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企業レポート

飯野海運(9119)の分析|海運不況で株価低迷するも業績は底堅い

基本情報

飯野海運(9119)は、東京都千代田区に本社を置く中堅海運企業である。海運業では海運大手三社およびNSユナイテッド海運に続く企業規模を誇り、ケミカルタンカーでは業界首位級の船隊を擁している。業績を安定化させることを目的として、不動産業にも注力しており、都心オフィスビル5棟から得られる収益が業績を下支えしていることが特徴である。

目次

株価の推移

海運バブル後の株価は低迷

■株価の特性
過去10年間の飯野海運の業績が横ばいであったこともあり、株価のレンジは300円台から600円台で変化していない。海運バブルにおける株価急騰を除けば、景気動向に応じて業績と株価が連動する典型的な景気循環株の株価推移である。数十年周期で到来する海運バブルで業績急伸すると株価急騰が起こるのは他の海運株と同様であるが、2000年代後半に到来した海運バブルが崩壊局面を迎えた2007年以降の株価低迷が長期化している。

■過去の株価推移
2007年頃の株価急落が印象的である。2007年の最高値として株価2000円を記録したが、海運バブル崩壊とリーマンショックを経て300円台に低下している。2012年には純損失42億円を計上したことで220円にまで下落した。海運不況の渦中でもアベノミクス以降などの景気回復局面には600円以上に到達する局面もあり、株価変動が激しい海運株らしい推移である。株価推移を見る限り、景気動向に応じた株価変動を強いられていることが明白であり、BPSの増加に着目した長期保有は報われていない。

日経平均株価との相関性は低い

■日経平均株価との相関性
日経平均株価との相関性は低い。アベノミクス以降は底値を切り上げながらの株価上昇が続いた日経平均株価と対照的に、飯野海運の株価は過去10年間に渡って同じレンジで推移し続けている。飯野海運に限らず、海運各社はリーマンショック以降の株価低迷が長期継続しており、明確に日経平均株価に劣後する状況が続いている

■過去の日経平均株価との相関性
長期的な日経平均株価との相関性は希薄だが、景気動向に応じて業績と株価が連動する景気循環株である為、短中期的な日経平均株価との相関性は存在する。飯野海運の主要顧客は製造業および公益事業に属する大手企業が多く、景気回復局面でこれらの顧客企業が活性化することで飯野海運の業績は拡大しやすい。こうした背景から、日経平均株価の上昇局面では共に株高基調になりやすい。過去10年間では2013年と2017年においてこの傾向が顕著であった。

業績の推移

売上高は800億円規模で推移

■売上高の特性
売上高は700億円から1000億円の範囲で景気循環的に推移している。海運業は常に激しい環境変化に晒される業界であることから業績変動が激しいが、飯野海運の売上高は安定的な部類である。海運業に影響を及ぼす環境変化には、①景気動向による荷動量の変化(需要)、②競合他社との船舶供給の変化(供給)、③為替と燃料油価、があり、各要素が複雑に組み合わさって業績を浮き沈みさせる。飯野海運は、①ケミカルタンカーというニッチ船種への特化、②中長期契約の比率向上、に注力している。ケミカルタンカーに特化することで競合との差別化を図りつつ、中長期契約で市況悪化時にも安定的な売上高を確保することに成功している。

■過去の売上高推移
2013年から2015年においては売上高1000億円に迫る高水準での推移となっている。同時期はケミカルタンカー市況こそ低調であったものの、景気回復局面において中長期契約を締結している主要顧客の輸送量が堅調に推移したことに加えて為替レートが円安推移となったことが売上高を押し上げた。同時期の売上高の増加は外航海運事業によるものであり、内航海運事業および不動産事業は特段の増加を遂げていない。飯野海運の売上高は概ね外航海運事業の状況に左右されると考えてよい。

営業利益は海運業としては安定的

■営業利益の特性
営業利益は20億円から160億円で推移しており、上下変動が激しい。飯野海運は中長期契約に力を入れるが、海運市況の影響を完全に排除することは不可能であることに加えて、為替と燃料油価による業績影響は避けられない為、営業利益は安定しない。とはいえ、同業他社が惨憺たる業績悪化を起こした2016年も含めて営業赤字に転落していない点は評価できるか。飯野海運は海運業に加えて不動産業を手掛けることで営業利益の安定化を志向しているが、この戦略は成功していると見てよい。

