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企業レポート

高島屋(8233)の分析|業績堅実だが営業利益の回復傾向に暗雲

基本情報

高島屋(8233)は、1831年に創業した老舗百貨店である。地盤は関西圏であるものの、日本全国の有力都市に店舗を構えていることから全国的に知名度が高い。2000年代以降は有力百貨店の統合再編が進行したことで、三越伊勢丹・Jフロントリテイリング・H2Oリテイリングといった百貨店連合が次々と誕生したが、高島屋は現在に至るまで単独路線を継続している。

目次

株価の推移

株価は上下反復だが目先は底値圏

■株価の特性
過去10年間に渡って1000円台から2000円台のレンジで推移している。景気回復局面では株価上昇しつつ、景気後退局面では株価下落する典型的な景気循環株の推移となっている。過去10年間の高島屋の業績が横ばいであった為、株価のレンジが変化しないのは当然であるが、業績の安定性の割に株価の上下変動は激しい。百貨店で高級品を購入する消費スタイルが消費者から希薄化しつつあることが百貨店業の衰退を想起させ、上値の重さに繋がっているか。

■過去の株価推移
2006年頃の急騰が特に力強い。当時は2002年から2009年にかけて到来したいざなみ景気のピーク局面であり、個人消費マインドが活性化していたことが相まって最高値4250円を記録していた。百貨店業は富裕層の消費マインドが活性化する株高局面において業績を伸ばしやすい伝統的な傾向があり、バブル景気のピーク局面であった1989年には最高値8780円を記録している。1986年以降は700円台から800円台を底値圏として推移しており、歴史的には現在の株価は底値圏に近い水準である

日経平均株価との相関性が低下

■日経平均株価との相関性
高島屋は日経平均株価の構成銘柄である。富裕層の個人消費マインドが活性化する株高局面に株価上昇を演じやすい百貨店業の特性も相まって、日経平均株価との歴史的な相関性は高い。2017年以降は日経平均株価との相関性が低下したが、これは歴史的にはかなり珍しい状況である。景気減速の直撃を受けて株価下落する景気循環株の高島屋と、景気後退局面にも底堅いエクセレントカンパニーの株価に牽引される日経平均株価の差異が表面化した格好である。

■過去の日経平均株価との相関性
2008年から2016年にかけて日経平均株価との相関性は高い推移を描いていた。アベノミクスによる株高局面の序盤であった2013年前後においては、日経平均株価を超える株価上昇率を記録して相関性が低下した様にも思われたが、日経平均株価の上昇が一服した2015年には相関性を回復している。反面、2017年以降に急激に進行した日経平均株価との相関性の喪失は現在に至るまで回復されていない状況である。

業績の推移

売上高は9000億円規模で安定推移

■売上高の特性
売上高は過去10年以上に渡って9000億円規模で推移しており、変化に乏しい。過去10年間で百貨店業を取り巻く環境が悪化したことを踏まえれば健闘していると評価できるが、百貨店事業の売上高は2000年代後半の水準には回復せず、他事業の売上高の拡大に支えられている。景気変動に弱い印象が先行する百貨店業であるが、高島屋についてはリーマンショック後の景気後退局面においても売上高8000億円規模を維持しており、売上高という観点では景気変動への耐性は悪くない。

■過去の売上高推移
2013年から2015年にかけて緩やかな売上高の回復傾向が継続している点が目につく。同時期の回復傾向は、①アベノミクスによる景気回復、②中国人観光客に代表されるインバウンド消費、③不動産事業と金融事業の売上高の拡大、が原因である。高島屋は百貨店事業が売上高の約80%を占める為、百貨店消費の拡大が起こる景気回復局面で業績が堅調に拡大しやすい。

営業利益は回復傾向に暗雲

■営業利益の特性
営業利益は2009年を底に回復基調が続いたが、2018年に下落に転換したことで回復傾向に暗雲が差している。表面的には2000年代後半の営業利益に近い水準にまで回復しているが、稼ぎ頭の事業が変化している。リーマンショック以前は百貨店業が稼ぎ頭であったが、リーマンショック以降は不動産事業と金融事業が稼ぎ頭である。不動産事業と金融事業は営業利益が安定的であることが、高島屋の営業利益を安定化させた格好である。

