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企業レポート

河西工業(7256)の分析|主要顧客の日産自動車の業績不振が直撃

基本情報

河西工業(7256)は、神奈川県高座郡に本社を置く自動車部品メーカーである。源流企業は1912年に東京都八王子市で創業された織物工場であり、戦前は繊維業を営む企業であった。自動車部品の製造に参入したのは戦後であり、1949年にドア用木製品の製造を開始したことを発端に自動車部品メーカーへと業態を転換した経緯がある。現在は自動車の内装部品の企画から製造までを一貫して担う内装サプライヤーとしての地位を築いており、①トリム部品(キャビントリム・ラゲッジトリムなど)、②防音部品(インシュレーターなど)、③車体部品(エンジンアンダーカバー・フェンダーカバーなど)を主力製品としている。歴史的に日産自動車および本田技研工業との関係が深く、特に日産自動車とは河西工業の売上高の約60%を依存する深い関係にある。

目次

株価の推移

株価は2014年以前の水準に回帰

■株価の特性
株価は2007年以降は151円から1987円のレンジで推移しており、2008年から2017年の期間で株価10倍を達成している。河西工業は2000年代初頭には売上高800億円規模の企業であったが、2000年以降に主要顧客である日産自動車と本田技研工業が新車販売台数を増加させたことを追い風に、2015年には売上高2379億円にまで事業規模を拡大させた経緯がある。特にリーマンショックによって世界新車販売台数が急減した2009年以降は新興国における新車需要の拡大を追い風として、河西工業は右肩上がりの成長を描いたことで株価上昇を満喫した。反面、主要顧客の日産自動車が業績不振に陥った2017年以降は急激な株価下落に見舞われ、2014年以前の株価水準にまで回帰することとなった。河西工業は売上高の約60%を日産自動車に依存している為、良くも悪くも同社の業績動向に影響されやすい点には注意したい。

■過去の株価推移
2013年から2018年の期間で株価10倍を達成した反面、2018年以降は急激な株価下落に見舞われている。河西工業の株価は主要顧客の日産自動車の業績拡大を追い風として株価上昇を継続したが、2018年以降に日産自動車の業績不振が表面化すると河西工業は日産自動車への依存度の高さが嫌気されて株価下落が継続する事態となった。実際、2018年以降の河西工業は日産自動車の業績不振に巻き込まれる形で利益水準が急激に悪化した為、株価の反応は正しかったと言えよう。尚、2016年に急激な株価下落に見舞われているのは同年に発生したチャイナショックの影響である。日産自動車の世界新車販売台数の約30%が中国市場に由来しており、2016年に中国における景気後退リスクが急激に高まった際に日産自動車と河西工業への業績不安が高まったことで株価が急落した。尤も、2017年には中国における景気後退リスクが後退したことで再び株価上昇を果たしている。

日経平均株価との相関性は高い

■日経平均株価との相関性
河西工業の株価と日経平均株価の相関性は高い(2007年4月から2020年3月の相関係数:0.78)。河西工業は景気循環に業績が連動しやすい自動車セクターに属することから、景気循環的な推移を描きやすい日経平均株価との相関性が高くなりやすい。景気後退局面においては自動車などの耐久消費財の買い時判断が大幅に悪化する為、景気後退局面では否が応でも業績低下を強いられる為、景気循環的な推移を描く構図である。尤も、過去10年間において河西工業は日産自動車の世界新車販売台数の増加を追い風に業績拡大とBPS増加が継続したことで、日経平均株価を大きく上回る株価上昇を遂げた。

■過去の日経平均株価との相関性
2017年以降は河西工業の株価が急激に下落したことで、日経平均株価との相関性が低下している点が顕著である。この相関性の低下を招いた原因には、①2017年に発覚した日産自動車の完成検査問題、②2018年に発生した日産自動車のカルロス・ゴーン会長の逮捕、③2018年以降の米中貿易摩擦による景気減速、などがある。2017年以降、日産自動車の経営問題と業績不振が徐々に表面化したことで同社に売上高の約60%を依存する河西工業の将来性への疑義が高まった他、2018年以降は米中貿易摩擦の激化による景気失速が警戒されて株価下落が加速した。2020年になると、日産自動車の業績悪化が深刻化したことに加えてCOVID-19の流行による世界的な新車需要の蒸発という最悪の事業環境となったことで、更に相関性が低下する事態となった。日経平均株価が半導体セクターなどのエクセレントカンパニーに牽引されて下落が限定的だった反面、河西工業の株価はレンジを底抜けして2014年以前の水準へ回帰した結果が相関性の低下として表面化したと見てよい。