■過去の営業利益推移
2011年の営業利益が低迷している。同年は、海運バブルに過剰建造された余剰船舶による供給過多が深刻化した海運市況の逆風に加えて、為替78円/ドル・燃料油価680ドル/MTという極めて厳しい外部環境が追い打ちとなったことが原因である。飯野海運は中長期契約が主体であることから海運市況の悪化への耐性は悪くないが、この水準にまで為替と燃料油価が悪化すると業績悪化は流石に避けがたい。

売上高の構成

外航海運事業(76%)

■事業内容
外航海運事業には、全世界の航路における原油・石油化学製品・ガス・木材・石炭などの輸送が含まれる。飯野海運の積載貨物の約70%は石油化学製品(メタノール・エチレングリコール・ベンゼンなど)であり、ケミカルタンカーが最主力を担っていることが特色であろう。競争が少ない船種であるケミカルタンカーを中長期契約で運航することで業績の安定化を図りつつも、市況変化が激しいドライバルクキャリア船隊を小規模ながら保有することで市況好転時に機会損失を発生させない様に考慮している。

■過去の売上高分析
外航海運事業の売上高は608億円から789億円と上下変動が激しいが、海運業として見た場合には安定的な売上高推移である。これは中長期契約に注力していることが奏功しており、景気後退時にも安定的な輸送量を確保していることに起因している。2014年は売上高789億円を記録したが、これはケミカルタンカーの輸送量を安定確保したことに由来している。主力船種であるケミカルタンカー市況に業績が左右されやすい。

■将来の売上高予測
減少を見込む。COVID-19の流行による経済停滞により主要顧客が打撃を受ける為、外航海運事業の輸送量減少は不可避である。外航海運事業の主要顧客のうち、公益事業は社会インフラの維持という観点から輸送量は底堅く推移するが、製造業は需要低迷による輸送量減少が厳しい。輸送量が減少した場合には、スポット契約による輸送量確保に努めたいが、ケミカルタンカー市況は実体経済の落ち込みに影響された低迷を余儀なくされる為、売上高を支える程の効果は望み難い。原油価格低迷を受けた洋上備蓄需要によるオイルタンカー市況の高騰が期待されるが、保有するオイルタンカーは5隻未満である為、売上高を支えるにまでは至らない。

内航海運事業(11%)

■事業内容
内航海運事業は、国内航路および東南アジア航路におけるガス等の輸送が含まれる。当然ながら、外航海運と比べれば小柄な船舶が多いこともあって、内航海運事業の運航船舶は6万トン規模に過ぎず、400万トン規模の外航海運と比べると船隊としての規模は小さい。内航海運事業の保有船舶はすべてガスキャリアであり、LNG・LPG・エチレン・プロピレンなどを輸送している。内航海運事業は連結子会社のイイノガストランスポートが担っている。

■過去の売上高分析
内航海運事業の売上高は82億円から94億円で安定的に推移している。2017年以降は90億円を超えて推移しており好調であるが、これは主要顧客との契約改定が有利条件で決着した点に起因する。外航海運事業に比べると競争が緩いこともあり、売上高は安定的である。ガスキャリアは安全運航を厳格に要求される船種である為、主要顧客との信頼関係を構築している飯野海運の競争力は高い。国内のLPG需要の約45%が家庭業務用途であることも、輸送量の安定確保に貢献しているか。

■将来の売上高予測
現状維持を見込む。内航海運事業は日本国内のガスの輸送需要に特に依存する為、業績の急拡大は見込み難い。内航海運事業の主要顧客であるアストモスエネルギー・出光興産・東ソー物流は日本国内へのガス供給を担っているが、これらは内需依存が高いことから輸送量は良くも悪くも安定的である。強いて言えば、東南アジア航路の将来性に期待したいものの、将来性ある航路には競合他社の参入が常であり、業績拡大を支える程の成長は期待し難い。

不動産事業(12%)