■過去の営業利益推移
2018年の営業利益の低落は、百貨店事業の不振による。同年の百貨店事業が不振となった理由は、①景気減速による個人消費マインドの下落、②暖冬による利鞘の大きい衣料品の販売不振、③新店舗開発とシステム開発の投資負担、などの要因が挙げられる。現在の高島屋の稼ぎ頭である不動産事業と金融事業は堅調である為、更なる下落を回避する為に百貨店事業の利益水準の回復が求められる局面である。

売上高の構成

百貨店事業(83%)

■事業内容
百貨店事業には、衣料品・身廻品・雑貨・家庭用品・食料品などの販売が含まれる。高島屋は日本国内18店舗および海外4店舗を運営しているが、店舗数は同業他社と比較して控えめである。日本全国の有力都市に大型店舗を構えていることから全国的に知名度が高い。同業他社と異なり再編を経ていないことから、全国的に同一の屋号を使用している点も知名度の高さに貢献している。大阪店と日本橋店と横浜店の3店舗で売上高の52%を占めており、都心部店舗への依存度が高い。

■過去の売上高分析
百貨店事業の売上高は7628億円から7972億円と上下変動は緩慢であり、安定的な推移となっている。売上高の上下変動は概ね景気循環と一致しており、個人消費マインドの動向によって売上高が変化する傾向が強い素直な推移である。強いて言えば、2011年に売上高7628億円にまで下落しているが、①東日本大震災による計画停電で営業時間短縮、②景気停滞による個人消費マインドの停滞、が逆風となった為である。災害直後など社会不安が増大する時期は百貨店での消費が特に不活性化する点には注意したいか。

■将来の売上高予測
減少を見込む。COVID-19の感染拡大防止の為、約2か月に渡って営業活動への制限を強いられた他、社会不安の増大による個人消費マインドの下落が打撃である。営業活動への制限が緩和された後についても、ボーナスを始めとする家計収入の減少によって個人消費マインドの冷え込みは続く。百貨店業は長期的な衰退傾向を迎えつつも、都心部に立地する旗艦店舗がインバウンド需要を取り込みながら健闘する構造であったが、この構造がCOVID-19の流行によって崩れた点が痛い。インバウンド需要が蒸発した打撃は大きく、流行以前の水準にまで回復する為には最楽観シナリオであっても2年以上は要する。

不動産事業(6%)

■事業内容
不動産事業には、保有不動産管理とショッピングセンター(S.C.)運営が含まれる。主に連結子会社の東神開発が担う事業であり、国内12施設と海外2施設を運営している。高島屋は伝統的百貨店業からの多角化戦略として、地域社会の中核として溶け込む都市型S.C.の開発に注力しており、不動産事業はこの担い手である。2018年には日本橋髙島屋S.C.を開業することで新規顧客層開拓と地域再開発を図るなど、百貨店業と不動産開発業の融合となる業態の開拓に熱心である。海外2施設としてシンガポール高島屋S.C.およびサイゴンセンターを運営しており、海外進出にも余念がない。

■過去の売上高分析
不動産事業の売上高は過去10年間に渡って拡大傾向にある。2007年の売上高296億円から2018年には売上高632億円にまで堅調な拡大を遂げている。不動産事業を担う東神開発はS.C.の新規開発に過去10年間に渡って注力しており、この結果が売上高の拡大として表れている。2017年に売上高が拡大しているのは、横浜駅周辺に所有する土地の再開発したビルの上層階を分譲マンションとして売却した一時的な要因によるものである。不動産事業は海外2施設を運営するが、円高局面ではテナント収入の増加が反映されにくい点に注意したい。

■将来の売上高予測
微減を見込む。COVID-19の流行によって打撃を受けたテナントからの賃料支払の猶予期間などの措置が求められる局面となっており、一時的な売上高の減少は不可避と予測する。不動産事業の収入はテナントからの賃料収入が大半を占めていることから安定的であるが、有事の際には賃料猶予などの例外措置が求められる点には注意が必要である。2019年にはつくばエクスプレス沿線の開発を担う商業施設運営会社のティーアンドティーを買収したことで、駅周辺の商業施設の売上高が加算される予定である。

金融事業(2%)