業績の推移

売上高は2000億円規模に微減

■売上高の特性
2010年から2015年の期間において急成長を継続して売上高2300億円規模に到達した反面、2016年以降は成長が鈍化して売上高2000億円に微減している。河西工業の売上高の推移を理解するには、売上高の約60%を依存する日産自動車の動向に目を向ける必要があろう。日産自動車が世界的に新車販売台数を拡大させた2009年から2015年の期間において河西工業は売上高を急拡大させた反面、日産自動車の業績が停滞を迎えた2015年以降は河西工業の売上高は停滞を迎えている。様々な自動車メーカーと取引関係を構築したメガサプライヤーであれば格別、河西工業の様に系列時代に関係を築いた自動車メーカーとの取引関係に今なお依存する自動車部品メーカーは主要取引先の動向に業績を左右されやすい点に注意を要する。

■過去の売上高推移
2007年から2009年の期間における売上高の急激な縮小が顕著である。同期間の河西工業の売上高は1448億円(2007年)から1010億円(2009年)にまで減少しており、売上高の減少率は▲30.2%に及んだ。同期間はリーマンショックに端を発した景気後退局面によって世界新車販売が7190万台(2007年)から6488万台(2009年)にまで減少した時期であった。日産自動車の販売台数は377万台(2007年)から351万台(2009年)の減少に留まっていたが、これは中国地域における新車販売台数の拡大に支えられたものであり、当時の河西工業は中国地域における事業基盤が脆弱であったことから日産自動車よりも厳しい業績低迷に陥った構図である。尤も、現在の河西工業はアジア地域における売上高が約20%を占めるにまで拡大しており、特定地域への依存度が低い事業構造への転換を果たしている。

営業利益は50億円規模まで低落

■営業利益の特性
営業利益は19億円から158億円のレンジで推移しており、上下変動の激しさが際立つ。営業利益率は好調時には7.1%に到達する反面、直近では1.9%に留まっている。主要顧客の新車販売台数の状況に利益水準が左右することは当然であるが、新型車立上にどれだけ順調に対応できるかが重要である。新型車立上の前後は生産立上に費用を要する他、混乱が発生した場合には供給責任を果たす為に航空便輸送を増発させる等の対応費用が発生して営業利益を圧迫することがある。要するに、河西工業の利益水準は、自動車メーカーの新型車立上に順調に対応した上で新型車の販売が好調に推移した場合に拡大する構図となっている。逆に、新車販売台数が低迷する状況で新型車立上が連続する場合には、利益水準が低迷する状況で先行投資を強いられることで苦しい事業運営を強いられることになる。

■過去の営業利益推移
2015年から2019年の期間において、営業利益の減少傾向が継続している点が顕著である。実際、河西工業の営業利益は163億円(2015年)から40億円(2019年)にまで減少している。この営業利益の減少は、日産自動車と河西工業それぞれに要因がある点に注意したい。2015年以降は日産自動車の業績拡大が停滞局面を迎えており、河西工業の規模拡大による利益水準の向上は果たせなくなりつつあった。更に、2017年以降は経営問題と業績不振が表面化したことで日産自動車の世界新車販売台数が577万台(2017年)から493万台(2019年)にまで減少したことで、河西工業は減産による収益悪化に見舞われた。反面、事業環境が悪化している中でも、河西工業は業績拡大に向けた積極投資を継続しており、①中国・スロバキア・モロッコにおける新会社の設立、②九州における新工場の設立、③生産技術・量産試作センターの設置、などを実施して営業利益が圧迫される結果を招いた。

売上高の構成

自動車内装部品事業(100%)