■事業内容
不動産事業は、ビル賃貸・倉庫業・飲食施設・フォトスタジオなどが含まれる。飯野海運は都内に5棟のオフィスビルを保有しており、これらの資産価値は約800億円に及ぶ。旗艦ビルの飯野ビルディングは恵まれた立地に加えて築浅であることから、特に競争力が高い。実際、飯野ビルディングには、ゆうちょ銀行や川崎汽船などの優良テナントが多数入居している。不動産事業には飲食施設やフォトスタジオなどが含まれるが極めて小規模である。

■過去の売上高分析
不動産事業の売上高は過去10年間に渡って100億円前後で安定的に推移している。2010年前後には売上高50億円規模に低落しているが、これは飯野ビルディングの建替に伴う一時的な減収である。オフィスビル需給によって売上高は変動するものの、海運業と比べれば極めて安定的な推移であろう。とはいえ、飯野海運は海運業と不動産業を主力事業として掲げているものの、売上高の90%が海運業に由来する点は実態として押さえておきたい。

■将来の売上高予測
微減を見込む。2013年以降、都心オフィスビルの空室率は極めて低水準で推移してきたが、2018年以降は新築オフィスの供給ラッシュを控える状況にある。これまではテナント退去が起こっても、新規テナントの確保には困らない時期が続いてきたが、都心オフィスビルの需給感は弛緩に向かう。当面の景気後退局面における企業活動の不活性化が都心オフィスビルの需要に下方圧力として作用する点も留意したい。2021年には旧東京桜田ビルの跡地を活用した地上27階建の高層ビルが三井物産都市開発を中心とする共同開発事業で竣工予定である。

営業利益の構成

外航海運事業(12%)

■過去の営業利益分析
外航海運事業の営業利益は▲25百万円から37億円で推移しており、数年周期の好不調サイクルが顕著である。過去10年間では、①2007年から2011年の不調期、②2012年から2015年の好調期、③2015年から2018年の不調期、となっている。業績が堅調だった2015年においても営業利益率5.2%に留まっており、売上高の規模の割に薄利を強いられている。海運バブルの全盛期であった2007年の飯野海運は、海運事業全体で営業利益133億円を確保していた(当時は外航海運事業と内航海運事業が同一セグメントであった)。

■将来の営業利益予測
外航海運事業の営業利益は微減を見込む。当面はCOVID-19の流行による輸送量減少と海運市況低迷による営業利益の圧迫は不可避である。原油安による燃料油価低迷によるコスト効果を加味しても、営業利益は減少に転換する。ただし、長期的には石油化学製品の需要は2020年代に年率1桁%で増加基調が続くことが予測され、ケミカルタンカーを主力とする飯野海運は需要増加の恩恵を受けることが期待される。特にアジア地域における石油化学製品の需要成長が予測される為、日本に本拠地を置く飯野海運は優位である。

内航海運事業(19%)

■過去の営業利益分析
内航海運の営業利益は1.8億円から9.2億円で推移している。売上高に占める割合は10%に過ぎないが、2018年は外航海運を上回る営業利益を確保しており軽視できない。東日本大震災と燃料油高が重なる最悪の環境下であった2012年にも営業利益を確保していることから収益基盤は堅いと推察できる。外航海運事業と好不調が必ずしも連動せず、外航海運事業の営業利益が縮小した2015年から2018年にかけて堅調に営業利益を拡大している。

■将来の営業利益予測
内航海運事業の営業利益は現行水準を維持すると想定する。当面はCOVID-19の流行による輸送量減少が重荷であるが、他事業と比較すれば相対的に影響は少ない。内航海運事業の営業利益は冬期の暖房需要に依存する部分が大きい為、輸送量の減少幅は限定的と想定される他、原油安による燃料油価の低迷によるコスト効果は営業利益の上方圧力として作用する。長期的には国内のLPG需要は安定的に推移することから底堅い推移を期待したいが、気候変動による暖冬が発生すれば営業利益が圧迫されるか。

不動産事業(68%)