■事業内容
金融事業には、クレジットカードの発行とグループ会社の金融業が含まれる。2020年に高島屋クレジットと高島屋保険が合併して設立された連結子会社の髙島屋ファイナンシャル・パートナーズが担う事業である。クレジットカード事業は百貨店業との相性が良い事業であり、①百貨店顧客の富裕層は多額のクレジットカード決済を見込めることから手数料収入を確保しやすい、②ポイント還元施策によって顧客の囲い込みに繋がる、などの効果がある。2020年にはSBI証券と業務提携を締結して、富裕層への投資信託の販売に本腰を入れ始めた。

■過去の売上高分析
金融事業の売上高は過去10年間に渡って拡大傾向にある。2007年の売上高115億円から2018年には売上高191億円にまで拡大を遂げている。売上高は堅調な拡大基調にあるが、2011年に売上高115億円に落ち込んでいる。これは東日本大震災による消費マインドの下落によってクレジットカード会員の決済金額の落ち込みが原因であった。一見すると安定的に見える金融事業も個人消費マインドと無縁ではない。

■将来の売上高予測
現状維持ないし微減を見込む。長期的には金融事業の売上高は拡大基調を継続すると想定するが、当面はCOVID-19の流行による決済額減少が重荷となることで一時的な停滞を迎えると想定する。2020年にはSBI証券と業務提携を締結して富裕層顧客への投資信託の販売に本腰を入れたが、COVID-19の流行による株式市場の急落が大々的に報道されたことから投資信託の販売拡大の重荷となることが懸念される。

建装事業(3%)

■事業内容
建装事業には、高島屋グループ企業およびテナント入居企業などの内装工事の受注施工が含まれる。連結子会社の髙島屋スペースクリエイツが担う事業である。主要顧客は高島屋に関係する企業であるものの、外部企業からの受注施工も実施している。百貨店の内装設計で培った技術を活用して、空港建物の内装設計・フェリー船の内装設計などにも進出している。

■過去の売上高分析
建装事業の売上高は横ばいで推移しており、売上高191億円から売上高326億円のレンジで上下変動を繰り返している。2007年の売上高326億円に対して、2018年の売上高319億円と成長性は希薄である。景気後退局面においては建設需要が後退する影響から売上高が落ち込む傾向があり、2011年には売上高191億円にまで縮小している。過去の傾向としては、①景気回復局面で売上高300億円規模、②景気後退局面で売上高200億円、を中心に推移している。

■将来の売上高予測
減少を見込む。景気後退局面においては建設需要が後退する影響から売上高が落ち込む傾向から、当面は建設需要が冷え込んだ2011年前後の再現に近い推移となる。単なる景気後退局面における需要縮小に留まらず、COVID-19の流行によって建装事業の主要顧客である小売店およびホテルが打撃を被ったことが更に追い打ちとなる。当面は厳しい推移を強いられる。

その他事業(6%)

■事業内容
その他事業には、他の事業に含まれない高島屋グループの様々な事業が含まれる。具体的には、卸売・広告・人材派遣・建物管理・建物管理・文化施設運営などである。高島屋に限らず、百貨店業の各社はその他事業に多種多様な事業を有する点で共通する。百貨店が保有する資金・信用・資産を活用して事業多角化を果たしていくことで、事業間シナジーを高めながら事業規模を拡大していく点に意義がある。

■過去の売上高分析
売上高は長期的な横ばい推移となっている。2007年の売上高389億円に対して2018年の売上高373億円となっており、成長性は希薄である。その他事業に含まれる事業の大半が、高島屋グループの事業とは不可分一体の関係にある事情から、百貨店事業をはじめとする他の事業の好不調に連動して売上高が変動しやすい。特に、百貨店事業の売上高が減少する局面においては、その他事業の売上高にも影響が波及しやすい傾向がみられる。

■将来の売上高予測
減少を見込む。COVID-19による百貨店事業の不振が間接的にその他事業の売上高に下方圧力として作用する。その他事業の連結子会社を俯瞰すると、高島屋店舗にテナント入居する酒類等卸売業のグッドリブや高島屋店舗にテナント入居する飲食業のアール・ティー・コーポレーションなどが外部顧客向けの売上高の稼ぎ頭となっている。COVID-19の感染拡大防止による営業時間の短縮などの措置による売上高への打撃は避けがたい。

営業利益の構成

百貨店事業(33%)