■事業内容
自動車内装部品事業には、自動車内装部品の製造販売が含まれる。河西工業は、①トリム部品(キャビントリム・ラゲッジトリムなど)、②防音部品(インシュレーターなど)、③車体部品(エンジンアンダーカバー・フェンダーカバーなど)を主力製品としている。自動車内装部品は快適性・加飾性・機能性によって自動車の商品力を左右する重要な部品であり、河西工業は内装部品の企画から製造までを一貫して担うことで主力製品である自動車内装部品の商品力を担保している。河西工業の自動車内装部品は低価格帯(マーチ・ノートなど)から高価格帯(フーガ・スカイライン・エルグランドなど)に至る幅広い車種に採用されており、車種特性に応じた柔軟な商品開発には定評がある。河西工業の自動車内装部品の製造拠点は日本・北米・欧州・アジアに展開しており、近年は各地域で日産自動車以外の自動車メーカーへの拡販に注力している。2018年にはトヨタ・ダイムラー・ルノー・海馬汽車などから受注を獲得するなど販路開拓が進んでいるが、依然として日産自動車への依存度が売上高の約60%を占める。自動車メーカーが系列サプライヤーを束ねていた時代に比べれば販路開拓が容易になったとはいえ、依然として各自動車メーカーは過去から密接な取引関係がある自動車部品メーカーを抱えている実態があり、日産自動車への依存度を引き下げることは容易ではない。

■過去の売上高分析
自動車内装部品事業の売上高は過去10年間で1010億円(2009年)から2046億円(2019年)にまで拡大している。この売上高の増加を支えたのは北米地域における売上高の増加であり、特に2009年から2015年に期間において北米地域の売上高は334億円(2009年)から1206億円(2015年)にまで急増を遂げている。同期間は北米において日産自動車の新車販売台数が106万台(2009年)から201万台(2015年)へと拡大を果たした時期であり、河西工業は販売台数の拡大を支えたアルティマなどの新型車の自動車内装部品を手掛けたことで急激に売上高を拡大することに成功した。反面、2016年以降に日産自動車の新車販売台数が停滞を迎えると河西工業の売上高は2300億円規模での停滞を迎えている。2017年以降の河西工業の売上高の成長が停滞しているが、これは日産自動車の業績不振の表面化が原因である。日産自動車の世界新車販売台数は577万台(2017年)から493万台(2019年)にまで減少しており、これが河西工業の事業環境の主たる悪化要因となっている。2019年には河西工業の売上高は微減して2046億円にまで低落したが、これは以前からの日産自動車の業績不振に加えて、COVID-19の流行による世界的に新車需要が蒸発したことに起因している。尚、2019年には独ロシュリングから独フォルクスワーゲン向けのトリム部品を生産するヴォルフスブルク工場を買収したことで、欧州地域の売上高はやや増加している。

■将来の売上高予測
減少を見込む。COVID-19の流行によって世界的に新車需要が蒸発する最悪期は既に脱したとはいえ、世界的な景気後退による新車需要の低迷は依然として色濃い。主要顧客の日産自動車は業績回復に向けた構造改革プラン「NISSAN NEXT」において今後18ヵ月間で新型車12車種を投入することを発表しており、この成否が将来の売上高を左右することになろう。2012年に日産自動車が新型車を連続投入した際には河西工業は売上高を大いに拡大させたが、当時は世界的な景気回復局面が重なったことも追い風であった。現在はCOVID-19の流行による世界的な景気後退局面の渦中にあり、必ずしも2012年の再現が起こるとは限らない点には注意を要するだろう。強いて言えば、①内装サプライヤーである河西工業は構造改革プラン「NISSAN NEXT」に謳われる電動化シフトによる影響を受けにくい点、②日産自動車が新型車の商品力を向上するにあたっては自動車内装部品が発揮する快適性・加飾性・機能性が重要な役割を果たす点、は注目に値するか。

営業利益の構成

自動車内装部品事業(100%)

