての性質が強い状態へと移行したと考えることができるだろう。

■過去の配当利回り分析
2017年以降の配当利回りの上昇が顕著である。2017年以前は配当利回り1%未満での推移が定着していたが、2017年以降に上昇傾向が顕著となった結果、直近では配当利回り3.04%(2019年)に到達している。この配当利回りの上昇はスズキの利益水準の拡大によるものであり、株主還元を特段に強化した結果ではない。強いて言えば、2017年以降に業績減退が続く中でも減配を回避したことが配当利回りの維持に貢献した側面はあるが、同業他社と比較して配当性向が低いことには変わりない。配当性向を抑制しながらも利益水準の拡大によって配当利回りが上昇している点を踏まえると、配当利回りの上昇は健全である。

総合評価

目標株価

780円

当面は景気後退局面における商用車需要の低迷に苦しむ公算が高いとはいえ、日野自動車の株価がPBR1.0倍を割り込む事態は歴史的に見てもかなり珍しい状況である。既に商用車需要は緩やかな回復基調を示しており、リーマンショック以降に記録した極端な株価低迷は起こり得ないだろう。2011年以降の景気回復局面において蓄積した利益剰余金によってBPSが増大している点を踏まえれば、現在の株価水準は魅力的である。商用車需要の減少が既に底打ちしたとの想定に立てば、この程度の株価水準までは投資妙味があるか。

投資判断

中立

現在の日野自動車の事業環境はCOVID-19の流行に端を発した景気後退による商用車需要の低迷が懸念されるとはいえ、日本市場への依存度が高かったことが幸いして他の自動車メーカーと比べれば相対的には悪くない状況にある。リーマンショックに端を発した景気後退とは異なり、長期的な景気低迷が続く可能性が後退した状況にあるとすれば商用車需要は緩やかな回復に転じる公算が高い。寧ろ、日野自動車への投資判断を考えるにあたっては、2013年以降の利益水準の低迷を脱却する目途があるかが重要であろう。日野自動車の利益水準が低迷している要因は、①原材料価格の高騰、②新興国通貨の下落、③研究開発費および減価償却費の増大、である。この点、日野自動車は積極的な業務提携に活路を求めており、①世界大手の独フォルクスワーゲン(部品調達および先進技術開発)や中BYD(商用EV開発)との業務提携、②異業種のHacobu(コネクテッド技術)やトランコム(先進技術)との業務提携、を進めている。とりわけ、商用車分野で世界大手の一角を占める独フォルクスワーゲングループとの提携は、日野自動車が苦しんできた原材料価格と研究開発費の高騰を抑制する期待を背負っている。社外組織との積極的な業務提携は、企業規模が大きくない日野自動車が競争力と収益力を両立する為に一定の役割を果たすことが期待できよう。とはいえ、現在は業務提携の成果が表面化しておらず、長年に渡ってトヨタグループと蜜月関係を構築してきた日野自動車が社外組織との業務提携を結実させうるかは未知数である。日野自動車への投資判断にあたっては、2013年以降の業績停滞と商用車需要の回復に一定の時間を要する点を加味しつつ、長年の利益水準の停滞を打破する光明が見いだせる点を評価して、中立に設定した。