■過去の営業利益分析
百貨店事業の営業利益は50億円から269億円と上下変動が激しい推移となっている。百貨店事業の売上高は安定的な推移となっていたが、営業利益という観点では上下変動が激しい。ただし、2009年以降は良くも悪くも営業利益100億円規模での安定的な推移となっている。アベノミクス以降の景気回復局面において百貨店が営業利益を急拡大していない点は興味深い。これは、①ECの発達や専門店の躍進などの購買チャネルの多様化による競合増加、②百貨店の顧客層の高齢化による消費意欲の後退、③消費者のモノ消費からコト消費への価値観シフト、④中流階級の高級品消費の減退、などに由来すると考えられる。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の感染拡大防止に伴う営業活動への制限が打撃となる他、社会不安の増大による個人消費マインドの後退が重荷となる。家計消費の中でも百貨店消費は嗜好性が高い不要不急の消費の象徴であり、景気後退局面において真っ先に削られる消費である。外出自粛と在宅勤務によって利幅の厚い衣料品の需要が落ち込む点も打撃である。これまで百貨店需要の減少の受け手であったインバウンド需要の蒸発も追い打ちとなる。

不動産事業(35%)

■過去の営業利益分析
不動産事業の営業利益は64億円から113億円で推移しており、営業利益においては百貨店事業に次ぐ稼ぎ頭となっている。2014年以降は100億円規模での推移となっている。営業利益率という観点では、概ね15%を上回る水準での推移となっており、高島屋の営業利益を担う重要な事業となっている。2010年の営業利益が低迷しているが、これは景気後退局面などテナントの売上高が低迷する局面では賃料収入が減少した点に由来する。

■将来の営業利益予測
微減を見込む。テナントからの賃料収入が主体であることから減少幅は軽微に留まるものの、COVID-19の流行によるテナントの売上高の低迷の影響が不可避である。不動産事業は、S.C.の顧客誘引力を維持する為に魅力的なテナントを守る必要がある為、打撃を受けたテナントに対する賃料支払の猶予期間などの措置が必要となろう。大局的にはテナントの売上高が低迷したことで賃料収入が減少した2010年の再現になると想定する。

金融事業(18%)

■過去の営業利益分析
金融事業の営業利益は過去10年間に渡って拡大傾向が続いている。2007年の営業利益9億円から2018年には営業利益48億円にまで拡大を遂げており、最大の成長セグメントとなっている。クレジットカード決済額の拡大という社会的趨勢が追い風となって営業利益を順調に拡大させている。2007年の時点では10%前後に過ぎなかった家計支出におけるクレジットカード決済比率は2018年には17%前後にまで到達しており、この追い風を受けた構図である。高島屋カードの会員数および決済額も順調な拡大傾向を続けている。

■将来の営業利益予測
微減を見込む。COVID-19の流行による景気減速がクレジットカード決済額の減少を招き、手数料収入が停滞すると想定する。雇用情勢の悪化によって経済的困窮に陥る顧客が増加することから貸倒関係費用が重荷となるか。ただし、長期的には金融事業の売上高は拡大基調を継続すると想定する。高島屋クレジットと高島屋保険の合併に要したコストも重荷となる。

建装事業(3%)

■過去の営業利益分析
建装事業の営業利益は▲5億円から23億円で推移しており、不安定な推移となっている。リーマンショック後の2009年に営業赤字に転落したのは、景気後退によって顧客企業の設備投資が急激に冷え込んだことに由来している。売上高の低迷と資金繰りに苦しんだ多くの企業が内装設備への設備投資を絞ったことが、建装事業を営業赤字へと転落させた。建装事業が売上高と営業赤字の両面において景気動向に影響されやすい構造が見え透く。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の流行による建設需要の冷え込みが打撃となることに加えて、縮小した顧客を競合他社と奪い合う受注競争を強いられると想定する。リーマンショック後は民間企業の建設需要の後退を受けて医療施設・教育施設などの分野にも進出して受注獲得を図ったが、それでも営業赤字に転落した経緯がある。COVID-19の終息後についても、財務基盤が揺らいだ顧客企業の投資意欲が回復するまでは時間を要するだろう。

その他事業(11%)