■過去の営業利益分析
自動車内装部品事業の営業利益は19億円から163億円のレンジで推移しており、上下変動が激しい推移となっている。過去の推移を観察すると、売上高の増減に営業利益が必ずしも連動しない点が特徴的である。河西工業の売上高は2009年から2015年の期間において右肩上がりの増加が続いたが、営業利益が増加傾向に転じたのは2013年から2015年の期間である。営業利益の増加に時間的なギャップがあるのは、2012年前後に日産自動車が北米地域でアルティマ・ヴァーサ・パスファインダーなどの新型車の立上を連続させたことに起因している。相次ぐ新車立上によって河西工業をはじめとする自動車部品メーカーの供給体制が混乱に陥り、供給責任を貫徹する為に北米地域への航空便輸送を増発させたことが減益要因となった構図である。反面、2014年以降は営業利益の増加が継続しているが、これは、①新型車の立上が一巡して生産が安定化したこと、②世界的な景気回復局面の到来によって新車販売台数が増加したこと、に起因している。2015年からはアジア地域での事業拡大に成功しており、現在の河西工業は営業利益の大半をアジア地域に依存している状況となっている。尤も、2018年以降は日産自動車の業績不振に巻き込まれる形で営業利益が減少傾向に転じた他、2019年にはCOVID-19の流行によって世界的に新車需要が蒸発したことでリーマンショック直後の2009年と同水準まで営業利益が縮小した。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の流行による新車需要の蒸発という最悪の事態からは緩やかな回復傾向に転じたが、依然として景気後退局面における世界新車販売台数の低迷が続くことに加えて、日産自動車の新型車の連続立上が重荷となる。主要顧客の日産自動車は業績回復に向けた構造改革プラン「NISSAN NEXT」において今後18ヵ月間で新型車12車種を投入することを発表しているが、これに対応するための先行投資が重荷となりそう。新型車立上の前後は生産立上に費用を要する他、混乱が発生した場合には供給責任を果たす為に航空便輸送を増発させる等の対応費用が発生して営業利益を圧迫することがある。構造改革プラン「NISSAN NEXT」による新型車立上を遂行しなければ日産自動車および河西工業の業績回復は成し得ない反面、新型車立上による費用が目先の営業利益を圧迫しうる状況にあると見てよい。構造改革プラン「NISSAN NEXT」による新型車立上が成功を果たせば2013年から2015年に営業利益の急激な拡大を満喫した時期の再現となろうが、目先は厳しい事業環境が継続しそう。

財務の健全性

手元資金は標準的な水準

■手元資金の特性
手元資金は2015年以前は100億円未満の水準で推移してきたが、2015年以降は150億円以上の水準に上昇している。売上高が年間2000億円規模と考えると手元資金としては170億円が目安となる為、標準的な水準である。河西工業の貸借対照表を観察すると、直近では売上債権253億円に対して買掛債務223億円となっており、売上債権対買入債務比率が約113%の水準で推移している。売上債権と買掛債務がほぼ互角の水準で推移していることから、買掛債務の返済によって手元資金が減少に見舞われる公算は低い反面、売上債権の回収による手元資金の増加を期待できる水準でもない。河西工業の資金繰りの健全性は凡庸な水準と判断できよう。

■過去の手元資金分析
2014年以降の手元資金の急増が際立つ。10億円(2013年)から212億円(2019年)へと増加しており、過去10年間においては特に顕著な増加である。特に2013年の河西工業の手元資金は10億円に留まっており、当時は売上高1800億円規模であったことを踏まえると極めて不安の残る水準であった。尤も、2014年以前の手元資金の低迷は時期によって原因が異なる点には注意を要する。2009年から2011年の手元資金の低迷は世界的な新車販売台数の減少による営業キャッシュフローの縮小が原因であった反面、2012年から2013年の手元資金の低迷は新型車の立上に向けて有形固定資産への積極投資に年間120億円規模を充てていたことに起因している。この積極投資が成功を収めたことで2014年以降は営業利益の急激な拡大が起こり、2014年以降に手元資金が右肩上がりで推移した構図である。

自己資本比率は業界下位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は過去10年間で増加傾向が継続した結果、直近では37.2%に到達している。同業他社と比較すると、トヨタ紡織37.3%・テイ・エステック74.5%・タチエス52.7%・共和レザー63.1%となっており、業界下位の水準である。自動車部品メーカーは景気動向に業績を左右されやすいことに加えて、主要顧客の自動車メーカーの動向次第で事業環境が急変しうる。河西工業の自己資本比率はトヨタ紡織と互角ではあるが、同社は売上高1.4兆円規模の企業規模である。河西工業が売上高2000億円規模の企業規模であることを考慮すると、事業環境が暗転した場合には不安が残る自己資本比率であることは否めない。

■過去の自己資本比率分析
2008年から2017年の期間において河西工業の自己資本比率は右肩上がりの上昇を続けたが、2018年以降は下落に転じている。2008年から2017年の期間においては純利益を安定的に確保して利益剰余金を拡大させつつ、有利子負債は250億円規模を維持したことで自己資本比率は拡大が続いた。反面、2018年以降は有利子負債を増加したことで自己資本比率が低下している。2018年は純利益45億円を確保したことによる純資産の増加で有利子負債の増加が相殺されたが、2020年にCOVID-19の流行で世界的に新車需要が蒸発すると、河西工業の自己資本比率は37.2%にまで低下した。これは、①事業継続を目的に短期借入金による資金調達を実行した点、②純損失20億円を計上したことで純資産が減少した点、に起因している。