■過去の営業利益分析
不動産事業の営業利益は概ね30億円規模で推移しており、過去8年間に渡って不動産事業が最大の収益事業となっている。2009年は海運事業の営業利益が不動産事業を上回っているが、これは飯野ビルディングの建替に伴い稼働棟数が減少していた影響である。海運企業であるにも関わらず、不動産事業が営業利益の半分以上を稼ぎだす状況が継続しており、飯野海運の業績を考える上で外せないセグメントである。

■将来の営業利益予測
不動産事業の営業利益は微減すると想定する。都心オフィスビルの空室率は2013年以降、極めて低い水準で推移してきたが、2018年以降は新築オフィスビルの竣工ラッシュを控える。これまではテナント退去が起こっても、新規テナントの確保には困らない時期が続いてきたが、都心オフィスビルの需給感は弛緩しつつある。COVID-19の流行による経済停滞がオフィス移転への積極投資に冷や水を浴びせる懸念も生じつつある。不動産事業が営業赤字へ転落するリスクは想定し難いものの、海運業が業績不調に転じた場合に下支えしきれなくなるリスクが生じてくるか。

財務の健全性

手元資金は余裕があ水準

■手元資金の特性
手元資金は概ね100億円台を維持している。売上高が年間800億円規模と考えると手元資金としては最低70億円が目安となる為、余裕をもってクリアできている。手元資金には余裕があることに加えて、飯野海運は売却可能な不動産や船舶を多数抱えているので現金枯渇の心配は薄い。実際、過去に業績が落ち込んだ時には、保有船舶と建造中船舶の売却によって手元資金を復活させている実績があることから、今後も手元資金への懸念は薄い。

■過去の手元資金分析
2012年に手元資金が86億円台にまで低下している。同年は業績低迷に加えて船舶取得の設備投資が216億円に到達したことで手元資金の減少を招いた。実態としては、飯野ビルディングの竣工に伴う支出によって設備投資が461億円に到達した2011年の方が支出は多かったものの、同年は長期借入金257億円の調達によって手元資金を厚くしたことで100億円台を維持した。船舶と不動産への設備投資に要する支出が大きいが、年度によって保有船舶の売却による収入を活用して手元資金を安定的に維持している

自己資本比率は業界上位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は概ね30%台を維持している。同業他社と比較すると、日本郵船24.4%・商船三井24.4%・川崎汽船が11%となっており、業界上位の水準にある。市況変化が激しい海運業に属することを踏まえると余裕がない様にも思えるが、リーマンショック後の歴史的な海運不況の渦中にあっても業績が安定的である点を踏まえれば必要十分であろう。

■過去の自己資本比率分析
2011年には自己資本比率21.6%台まで低下したものの、再び30%台に回帰している。2011年は海運事業の不振で純損失41億円を計上したことに加えて、飯野ビルディング竣工と新規船舶取得が重なったことで負債が320億円の増加となったことで自己資本比率が急落した。その後、事業環境の好転によって利益水準が回復し、2016年に長期借入金298億円を返済したことで再び33.7%にまで回復している。

株価の割安感

BPSは上昇傾向が継続

■BPSの特性
BPSは2012年を底に右肩上がりで推移している。飯野海運は中期経営計画で2024年に純資産1000億円を目標として掲げており、2018年には純資産730億円に到達している。現状の進捗では目標未達になるものの、純資産を地道に積み上げた結果がBPSにも表れている。長引く海運不況下にあってもBPSを安定的に積み上げている点は好感できる。BPSは株式の資産価値を表す指標として参照される為、BPSが向上することで株価の底値が切り上がる効果が期待できる。飯野海運の株価は景気循環的に推移している為、BPS向上による株価上昇は期待できないが、少なくとも株価の底値水準は切り上がっていくと想定する。

■過去のBPS分析
2012年以降のBPSの上昇が顕著である。飯野海運のBPSは、2011年の452円から2018年には689円に増加しており、約7年間で約1.5倍に拡大している。同時期の飯野海運は、業績回復によって年間40億円規模の純利益を確保したことで利益剰余金が増加傾向を続けており、純資産が増大した。更に、アベノミクス以降の株高局面によって保有する有価証券の含み益が10億円規模から40億円規模にまで増加したことも純資産を押し上げている。