■過去の営業利益分析
その他事業の営業利益は▲12億円から33億円で推移しており、不安定な推移となっている。2010年に営業赤字に転落したのは、建物管理業を担う連結子会社の高島屋サービス(2017年に高島屋ファシリティーズへ社名変更)の営業赤字を補いきれなかった点に由来する。同社は2013年に営業黒字に転換するまで営業利益を圧迫し続けていたが、2013年以降は安定的に営業利益を確保し続けている。直近の数年間では通信販売業を担う連結子会社のセレクトスクエアで営業赤字が継続していることが重荷となっている。

■将来の営業利益予測
減少を見込む。COVID-19の流行による百貨店事業の不振がその他事業に波及する他、経済停滞によって外部顧客からの営業利益が下押しされると想定する。その他事業の営業利益の稼ぎ頭である広告業を担う連結子会社のエー・ティ・エーが景気後退局面における広告宣伝費の削減の影響を受けやすい。その他事業の営業利益への貢献が大きかった高島屋保険が髙島屋クレジットと合併して金融事業へ移管されたことが3億円規模の押し下げ要因となる。

財務の健全性

手元資金は増加傾向が継続

■手元資金の特性
手元資金は増加傾向にあり、2014年以降は800億円規模で推移している。売上高が年間9000億円規模と考えると手元資金としては750億円が目安となる為、標準的な水準である。高島屋は売上債権を買掛債務を上回っており、手元資金への安全性は高めである。高島屋が同業他社と比べて手元資金を厚めに保有しているのは、リーマンショック後に手元資金の急減を経験した点が活かされていると解釈できる。

■過去の手元資金分析
2008年の手元資金の薄さが際立つ。同年の高島屋の売上高が9000億円規模であったことを踏まえると、手元資金が277億円という状況は好ましいものではない。2000年代後半の高島屋の手元資金は500億円規模で推移していたが、リーマンショック後の減収が打撃となり手元資金が減少した。同年は設備投資を抑制するなど工夫したものの、手元資金が低水準にまで落ち込んだ。2009年以降は社債発行と長期借入金の借入によって手元資金が厚くなっている。

自己資本比率は業界中位の水準

■自己資本比率の特性
自己資本比率は微増傾向にあり、41.2%に到達している。同業他社と比較すると、三越伊勢丹44.3%・H2Oリテイリング42.0%・Jフロントリテイリング31.2%となっており、業界中位の水準である。百貨店業は巨額の設備投資を必要とする店舗を多数保有しながら厳しい異業態との競争を強いられる関係から、財務耐久力の維持が重要である。高島屋の自己資本比率は一時的な業績悪化を凌ぐには十分な数値を維持している。

■過去の自己資本比率分析
2008年から微増傾向が続いている。高島屋はリーマンショック後の個人消費マインドの低迷期においても純利益を安定的に計上しながら利益剰余金を拡大させ続けており、その結果が自己資本比率に表れている。2013年に自己資本比率は一時的に下落しているが、これは高島屋新宿店の土地建物を取得する為に社債600億円を追加発行したことに起因する。高島屋新宿店は賃料負担が重く、長期的目線では自社物件化が最適という判断に基づく。旗艦店舗の採算良化の為の意図的な自己資本比率の下落である為、問題はない。

株価の割安感

BPSは微増傾向が継続

■BPSの特性
BPSは2008年から右肩上がりで推移している。リーマンショック後の個人消費マインドの低迷期からアベノミクス以降の景気回復局面に至るまで純利益を安定的に計上し続けたことがBPSを底上げしている。昨今の上場企業には本業の成果に関わらず、アベノミクス以降の株高局面で保有する有価証券や土地建物の評価額増大でBPSが拡大している場合が散見されるが、高島屋は純然たる利益剰余金の拡大でBPSを拡大させている。事業における利益蓄積という実力値によってBPSを安定的に拡大させ続けている点は評価できよう。

■過去のBPS分析
2007年から2008年にかけてBPSが下落しているが、これは保有する有価証券の評価額が減少した点に起因する。2007年には142億円あった有価証券評価差額金が2008年に22億円にまで減少したことが純資産を減少させた結果としてBPSが減少している。高島屋はリーマンショック後にも純利益を確保して利益剰余金を拡大させていたものの、同年は有価証券評価差額金の著しい減少を補いきれなかった。