株価の割安感

BPSは1400円前後で停滞

■BPSの特性
BPSは2008年以降は右肩上がりで推移しており、安定的な拡大傾向が継続している。リーマンショックやCOVID-19の流行などに端を発した景気後退局面を除けば、河西工業は純利益を安定的に確保して利益剰余金を増加させており、これがBPSの推移に表面化している。河西工業の純資産は152億円(2008年)から649億円(2019年)にまで増加しており、これは主に利益剰余金の増加に起因する。河西工業の利益水準は77億円(2008年)から485億円(2019年)にまで増加しており、日産自動車が世界的に新車販売台数を拡大させた時期に大いに恩恵を受ける特性が読み解ける。河西工業は海外売上高比率が約70%に及ぶグローバル企業であり、海外に在外子会社および製造拠点を多く保有する為、円安局面では為替換算調整勘定の増加によって純資産が増加しやすい反面、円高局面では為替換算調整勘定の減少によって純資産が減少しやすい。円高局面が到来した場合にはBPSが縮小しやすい点には注意を要する。

■過去のBPS分析
2008年から2018年の期間におけるBPSの拡大が急激である反面、2019年にはBPSが減少に転じている。日産自動車の経営問題と業績不振は2017年から継続しているとはいえ、2019年はCOVID-19の流行による世界的な新車販売台数の減少に見舞われたことで河西工業は純損失20億円に転落しており、純資産が減少に転じたことがBPSに表面化した。河西工業の中国地域における製造拠点はCOVID-19の発生地である武漢に立地しており、操業影響は甚大であった。更に同年は、①1ドル105円前後の円高基調が続いたことによる為替換算調整勘定▲5億円、②COVID-19の流行を警戒した株安局面による有価証券評価差額金▲9.5億円、なども純資産への下方圧力としてBPSの減少を助長している。尤も、2020年にはCOVID-19の流行による操業影響が更に拡大した為、BPSの減少は未だ底打っていない公算が高いだろう。

PBRは2016年から急激に低下

■PBRの特性
PBRは長期的に0.36倍から1.12倍のレンジで推移しているが、長期的な下落傾向が継続している。2018年以前は0.87倍から1.12倍のレンジで安定していたが、2018年以降に日産自動車の業績不振が表面化したことでレンジが底抜けして0.36倍までの低落している。河西工業は売上高の約60%を日産自動車に依存している為、同社の業績動向が株式価値に直結することが読み解けるだろう。河西工業の株価は2008年から2017年の期間で株価10倍を達成したが、同期間にPBRのレンジが変化していないことを踏まえればBPSが拡大したことが単純に株価に反映されたに過ぎないことが理解できるだろう。

■過去のPBR分析
2016年からPBRが下落傾向に転換している点が顕著である。河西工業のPBRが下落した原因は、①河西工業の業績拡大が停滞して利益水準の減少が表面化した点、②主要顧客の日産自動車の業績不振が徐々に表面化した点、③主要顧客の日産自動車において経営問題が多発したことで不安が高まった点、が原因である。特に日産自動車のカルロス・ゴーン会長が逮捕された翌日の2018年11月20日には河西工業の株価も連れ安となってPBRが低下しており、日産自動車の動向がそのまま河西工業の株式価値に反射する性質が見え透く。強いて言えば、2016年からPBRの下落傾向が継続する渦中にあっても2017年12月には世界的な株高局面の到来によって再びPBR1.0倍を上回る時期が一時的に発生したが、2018年から日産自動車に業績不振と経営問題が深刻化したことでPBRは早々に下落傾向へと回帰してしまった。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。河西工業は配当政策として「利益配分については、安定的な配当の継続を基本としながら、今後の業績及び配当性向等を総合的に勘案し、株主への利益還元に努める」を掲げており、実際に配当金は概ね業績に連動して推移している。2013年から2016年の期間で河西工業の利益水準が増加傾向が継続したことで、配当金の増加が続いた構図である。河西工業は長期ビジョン「Kasai Realize 10」で売上高3000億円までの成長を目標としており、依然として株主還元よりも成長投資に注力している状況が続いている。実際、2016年以降の河西工業の投資案件を見ると、①中国・スロバキア・モロッコにおける新会社の設立、②九州における新工場の設立、③生産技術・量産試作センターの設置、などがある。強気の成長投資を継続しており、株主還元を重視する成熟企業の性質は希薄である。