PBRは右肩下がりで安値圏

■PBRの特性
PBRは2013年以降は右肩下がりで推移している。BPSが約1.5倍に拡大しているにも関わらず株価低迷していることで、PBR0.5倍にまで下落している。常識論では、PBR1.0倍を下回ると解散価値を下回る為、その半分以下のPBR0.5倍という水準はかなり割安な水準であるが、昨今の株式市場ではPBR1.0倍未満であっても割安評価を必ずしも得られない。海運不況の渦中にある海運業ではPBR1.0倍未満は珍しくもない。

■過去のPBR推移
海運不況が長期化しているとはいえPBR0.5倍前後という現在の水準は歴史的に見ても相当に割安な水準である。海運バブルが到来していた2007年には株価が歴史的高値圏である1500円以上の水準にあったことでPBR2.0倍を超える局面も経験している。海運不況に突入したことでPBRは低落したものの、海運不況の渦中でも安定的に利益を確保している飯野海運の業績を考えれば過剰警戒の感はある。

配当金の推移

配当金は業績連動型

■配当金の特性
配当政策は業績連動型である。飯野海運は配当政策として「財務体質の強化と必要な内部留保の充実及び今後の経営環境の見通しに十分配慮した配当継続」を掲げており、過去10年間に渡って無配転落せず配当継続している。過去の配当金推移は上下変動が大きいが、業績の上下変動を踏まえれば許容しうる範囲である。同業他社の無配転落が続く海運不況の渦中であることを踏まえると、飯野海運は配当継続している点は優秀であろう

■過去の配当金分析
海運バブルを謳歌していたリーマンショック前は年間15円の配当であったが、海運バブル後は減配傾向に転じており、純損失を計上した2012年には年間2円にまで減配している。その後は業績回復に向かったことで年間10円まで復配し、配当を維持している。2018年には年間15円に到達したものの、これは創立120周年記念配当5円が加算された為である。2014年以降は年間10円程度の安定配当を志向しており、当面は同水準を維持する見込みである

配当利回りは上昇傾向が継続

■配当利回りの特性
配当利回りは2%台を中心に推移しているが、過去10年間を年度別に見ると0.5%から4%と上下変動が激しい。業績に応じて配当金が上下変動することに加えて、株価の上下変動が激しいことで配当利回りは安定感を欠く。海運業は配当利回りがまったく安定しない企業が多い為、同業他社との対比では海運不況の中でも無配転落していない点においては評価できる。

■過去の配当利回り分析
2012年以降は配当利回りが右肩上がりで推移している。業績の回復によって増配継続したことが大きい。2012年から2014年にかけては飯野海運の株価は堅調な上昇基調で推移したが、海運不況が懸念されたことで株価上昇が600円台で停滞したことで配当利回りは2%台で安定的に推移した。2018年以降は配当水準こそ維持されているものの、景気後退局面を懸念した株価低迷によって、配当利回りは4%台を目指している。

総合評価

目標株価

360円

海運不況は2030年前後まで継続すると想定。ただし、ケミカルタンカー市況については2022年以降は緩やかな回復に向かうと見込む。当面は燃料油価の低迷がコスト効果として営業利益を下支えするか。収益を依存する不動産事業についても、都心オフィスビル需要は弛緩しつつも、営業利益は堅調に推移するだろう。当面はCOVID-19の流行による経済停滞が業績の重荷になることを念頭に、目標株価を設定した。

投資判断

やや強気

海運不況からの回復までは時間を要するものの、海運不況下にあっても業績は底堅い。飯野海運は、①競争が緩慢なケミカルタンカーへの特化、②海運市況の短期変動による業績影響を抑制する中長期契約への注力、③収益が安定的な不動産事業との両立、によって業績安定化を果たしており、これらに魅力を感じるかが投資判断の分水嶺となろう。これらの戦略は業績安定化に貢献する反面、市況好転時には同業他社に収益で劣後する要因となる為に注意しておきたいものの、海運不況からの回復が見込み難い時期においては飯野海運の優位性として評価できる。歴史的には景気回復局面においては株価上昇に転じてPBR1.0倍水準をに接近することを踏まえれば、景気後退局面で投資する妙味はあるか。既に底値圏に没していることから底値不安が浅く、当面の業績が安定的に推移しうる点でも評価できる。