PBRは右肩下がりで低迷

■PBRの特性
PBRは長期的な右肩下がりが継続している。高島屋がBPSを安定的に拡大させた一方で、株価が長期低迷していることでPBR1.0倍を下回る水準での推移が定着している。景気回復局面においては株価上昇によってPBR1.0倍水準を回復する傾向があるものの、当面は百貨店が急伸する様な好景気が到来する見込みが薄いことによる株価低迷がPBRの重荷となっている。近年は、高島屋に限らず、百貨店業の上場企業はPBR1.0倍を下回る水準が定着している。

■過去のPBR分析
2007年から2009年までのPBRの下落が顕著である。リーマンショックによる急激な個人消費マインドの下落に見舞われた高島屋の業績が急減したことが株価下落を誘発したことがPBRを急落させた。実際には高島屋の純資産が大きく毀損する事態には至らなかったものの、リーマンショック以前の株価がPBR1.5倍を上回る高値圏にあったことからPBRの下落は実態以上に顕著なものとなった。2018年にも景気後退懸念から株価下落に見舞われたものの、PBRの下落は発射台が低かったことで相対的に緩やかである。

配当金の推移

配当金は安定配当型

■配当金の特性
配当政策は安定配当型である。高島屋は配当政策として「安定的な配当水準を維持することを基本スタンスとしながら、業績や経営環境を総合的に勘案し、株主への利益還元を図る」を掲げており、実際に配当金推移は極めて安定的である。百貨店業の上場企業は配当金をフラットに維持することを好む傾向があるが、高島屋は配当金の維持に特に熱心である

■過去の配当金分析
リーマンショックの打撃によって手元資金が277億円にまで減少した2008年にも配当金を維持しており、減配を極力回避する意思が見え透く。百貨店業がフラットな配当推移を好む事情としては、①低い配当性向の対価として安定還元で株主に報いる、②顧客に個人投資家を兼ねる富裕層が多いことから減配によるブランドイメージの毀損を避けたい、③顧客として囲い込んでいる株主を減配によって失う機会損失への警戒、などの理由が考えられる。

配当利回りは株主優待で補完する

■配当利回りの特性
配当利回りは1%台で推移しており、日本株の平均的な配当利回りである2%前後に劣後する水準である。長期保有したところでインカムゲインという観点では大したリターンを得ることができない為、株主優待による利回りを検討したい。高島屋グループでの買い物時に株主優待カードを提示すると10%割引を受けられる上、500株以上を保有すると割引上限金額がない。高島屋の顧客であれば株主優待カードの活用で実質利回りを飛躍的に向上できる。

■過去の配当利回り分析
過去10年間に渡って配当利回りは概ね1%台で安定的に推移している。配当金がフラットで推移している為、配当利回りは株価変動によって左右される。過去10年間の傾向としては、株価が高値圏にある時期には配当利回り1%を下回る反面、株価が底値圏にある時期には配当利回り2%に迫る局面が見られる。そもそもの配当利回りが低水準かつ滅多なことでは配当金が変動しない為、配当利回りを意識する必要性は薄いか

総合評価

目標株価

1250円

COVID-19の流行による個人消費マインドの下落からの回復に最低3年を要すると想定。財務の健全性に問題はないが、感染収束までに要する期間によってはBPSの毀損も覚悟する必要がある。こうした目先の事業環境を警戒しつつ、高島屋の業績安定性や財務基盤を評価して目標株価を設定した。株主優待を活用して利回りを得られる個人投資家であれば投資妙味は高い。

投資判断

やや弱気

高島屋の優位性は、①高島屋の屋号のみで日本全国に展開することで形成された三越に匹敵するブランド力、②リーマンショック後の景気後退局面においても純損失に転落しない収益基盤、③日系百貨店で唯一に近い海外展開における成功、に集約される。長期的な百貨店業の衰退という趨勢には逆らい得ないが、百貨店事業以外から得られる利益の拡大によって利益水準を維持している点が興味深い。景気回復局面では百貨店事業の利益水準は回復する為、景気後退局面の終盤において投資を検討したい。この点、当面はCOVID-19による景気後退が継続するものと想定される。高島屋はリーマンショック後に反省を生かして手元資金を厚くしてきたが、感染症という新たな脅威は感染拡大防止に伴う営業活動の制限を惹起したことで単なる手元資金の問題を超える打撃となった。幸いにも財務の健全性は問題ない水準である為に事業継続への不安は薄いが、当面は苦しい局面が継続すると見込まれる。