■過去の配当金分析
2012年から2018年の期間において河西工業の配当金は右肩上がりの増配が続いて年間36円に到達したが、2018年以降は減少傾向に転換している。実際には河西工業の利益水準は2016年を頂点として減少傾向に転換したが、将来的な業績拡大を見越して増配を継続していた。反面、2019年には日産自動車の業績不振が深刻化したことで将来的な業績拡大が見通せなくなったことで減配に転じた。2020年には日産自動車の業績不振とCOVID-19の流行という最悪の事業環境に転換したことで、2020年の配当予想を無配とした(2020年8月5日)。2009年にリーマンショックによる世界的な新車販売台数の減少に苦しんだ時期すら無配転落していない点を踏まえれば、現在の河西工業の事業環境の厳しさが理解できよう。

配当利回りは減配を織り込み

■配当利回りの特性
配当利回りは1.49%から4.93%のレンジで推移しており、特に2018年以降は急激に増加傾向している。2012年から2018年の期間で、河西工業は配当金を年間9円(2012年)から年間36円(2018年)へと増加させたが、河西工業の株価の上昇傾向が継続したことで配当利回りは精々2%台に留まってきた。反面、2018年以降は日産自動車の経営問題と業績不振が表面化したことで河西工業の株価が下落傾向に転換したことで配当利回りは上昇傾向へと転換した。河西工業の配当利回りは河西工業の業績と日産自動車の動向に連動しやすい性質であると見てよい。リーマンショックに端を発した景気後退局面を含めて、過去10年間に渡って無配転落を回避してきた点は評価できるか。

■過去の配当利回り分析
2018年以降に配当利回り4.93%前後の高水準にまで急激な上昇を遂げている点が顕著である。同期間において、河西工業の配当金こそ年間36円(2018年)から年間27円(2019年)への減少に留まった反面、株価は1300円台(2018年4月)から500円台(2019年4月)にまで低落しており、これが配当利回りの急上昇を招いた。河西工業の配当利回りは直近では4.93%に到達したが、2020年の配当予想を無配とした(2020年8月5日)ことで配当利回り0%へと転落する公算が高い点には注意を要する。2018年以降、将来的な減配を織り込んで配当利回りが急激に上昇した結果が表面化したと言えよう。

総合評価

目標株価

470円

日産自動車の業績不振とCOVID-19の流行による世界的な新車需要の蒸発という最悪の事業環境を迎えたことで、既に株価は歴史的な割安圏に転落している。日産自動車の構造改革プラン「NISSAN NEXT」で投入される新型車の成否が河西工業の将来的な業績を左右することは当然だが、新型車の連続立上が円滑に進まない場合には却って利益水準を圧迫する要因になりうる点には注意したい。軒並み歴史的な割安圏に転落している日産自動車への依存度が高い自動車部品メーカーの株価を横目に見つつ相対評価すると、この程度の株価が目標株価となる。

投資判断

やや弱気

特定の自動車部品メーカーへの依存度が高い自動車部品メーカーの弱点が露呈する形で急激に業績が悪化しており、日産自動車の業績回復と運命共同体である。最近の河西工業は技術力を評価されて他の自動車メーカーへの拡販が進んだが、依然として日産自動車へ売上高の約60%を依存する構造である弱点が業績悪化を招いたと見てよい。日産自動車への依存度が高い自動車部品メーカーは軒並み歴史的な割安圏に転落している為、投資判断を下すにあたってはこれらが競合となろう。他の系列サプライヤーを横目に見るとユニプレス・ヨロズ・タチエスなどは財務基盤がより強固である為、目先の厳しい事業環境を乗り切る企業体力という観点ではこれらに期待した方が良いかもしれない。逆に、過去10年間における成長力という観点では河西工業が優れている。河西工業の先行きを占う際に着目したいのは、自動車セクターでCASE領域における技術革新が急激に進むことで自動車部品メーカーの売上高の増減が危ぶまれる環境においても、自動車に人が乗る限りにおいては自動車内装部品の重要性が不変である点であろう。日産自動車の構造改革プラン「NISSAN NEXT」の旗印となるアリアの内装は既存の日産車とは一線を画する高品質な仕上げとなっており、自動車内装部品が自動車の商品力を大きく左右する重要要素であることが不変であることが読み解けるだろう。